日本弁護士連合会が、
「重要土地等調査規制法案に反対する会長声明」を出しました。
<日弁連のサイト>
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210602.html?fbclid=IwAR3P7Aq3fa88WZ4Uewi4-kJI216L1p1-tt6ixHyYZemErwY9jEgN4K5yVlM
小難しい文章なので、下記に「あすわか訳」を貼ります。
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(あすわか訳)
重要土地等調査規制法案(以下「本法案」といいます。)は、本年
6月1日の衆議院本会議で可決され、今後、参議院で審議される予定です。
この法案は、
内閣総理大臣は、
閣議決定した基本方針に基づき、
重要施設の敷地の周囲約1kmや国境離島等の区域内に「注視区域」や
「特別注視区域」を指定することができ、
その区域内にある土地・建物の利用に関し、調査や規制をすることができる。
…というものです。
しかしながら、本法案には、次のとおり重大な問題があります。
第一
本法案でいう「重要施設」の中には、「自衛隊等の施設」以外に
「生活関連施設」というのが含まれていますが、なにが「生活関連施設」
になるのか、は政令に委ねられています(政令とは、国会ではなく内閣が
定めるものです)。しかも、なにが「生活関連施設」にあたるかについて、
法案では、当該施設の「機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、
身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められる」ことが
必要と書かれていますが、この書き方自体が曖昧すぎで、政府が恣意的に
「これも、あれも当てはまるから重要施設だ」と指定できてしまう危険が
あります。
第二
本法案では、地方公共団体の首長に対し、注視区域内の土地・建物の
利用者等に関する情報(プライバシー)の提供を求めることができる、
と定められていますが、その範囲も政令に丸投げです。
政府は、そのエリアの「土地・建物の所有者・利用者その他の関係者」
の思想・良心や表現行為に関わる情報も含め、あらゆる個人情報を、
本人の知らないうちに集めることができてしまい、思想・良心の自由、
表現の自由、プライバシー権などを侵害する危険性があります。
第三
本法案では、注視区域内の土地・建物の利用者等に対して、当該土地
等の利用に関し報告又は資料の提出を求めることができ、それを拒否
した場合には、罰金を科すことができるとされています。そこでは、
どんな情報(プライバシー)を求められるのか、何を提出しろといえる
のかについて何の制限もないので、人の思想・良心を探られるおそれの
ある事項も含まれかねません。このような事項について、刑罰で脅しな
がら(!)報告又は資料提出義務を課すことは、思想・良心の自由、
表現の自由、プライバシー権などを侵害する危険があります。
第四
本法案では、内閣総理大臣が、注視区域内で「あの土地・建物の使い
方は重要施設の機能をジャマする行為だ(行為になりうる)」と判断
したら、刑罰で脅しながら、「勧告」とか「命令」とかでその土地・
建物の利用を制限することができる、とされている。
しかし、「機能を阻害する行為」や「供する明らかなおそれ」という
ような曖昧な要件の下で利用を制限することは、その土地・建物を所有
する人の財産権を侵害する危険性があります。
第五
本法案では、特別注視区域内の一定面積以上の土地等の売買等契約
について、内閣総理大臣への届出を義務付け、違反には刑罰を科すと
定められていますが、これも自由な取引に厳しすぎる規制をかけるもの
で、財産権の侵害につながるおそれがあります。
このように、本法案は、思想・良心の自由、表現の自由、プライバシ
ー権、財産権などの人権を侵害し、個人の尊厳(民主主義国家において
一番大事なもの)を脅かす危険があるとともに、曖昧な要件の下で刑罰
を科すことから罪刑法定主義(どういう行為がどういう罪に当たるのか
法律で明確に定めなければならない原則)に反するおそれがあります。
なお、本法案は「自衛隊や米軍基地等の周辺の土地を外国資本が取得
してその機能を阻害すること等の防止」が目的だとされていますが、
これまで、そのような土地取得等によって重要施設の機能が阻害された
事実がないことは政府も認めています。そもそもこの法律の必要性を
根拠づける事実があるのか、はなはだ疑問です。
よって、当連合会は、法の支配の徹底と基本的人権の尊重を求める立場
から、不明確な文言や政令への広範な委任により基本的人権を侵害する
おそれが極めて大きい本法案について、反対します。