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2013年8月8日木曜日
内閣法制局長官の人事と9条解釈
報道によると、安倍内閣は内閣法制局長官に
小松一郎駐仏大使をあてる人事を決定したとのことです。
内閣法制局は、簡単に言ってしまえば閣議に付される
法令についての調査や立案、審査を担当する、法律に
関する職人集団です。憲法に関しては、数十年にわたる
研究の積み重ねの上での政府解釈を答弁する頭脳部門
でもあります。
改憲派の方々から、「9条は死文化してる」という主張が
なされますが、いえいえとんでもない自衛隊があり、海外に
派遣されていても、戦闘地域に派遣されることなく、戦闘に
参加せず、自衛隊員誰1人として人を殺さず、また殺され
なかったのは、憲法9条があるからです。
どんだけイラクに「派兵」されても、「憲法9条は集団的
自衛権を認めない」という解釈を内閣法制局が崩さなかった
からこそ、アメリカ(同盟国)の戦争に参加することなく、
戦後68年間の平和が維持されてきました。
内閣法制局長官に、集団的自衛権容認派の外交官である
小松氏を任命するというこのたびの唐突且つ異例の人事は、
まさしく、トップをすげ替えることで、この「政府解釈」をトップ
ダウンで変えたい、という政府の並々ならぬ意欲の表れです。
集団的自衛権とは、要するに同盟国の戦争を我が国の
戦争として受け止めて、自国は攻撃されてもいないのに、
その戦争に参加する権利のことです。憲法9条が集団的
自衛権を認めている…どの角度から見ても、そんな解釈は
出てこない(法令解釈のプロである法制局であるからこそ
突拍子も無い解釈が出てくるはずが無いともいえる)のです
が、その「常識」を飛び越えた解釈が、この内閣の、新長官
の下、ついになされてしまう可能性が高まりました。
9条を死文化させて、次に明文改憲をしよう、というのが、
安倍首相の「悲願」達成ののシナリオなのでしょうか。
96条改正と同じ「姑息さ」を感じざるを得ません。
自国を愛するが故の、確信を持った最善の改憲であるならば、
なぜ自信を持って真正面からの議論で内閣法制局の職人達に
勝ち、全国民を説得して改憲する、という真っ当なプロセスを
踏まないのでしょうか。
自分に有利なルールにしてから変えようとか、自分に都合の
良い部下をトップにして法制局の膨大な知恵の積み重ねを崩
そうとか…このような不誠実な「手口」(←最近誰かが使った
ワードですね)が史実として残ることは不名誉極まりないこと
でしょうに、恥ずかしくないのでしょうか。
主権者として一人ひとりがこの国のあり方そのもの(=憲法)を
考え、成熟した議論を展開するには時間がかかります。主権者
一人ひとりの幸せのための改憲なのだと(決して、国民は二の次
三の次、富国強兵のための改憲などではないと)いうのであれば、
国民の熟慮と議論の醸成を促し、見届ける気概を見せてほしい
ものです。