2014年6月2日月曜日

エンタメ憲法シリーズ~「ウィキッド」前篇


皆さんは、劇団四季のウィキッドをご覧になったことはあるでしょうか?

ウィキッドを見に行ったら、素晴らしかった一方で、今の日本のことを言われているようで身につまされることがたくさんあったのです。

★ネタバレな内容を含みますので、ご注意ください★ 

2人の主人公、エルファバとグリンダは、魔法使いになる学校に通っていましたが、エルファバは肌の色が緑色で、そのことで虐められていました。一方で、魔法の力を認められて、校長先生の特別指導を受けられるようになりました。

オズの国は、人も動物も同じ言葉を話す国ですが、どうやら過去に大きな政変やら戦争やらがあったようです。その学校で教えている動物のディラモンド先生は、歴史の授業で、過去に起こった出来事とその問題について話していました。
ところが、ある日、動物が言葉を話してはいけないということになり、ディラモンド先生は、秘密警察っぽい人たちに捕まってしまいました。
しかも、秘密警察っぽい人たちは、動物を小さい頃から調教しておけば、そもそも言葉を覚える危険がなくなるだろうというのです。
ちょうどその頃、オズの魔法使い陛下に謁見する機会を得たエルファバは、動物たちから言葉を奪う企みがあるので、助けてあげてほしいとお願いします。
オズの魔法使いは、助けることを約束しますが、そのためには、まず力を見せてほしいと言葉巧みにエルファバに言い、魔法の本をエルファバに渡します。エルファバには、なぜかその本の文字が読めて、魔法を唱えることができ、猿に翼が生えてきます。しかし、猿は苦しそうにしていて、どうもおかしいことに気づきます。
実は、オズの魔法使いには魔法の力はなく、エルファバを利用しようとしていただけでした。しかも、動物たちの言葉を奪っていたのはオズの魔法使いだったことが分かり、エルファバは逃げ出そうとします。
オズの魔法使いは、エルファバは知り過ぎたから外に出してはいけないと言い、動物たちに悪いことをしているのはエルファバだとして罪をエルファバに被せて、国中に宣伝してしまいます…。

…その後は、見てのお楽しみ☆

 

…こんなところに注目してみていた観客がどれだけいただろうかと思いつつ、どこかで聞いたような話で、身につまされる思いがしました。まさに今の日本を見ているようで、この脚本家は、どうしてこんな話が描けたんだろうと不思議に思いました。
 
オズの魔法使いが、「国じゅうにあふれる不平不満を取り除くには、敵を作ることがいちばんだ」というシーンがあります。これまでの歴史の中で、幾度となく繰り返されてきたことです。

パンフレットによると、脚本家は、ブッシュ(子)大統領をイメージしてオズの魔法使いを書いたようですね。クリントンの要素もニクソンの要素も入っているようです。政治に対する風刺を、それとなく盛り込むことができるのが、ミュージカルの良いところだとも書かれていました。大量破壊兵器があると嘘を言ってイラク戦争に突入したことを皮肉っているようにも感じました。

そういえば、最近も、集団的自衛権の問題で、似たような話がありますよね。アジアに脅威があると言いますが、安倍政権になってから日中の協議の機会がほとんど持たれていません。そのせいでギクシャクしているようにも見えますし、危機を作り出して煽っているようにも見えます。北朝鮮の問題も、日本に攻めてくるならその前に韓国に攻め込んでいるのではないかとも思いますので、どこまで現実的な想定なのかよく分かりません。 


ところで、オズの魔法使いは、あたかもエルファバの希望を叶えてくれるかのようなことを言って、エルファバに魔法を使わせ、かえって悪いことをしてしまいます。
これって、「集団的自衛権の行使を容認したとしても、イラクに行くようなことにはならない」とか、「特定秘密保護法は、一般の国民には関係ない」と言いつつ、実際には一般の国民も処罰可能な条文になっていたり、「TPPには参加しない」と選挙のときには約束して、今では協議に参加していたりするのと、同じですよね。
弁護士として色々な事件を見ていると、「悪いようにしない」というのは、大概、「悪いようにする」ものだと感じます。

また、オズの魔法使いは、大衆の前には姿を現さず、機械仕掛けの大きな顔の像を操って、大衆に向けて威厳や魔力があるような印象を持たせようとしていました。
なんとなく雰囲気で権力者の地位に付けてしまうことは大変危険なことです。その政治家がどのような思想信条を持っているのかということは、過去の言動、経歴を見ていくとよく分かりますので、そういったことまでよくチェックして投票したいものですね。

一方、「良い魔女」と呼ばれるようになったグリンダは、真実でないと知りながら、権力側に都合の良い宣伝をし、国民から人気を得ます。
真実でない宣伝をすることに良心の呵責を感じながらも、これで国民は喜び、自分も人気を得るからそこから逃れられない。
これも、どこかで見たような話ではありませんか?
 
とまあ、いろいろ気になりながら見ていたのですが、苦難を乗り越えようとする姿に純粋に感動しました。歌もダンスも素晴らしく、涙なしには見ることができません。今年11月16日(日)に千秋楽だということのようですので、見るなら今のうちですよ☆
 
明日は、ウィキッドの中にある憲法問題等について書いてみたいと思います。