2017年5月9日火曜日

やや日めくり憲法58条 (役員の選任、議院規則・懲罰)


日本国憲法 58条〔役員の選任及び議院の自律権〕

1 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の
 規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした
 議員を懲罰することができる。但し、議員を除名する
 には、出席議員の三分の二以上の多数による議決を
 必要とする。


首相の発言で、ますます国会の役割に注目が高まっていますね!
さて、憲法58条も、国会の運営の仕方についての条文で
議院の自律権にとって重要な条文です。

 1項は、衆議院や参議院の議長などの役員は
それぞれの議院で決める、という内容です。

 議長は会議の進行を担当する重要な役割です。
 たとえば、もし不公平な議長が議事進行をすると、誰かが長々と発言しつづけ
るのを放置して、その他の人を「時間切れ」に追い込んでしまうこともできて
しまうわけです。

 5月8日の首相の発言でも明らかなとおり(?)
内閣は、国会議員から政策や言動について追及される立場にあり
しかもその追及を逃げようとしがちな立場にあります。

 そのため、議事の進行に大きく関わる議長については、内閣が決めるのでは
なく、国民の代表である国会議員が、自分たちの中から選びましょうということ
になっているのです。

 戦前の大日本帝国憲法のもとでは、
議長を決めるのは天皇で、議会の職員も内閣が任命していたそうです。
 民主主義の日本になってからは、内閣の権力をきちんと監視する国会が
まともに運営できるように、議長などの役員も、国民の代表の中から選ぶ
仕組みにしているのです。



2項は、議院の規則制定権と、懲罰権を定めています。

 議院の会議の進め方などの内部規則も、議事を公正に進めるために重要な
役割をもっています。
 ただ、国会の傍聴についての規則などは国会の公開原則(57条)に引っか
かる可能性も出てくるので、法律の手続で定めた方がいいと言われています。


 懲罰権とはなんでしょうか。
 これは、国会という大切な議論の場の秩序を乱した国会議員に対する制裁
いわば懲戒処分ができるということです。

 この懲罰権は、場合によっては「除名」という形で、国民に選ばれた議員を
クビにすることができてしまうものです。
 こうした懲罰権は、各議院が自律して公正な議事運営を保つための権限であり
内閣ではなく各議院自身が行う、ということになっているわけです。



 国会は、法律を作ることで、国民の権利を制限したり、義務を課したりする
という大きな権限をもっています。
 そのため、国会の議事運営が、内閣からの介入なく自律的に公正に行われる
よう、日本国憲法では様々な定めを置いています。

 国会議員は、一人ひとりが国民の代表者として、国会の議事運営に責任を
もって携わってもらいたいですし、
 私たち自身も主権者として、彼らが真面目に働いているか、不断の努力で
チェックしていきましょう!