2013年12月3日火曜日

特定秘密保護法案の衆院強行採決に強く抗議し、同法案の廃案を求める声明


 2013年11月26日、特定秘密保護法案が衆議院において
強行採決されました。「明日の自由を守る若手弁護士の会」は
この採決に強く抗議し、参議院での廃案を求めます。


 言うまでもなく、民主政治とは主権者国民の厳粛な信託に
よるものであり、政府が保有する情報が国民に開示されること
は、民主政治の前提です。情報を得て議論と思索を重ね、
そして新たな情報(表現)を他者へ発信する、このサイクルが
機能して初めて、民主政治のシステムは有効になるのです。
  特定秘密保護法案は、情報を国民に与えないことでこの
サイクルを機能不全に陥らせ、日本国憲法の支柱たる民主
主義と国民主権原理を侵害するのみならず、国民の基本的
人権を侵害し、国際社会からの信頼を喪失させるものに他な
りません。


 同法案の危険性は、衆議院での審議において浮き彫りに
なりました。広範な特定秘密の指定によって「知る権利」を
制約するのみならず、国会議員の国政調査権すら及ばなく
することで国会の権限を大幅に制限すること。広範かつ不
明確な犯罪類型と処罰を規定し(罪刑法定主義に真っ向から
反し)ていること。行政機関の長の恣意的な特定秘密の指定
に歯止めをかける方策にほとんど実効性がないこと。特定
秘密に触れる極めて多くの公務員と民間人並びにその家族・
関係者の身辺調査がなされてプライバシーが侵害されること。
等々、そのどれ一つとっても、それだけで十分に民主主義と
人権保障の原則に重大な影響を及ぼすものです。
 これらの重大事項につき、政府与党から誠実な答弁は

ついに一度もなされることはありませんでした。また、一度
しか開催されなかった公聴会においては与党推薦の公述
を含むすべての公述人が同法案に反対ないし慎重な意見を
述べたにもかかわらず、政府与党はその成果を一切法案に
反映させることなく、衆議院での採決を強行したのです。
  私たちは、同法案自体がはらむ非民主的性格を先取りする
かのような、主権者をないがしろにする政府与党の姿勢を許す
ことはできません。


 刑罰を振りかざして主権者・メディア・ジャーナリストを情報から
遠ざけることはすなわちこれらを政治から遠ざけることです。
真実を知った上で政治を語ることをタブーとする社会がどんな
顛末を迎えるか、私たちは68年前にそれを自ら経験したはずです。
それは決して我が国内部における民主主義の劣化の問題にとど
まらず、諸外国との信頼関係にも重大な悪影響を及ぼすでしょう。
国連人権理事会特別報告者や国連人権高等弁務官が相次いで
同法案に対する懸念を表明し、米有力紙が相次いで社説や記事
で同法案を批判したことは、まさに同法案が国際社会全体へ重大
な悪影響を及ぼすことの証左です。


 当会は、立憲主義と民主主義を擁護して自民党の改憲草案の
危険性を訴える立場から、かような重大な危険をはらむ同法案の
拙速な強行採決に強く抗議するとともに、民主主義と本質的に
相容れない同法案の廃案を求めます。



            2013年12月3日 明日の自由を守る若手弁護士の会
                                                             共同代表 神保 大地
                          同   黒澤 いつき