どうにもおかしないわゆる「改憲4項目」に対する見解
~あすわかは知憲にいっそう邁進します~
1. 改憲への「熱意」
2018年3月25日、自由民主党大会において「改憲4項目」の
条文イメージ(たたき台素案)が発表され、安倍晋三首相(総裁)は
「結党以来の課題である憲法改正に取り組む時が来た。」と宣言し、
改憲への並々ならない意欲を党内外に示しました。
しかし、安倍政権と与党自民党が前のめりに進めようとしている
この改憲に、私たち「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、これ
以上ない民主主義の危機を感じます。
2.「改憲4項目」に対する当会の見解
(1)9条については、9条2項を維持したまま「必要な自衛の措置」
をとる「自衛隊」を明記する案が示されました。安倍首相は、自衛隊が
違憲と言われることは自衛隊員に対し無責任だ、と意気込みますが、
違憲な安保法制を強行成立させ、「安全だ」と言い張って自衛官を戦闘
地域へ派遣したあげく、その危険性を指摘する日報を隠ぺいした現政権
の方がはるかに自衛隊に対して無責任ではないでしょうか。また、安倍
首相は、改憲によって「自衛隊の任務や権限に変更が生じない」とも
述べますが、違憲な安保法制により集団的自衛権を行使できる自衛隊が
憲法に書き込まれれば、「後法は前法に優越する」の原則により9条
2項が死文化する危険があります。「専守防衛」という政府解釈のより
どころであった「必要最小限度」という言葉さえも使わない点に、任務
や権限が変更される可能性を見て取ることが出来ます。そもそも、
「変更が生じない」ような改憲に850億円もかけるのは、無駄では
ないでしょうか。
(2)次に、いわゆる「緊急事態条項」(改憲素案64条の2、同
73条の2)は、国家緊急権の創設を意味します。これは憲法秩序
(三権分立と人権保障)を一時停止させて内閣による独裁を許す、
極めて重大な条項です。内閣の一存で国会の了承も得ずに独裁が可能
になる憲法の“自爆装置”は、自然災害時には有害無益(災害時に必要
なのは現場に権限を下すことと事前の法整備、訓練)であると、すで
に弁護士会をはじめとする被災地からの強い批判があります。災害時
における国会議員の任期延長など無くても「参議院の緊急集会」(54
条2項)で対応できるでしょうし、他方で選挙をひたすら先のばしに
して民意を無視する道具として濫用されかねません。またこの案にいう
「その他の異常かつ大規模な災害」が「武力攻撃災害」(国民保護法)
をも含むのであれば、この条項は自然災害に限らず有事にも使われる
可能性があり、政府による恣意的な運用の危険は広がります。
(3)さらに「教育環境の整備」については、「教育無償化」では
ないという点に注目です。また、もともと、教育を受ける権利や義務
教育の規定(26条)は、国家に教育環境の整備を義務付けており、
新たな条文の必要性には疑問を抱かざるを得ません。本当に教育環境
の整備が必要なのであれば、現在何が不足しており、それに対応する
にはどのような条件が必要なのか、具体的に明らかにしてから、憲法
を変えることによるメリット・デメリットを説明してほしいものです。
(4)最後に「合区の解消」があります。これは、一人一票の原則を
諦めることで、各都道府県から最低二人の参議院議員(半数改選なの
で選挙のたびに一人)を選出できるようにする案です。もっとも、
憲法を変えなくても、議員定数や選挙制度を変えることで、各地域から
二人の参議院議員を選出することは可能です。ですので、なぜ一人
一票の原則を辞める必要があるのか、そのメリットやデメリット、
現在の制度の問題点などを具体的に明らかにしてから、憲法を変える
ことの是非を検討してほしいものです。
(5)以上、どの項目をとっても改憲の必要性には疑問を抱かざる
を得ませんし、自衛隊条項や緊急事態条項の新設にあっては、自衛官
や市民の人権を侵害してしまうのではないか、という不安が増すばかり
です。時間とお金をかけてまで改憲をしようというのであれば、主権者
であり憲法制定権者である市民に対する説明は必要不可欠であり、
それこそが、民主主義国家における代表者(国会議員)の責務という
べきです。
3.あすわかは、この国の民主主義をアシストします。
私たちは2013年の設立以来、「とりあえず憲法知っとこ!」と
知憲の草の根活動を展開してまいりました。憲法は、一人ひとりを
尊重し、権力の暴走を抑えることで、市民一人ひとりの幸せを実現
する土台であり(立憲主義)、より多くの市民がこうした憲法を知り、
関心を持つことで、「自分らしい」人生を送ることにつながり、民主
主義国家としてより豊かな社会へと発展することにつながるものだと
確信しているからです。
「知った」からこそ疑問がわき、「知った」からこそ怒り、「知った」
からこそ「もっと知り」たくなる。憲法カフェに参加した人たちが、
自分の言葉で率直な疑問や素朴な感動を語りだす光景は、人の「学び」
の営みが、民主主義の本質である「議論」「対話」の歯車を滑らかに
動かす根源であることをなによりも鮮やかに教えてくれます。
自民党の提案する改憲は、こうした「議論」「対話」に値する提案
なのでしょうか。より豊かな社会へと発展させ、市民一人ひとりが幸せ
になれる土台となりうるのでしょうか。いま、市民一人ひとりの主権者
力が試されています。
そう受け止めた私たちあすわかは、知憲の活動をギアチェンジして
邁進する決意です。
HPはリニューアルし、憲法に関心を持った方がよりアクセスしや
すいものになりました。
「憲法ビンゴ」は、楽しみながら憲法に(講師がいなくても)触れる
機会を生み出せる絶好のアイテムです。
チラシ「『なんとなく賛成』からはもう卒業!~自民党改憲案20
18って実際どうなの('_')?~」では、改憲4項目を分かりやすく解説
しました。
なにより、「議論」と「対話」を実践する憲法カフェの活動は、
あすわかの活動の主軸として、全国津々浦々での開催を目指します。
「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、不断の努力(12条)を
実践し、よりパワフルに、あくまでも楽しく、この国の民主主義を
アシストします。
2018年4月19日
「明日の自由を守る若手弁護士の会」
共同代表 神保 大地
〃 黒澤 いつき