2022年7月1日金曜日

自民党の目指す改憲4項目のおさらい ②‐1緊急事態条項の創設

 

 参議院議員選挙の結果は、改憲の行方を確実に左右します。

ぜひ念頭に置いた上で、投票して下さい。


● 参議院選挙に向け 与野党9党 憲法改正めぐり議論 NHK日曜討論 (NHK)

 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220626/k10013689021000.html



 自民党がここ数年特に積極的に提示してきた改憲案は、下記の①~④です。

①自衛隊を憲法に明記する案

②-1 緊急事態条項の創設

②ー2 緊急事態における国会議員の任期延長

③ 教育環境の整備

④ 合区の解消

 それぞれどのような案なのか、どのような問題があるのか、投票前

にぜひ知って下さい。

 


②-1 緊急事態条項の創設


 憲法に創設しよう、と提案されている緊急事態条項(国家緊急権)。

 一般的には、【戦争・内乱・大災害など、およそ通常の統治システム

では対処できないほどの非常事態に際し、立憲体制(人権保障と三権分立)

を停止し、政治権力を一点に集中させることで、事態に対処する制度】

と定義されます。

 自民党が創設を提案している「緊急事態条項」は、その条文イメージ

を見てみると、内閣が「大災害で国会が対応してる場合ではない!」と

判断すれば、国会の立法権と同等の権限を内閣が持てる(内閣が法律と

同等の力を持つ政令を定められるという)制度になっています。

内閣の一存で三権分立を止める、強大な権力集中のスイッチといえま

しょう。

 


 緊急事態条項は、「戒厳令」「非常事態宣言」など、採用している国

によって呼び名は多様です。しかしいずれにせよ、憲法つまり三権分立

・人権保障の一時停止のシステムであり、定め方や運用によっては憲法

自身の自爆装置になり得、濫用の危険性が常に伴う制度であることには

変わりありません。ナチスはこの国家緊急権を巧みに使って独裁体制を

築きました。

 こういう緊急事態条項を提案している政党は、口をそろえて「大災害

に備えて」といいます。しかし、災害大国・日本にはすでに災害対策

基本法や災害救助法ほか緻密な(人権の観点からはすでにかなり危うい

ほどの)災害法制が整っています。緊急事態条項などで内閣が独裁を

しくよりも、権限を現場に下ろす方がよほど大事です💡



 ちなみに…「東日本大震災で、憲法に緊急事態条項がないせいで被災地

で緊急車両のガソリン不足が相次ぎ、多くの震災関連死を招いた」という

言説があります。これは調査の結果、燃料不足で救急搬送できなかった

事実は1件もなく、デマであることが確認されています。デマに煽られ

ないよう、ご注意ください⚠


 もう一点。日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)が無いのは、

制定時に政府が「積極的に拒否した」からです。

 明治憲法下では国家緊急権(緊急勅令)が乱発しました。結果として

軍の暴走(朝鮮人・中国人の虐殺)が起きたり、治安維持法を凶悪な

ものへ「改正」するために使われたり、政府はその危険性を分かって

いたのです。日本国憲法の制定時、議会で緊急事態条項(国家緊急権)

を設けるべきか審議されましたが、金森徳次郎国務大臣は「あれば必ず

濫用される」危険性と、民主政治の徹底により対処できるから不要、

と答弁し、明確に国家緊急権を拒否しました。こういう先人たちの深慮

も、ぜひ知っておいて下さい。





<つづく>