「抑止力によって平和が維持できる」とよく聞きますが、本当でしょうか。
「いざというときの報復の準備」を見せつけて威嚇することで他国との信頼関係
が増すのでしょうか?むしろ周辺国の不安を煽り、軍事的緊張を高めるのでは?
防衛体制の強化は、自ら戦争の危機を作る本末転倒なように思えます。
そろえても、「攻撃されたら倍返しで報復するぞ(だから武力行使するな)」
というメッセージが相手国に伝わらなかったり、相手国が理性的に行動しなけ
れば、抑止は失敗します。結局、相手国次第の不安定・不確実なものです。
例えば、太平洋戦争は勝算がないにもかかわらず日本は自ら戦争の火ぶたを
切りました。アメリカの“抑止”が効かず、日本を抑え込めなかったといえます。
また、ロシアが侵略戦争に踏み切った上に核兵器で国際社会を脅かしている
のは、“抑止”の失敗の表れではないでしょうか。
「力には力で対抗するしかない」路線に転換して防衛体制の強化つまり軍拡
に乗り出せば、際限はありません。日本が周辺国の軍拡に“挑発”されて軍拡に
乗り出したのと同様、周辺国も日本の軍拡に刺激されて更に軍拡を進める“競争”
になるからです。ひたすら不信感と敵意が煽られ、軍事的緊張が高まります。
軍拡にはお金がかかります。つまり軍拡を進めると、予算調達のために増税
や福祉の切り捨てが進みます。増税はもちろん、医療、教育、保育、介護、
年金etc、国民の人間らしい生活の大切な土台が切り捨てられれば、どうにか
やりくりしている市民生活には大打撃です。軍拡は自国の貧困の拡大を招き
ます。
「力には力で対抗するしかない」路線を歩めば、必然的に核兵器保有を
目指すことになります。ロシアや中国など核兵器を持つ大国に見せつける
報復力を持ちたい、という執心にとらわれれば、核兵器保有に行き着きます。
それが人類社会においてどれだけ「ありえない発想」かは、論じるまでも
ありません。
そもそも日本に、いざとなれば戦争できる/続けられる体力・筋力はある
のでしょうか。石油・天然ガスなどの資源を輸入に依存する上に、食糧自給率
も低く小麦・大豆・とうもろこし・菜種油・家畜の飼料などの大部分を輸入に
頼る国が、諸外国との関係悪化で輸入の航路を塞がれたら?戦争以前の問題
です。
他国と関係が良好でないと到底生活を維持できない脆弱な国家に、他国との
「戦争」は非現実的です。憲法尊重擁護義務を負い、完全な人権保障を目指す
べき国会議員が、憲法9条にのっとり全力で戦争を回避することは、手間は
かかっても、最も合理的でコスパ良い選択可能な唯一の道ではないでしょうか。
出口の見えない不況と貧困の拡大が広がり、現実に人権が脅かされている人
が多数いて、しかも少子化対策や児童手当には「財源が…」云々言って渋る
のに、際限のない軍拡には無条件に税金を注ぐって、お金の使い道が違いま
せんか?本当に国民の命・健康・人権を守る気があるのか、国の姿勢が問われ
ます。
諸外国との関係悪化は、日本での国籍/民族差別やヘイトスピーチにつながり
ます。結局「抑止力」での脅し合い(際限ない軍拡)がもたらすのは貧困や差別
など「戦争の芽」ばかり。経済的にも、人権保障の観点からも、平和外交の努力
を積み重ねて全力で戦争を回避することが、一番現実的で合理的です。