2014年12月21日日曜日

今さら人に聞けない集団的自衛権<「米艦の邦人輸送」の事例がイタイほど空想なワケ>


安倍首相は、通常国会で安保関連法の成立をめざすと言ったり日米ガイドラインの改訂をすすめると言ったり、
集団的自衛権を行使できるように法律を整えようとしています。
こんな状況だからこそ、集団的自衛権とはどういうものか、どんな問題があるのか、確認しておく必要がありますね。

安倍首相が事あるごとに、「だから集団的自衛権は必要なんだ」と言っている事例があります。

「近隣諸国で紛争が起こって、逃れようとする邦人を輸送する
米国の船が襲われたとき、その船を守れなくていいのか」...

5月15日に安倍首相が記者会見したときに、大きなパネルを使って説明していたのを覚えている方も多いんじゃないでしょうか。
このパネルです(リンク先はPDF)。
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/05/15/20140515_kaiken_panel.pdf

でも、この事例、ほんとうに現実的なものなんでしょうか?

① そもそも戦争になってる段階で日本の民間人が大量に朝鮮半島に残っている、という想定自体がありえない。
外交が決裂し、国と国との関係が悪化し、戦争に発展しそうになったとき。
国は、自国民の命を守るために、情勢が悪化し始めた段階で渡航制限や帰国を促したりします。
海外旅行に行く前に、外務省のHPで確認することもありますよね
なので、朝鮮半島で実際に戦争が勃発した時点で、日本の民間人が(しかもパネルの絵にあるような子どもたちが)残っている、
という想定自体が、実はけっこう非現実的です。

② 戦闘機が飛び交う海を渡らせる?
それでも現地に残っている邦人はいるでしょう。
しかし、まずは戦況が落ち着くまでは身の安全を確保していてもらう、というのが軍事的に常識です。
戦闘機が飛び交い、いつ撃沈されるか分からない中で戦火をかいくぐって船に乗せ、海を渡らせることなどするわけがありません。
軍事的に、非常識です。

③ ついでにいうと、臨戦状態の軍艦には武器・兵器が詰め込まれています。
民間人が乗るスペースはありません。

④ 米艦は邦人輸送を事実上しない、と事実上宣言されています。
報道もされましたが、日米の「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)に基づく周辺事態法を作る際、
アメリカ側の強い意向で、避難する日本人を米軍が運ぶ「非戦闘員救出作戦」(NEO)は拒否されたのです。

それもそのはずで、米軍は海外の自国民らを救出・保護する際のルールを
自分で決めています。
そこにはハッキリと国籍による4段階の優先順位があります。

 第1順位 米国のパスポートを持つ者(米国籍)
 第2順位 米国の永住許可証(グリーンカード)を持つ者
 第3順位 英・加・豪・ニュージーランド国民
 第4順位 その他

日本は「その他」、順序としては最後なのです。
韓国に居住している米民間人は14万人いますから、戦争になるまでに減っているとはいえ、日本人が実際に運んでもらえる日が来るまでには戦争終わってるんじゃないか、というほど、事実上、「米軍は日本人を輸送しない」のです。

このように、安倍首相が説明する「米艦の邦人輸送」の例はとっても非現実的です。
こんな非現実的な例で集団的自衛権の行使を(憲法も変えずに)できるようにするなど、
あっていいんでしょうか?

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今さら人に聞けない集団的自衛権シリーズ
<集団的自衛権権とは?>
http://www.asuno-jiyuu.com/2014/11/blog-post_32.html
<シリアやパレスチナでの武力行使に参加するってこと>
http://www.asuno-jiyuu.com/2014/11/blog-post_30.html
<解釈改憲という禁じ手>
http://www.asuno-jiyuu.com/2014/12/blog-post_2.html