参議院議員選挙の結果は、改憲の行方を確実に左右します。
ぜひ念頭に置いた上で、投票して下さい。
● 参議院選挙に向け 与野党9党 憲法改正めぐり議論 NHK日曜討論 (NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220626/k10013689021000.html
自民党がここ数年特に積極的に提示してきた改憲案は、下記の①~④です。
①自衛隊を憲法に明記する案
②-1 緊急事態条項の創設
②ー2 緊急事態における国会議員の任期延長
③ 教育環境の整備
④ 合区の解消
それぞれどのような案なのか、どのような問題があるのか、投票前
にぜひ知って下さい。
②-1 緊急事態条項の創設
憲法に創設しよう、と提案されている緊急事態条項(国家緊急権)。
一般的には、【戦争・内乱・大災害など、およそ通常の統治システム
では対処できないほどの非常事態に際し、立憲体制(人権保障と三権分立)
を停止し、政治権力を一点に集中させることで、事態に対処する制度】
と定義されます。
自民党が創設を提案している「緊急事態条項」は、その条文イメージ
を見てみると、内閣が「大災害で国会が対応してる場合ではない!」と
判断すれば、国会の立法権と同等の権限を内閣が持てる(内閣が法律と
同等の力を持つ政令を定められるという)制度になっています。
内閣の一存で三権分立を止める、強大な権力集中のスイッチといえま
しょう。
緊急事態条項は、「戒厳令」「非常事態宣言」など、採用している国
によって呼び名は多様です。しかしいずれにせよ、憲法つまり三権分立
・人権保障の一時停止のシステムであり、定め方や運用によっては憲法
自身の自爆装置になり得、濫用の危険性が常に伴う制度であることには
変わりありません。ナチスはこの国家緊急権を巧みに使って独裁体制を
築きました。
こういう緊急事態条項を提案している政党は、口をそろえて「大災害
に備えて」といいます。しかし、災害大国・日本にはすでに災害対策
基本法や災害救助法ほか緻密な(人権の観点からはすでにかなり危うい
ほどの)災害法制が整っています。緊急事態条項などで内閣が独裁を
しくよりも、権限を現場に下ろす方がよほど大事です💡
ちなみに…「東日本大震災で、憲法に緊急事態条項がないせいで被災地
で緊急車両のガソリン不足が相次ぎ、多くの震災関連死を招いた」という
言説があります。これは調査の結果、燃料不足で救急搬送できなかった
事実は1件もなく、デマであることが確認されています。デマに煽られ
ないよう、ご注意ください⚠
もう一点。日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)が無いのは、
制定時に政府が「積極的に拒否した」からです。
明治憲法下では国家緊急権(緊急勅令)が乱発しました。結果として
軍の暴走(朝鮮人・中国人の虐殺)が起きたり、治安維持法を凶悪な
ものへ「改正」するために使われたり、政府はその危険性を分かって
いたのです。日本国憲法の制定時、議会で緊急事態条項(国家緊急権)
を設けるべきか審議されましたが、金森徳次郎国務大臣は「あれば必ず
濫用される」危険性と、民主政治の徹底により対処できるから不要、
と答弁し、明確に国家緊急権を拒否しました。こういう先人たちの深慮
も、ぜひ知っておいて下さい。
<つづく>