2017年7月24日月曜日

首相も自民党も、「改憲することは決まってる」的な進め方はしないでほしい…



 安倍首相が、憲法改正について、秋の臨時国会で「各党はただ単に
反対という主張ではなく、自分たちはこう考えているという案を持ち寄って
いただきたい」と述べたそうです。

● 安倍晋三首相、憲法改正で「単に反対ではなく案を持ち寄ってほしい」(産経)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170723-00000521-san-pol


 「今のままで問題なくない?」「変える必要なくない?」という意見も、
十分立派な「案」だと思うのですが、そういう意見がかなりの程度ある
という事実はスルーなのでしょうか。
 今までもずっと「変える必要はない」という案が主張され続けてきた
からこそ、70年間、改正されてこなかったわけですが、いつの間に
その案が「意見として失格」になったのかな…?とっても不思議です。

 
 憲法は私たち国民のものですし、国民が首相や国会議員など「権力」を
どう縛るか、というツールなので、勝手に首相に「あ、憲法変えるから」と
進められる筋合いはありません。
 国民の中で「憲法のこの条文をとにかく変えなければ!」という世論が
巻き起こってもいないのに、なぜ「憲法はとにかく変えましょう」と権力側
から言われなければならないのか…順序が違うし、理不尽と言わざるを
得ません。


 冒頭で紹介した記事によると、安倍首相は、このような発言もしています。
  ↓
「どの条文を改正するかという議論がスタートした。この夏に汗を流しながら
議論を深め、絞っていただけるだろう」と期待を示した。


 …やっぱり、おかしいですよね(^^;
 なんで「とりあえず変えるっていう結論だけは決まってる」という議論なの
でしょうか。
 「どの条文を変えなきゃいけないかは、まだ分からないけれど、とにかく
変えるんだ」って… そこにあるのは「とにかく今の憲法がキライ」という
私怨にも似た情念と、
 「おじいちゃんが改憲したかったから、孫の僕がそれを叶えるんだ」という
無邪気なほどの公私混同な浅はかさが見えます(すみません口が悪すぎ
ました…)。


 仙台市長選では野党統一候補が当選しました。
 あぁ、やはり国民は、改憲には興味無いんだな、とよりハッキリ見えたわけ
ですが、安倍首相にはそれが見えているでしょうか。

2017年7月14日金曜日

首相の執念につきあって改憲する義理はないのですが(*-*)


 街を歩いていたり、新聞を読んでいたりすると、ふと、この社会の
どこに「今すぐ憲法改正しなきゃ!」という“全国民的な”需要がある
のかな…と、思います。

 先日行われたNHKの世論調査では、安倍首相が自民党の改憲案を
秋の臨時国会に提出したいと表明したことについて、「評価しない」が
「評価する」を上回りました。


● “臨時国会に改憲案”「評価しない」が「評価する」上回る (NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170711/k10011053161000.html?utm_int=news_contents_news-main_007

 「あまり評価しない」31%
 「まったく評価しない」20% 
 「大いに評価する」8%
 「ある程度評価する」28%
 

 …やっぱり、そうですよね。
 どんなに頑張っても正社員になれないおかしさ。どんなに過労死ライン
まで働いても生活に余裕ができず、妊娠したら解雇されたり左遷されたり
する理不尽さ。原発事故で避難を余儀なくされているのに、補助を打ち
切られて「避難者」としてカウントされなくなった理不尽さ。
 こういう「待ったなしで対処しなければならない社会のゆがみ」は、それ
こそ国民の命に関わる重大問題なのに、なぜ安倍首相はそれへの情熱を
チラリとも見せずに、憲法を変える、憲法を変える、憲法を変えるんだ、と
…(-_-;)。

 しかも、憲法、私たち国民のもので、縛られてる首相が変えようとか言える
立場にはないし…。


 都議選での大敗を顧みつつ、自民党の中でも、「このまま首相の“なにが
なんでも改憲”の執念につきあってたら、マズいんじゃないか」という懸念が、
ようやくぽつりぽつりと出てきているようです。


● 20年改憲日程の実現、厳しく=自民・船田氏 (ロイター)
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1707/13/news114.html


 船田元議員は、首相が改憲を急ぐ理由について「自分が総理の間に憲法
改正に手を付けた、できれば成功したという気持ちの方が、先行していると
いうことだ」と、わりと身も蓋もなく明かし、
「憲法改正への賛成比率が低下しているのは、(支持率低下に)ひきずられ
ているためだと思う。9条改正そのものへの信頼というよりも、安倍首相
そのものへの信頼が下がってしまったというのが主な原因ではないか。
安倍首相が総理にふさわしくないと思っている人が増えており、その安倍
首相が言っている憲法改正もふさわしくないと(思う人がいると)いうことが
あるだろう。首相の信頼の問題が大きい」
 …と、わりと率直に首相の個人的執念で急がされる改憲への疑義を唱えて
います。

  
 当たり前すぎるほど当たり前の話ですが、
 憲法は、私たち国民が、自由や人権を守るために、権力を縛るための法
です。
 なので、権力側が「このロープきつい」と言ってロープを緩めたり切ったり
することは許されません。
 首相が改憲を急ぐというのは、まさにそういう話なのです。
 お祖父さんの夢を自分が果たす、とか、そんな情念に付き合わされる
筋合いはありませ~~~ん(>_<)。
 

2017年7月13日木曜日

8月5日(土) 憲法カフェ@岸和田のレトロ文化財☆


 先日行われたNHKの世論調査では、安倍首相が自民党の改憲案を
秋の臨時国会に提出したいと表明したことについて、「評価しない」が
「評価する」を上回ったようです。


● “臨時国会に改憲案”「評価しない」が「評価する」上回る (NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170711/k10011053161000.html?utm_int=news_contents_news-main_007

 「あまり評価しない」31%
 「まったく評価しない」20% 

 「大いに評価する」8%
 「ある程度評価する」28%
 
 …そりゃそうですよね、改憲なんて需要どこにあるんだ(ないだろ)って
いうことですよね(^^;

 過労死寸前まで働いてるのに生活がよくならない、正社員になりたいのに
何年経っても非正規のまま、働きたくても保育園が満員で子どもを預けられ
ない…
 社会はそんな悩みで溢れているのに、それはそっちのけで改憲だなんて、
おかしいですよね。


 改憲改憲って、安倍首相とか自民党は急ぐけれど、なぜそんなに憲法を
変えたがったいるのでしょう?
 それは、単純なことですが、安倍首相や自民党が今の憲法だと「都合が
悪い」と感じているからです。それはなぜ…?

 私たちの平穏な生活の土台になっている、大切な大切な憲法。
 今こそ、何が書かれているのか、これからの私たちの未来にどう影響が
あるのか、ぜひ、知ってみて下さい。

 8月5日に、歴史あるレトロな文化財の建物で、憲法カフェが開催されます☆


*・゜゜・*:.。..。.:*・*:゜・*:.。. .。.:*・゜゜・**・゜゜・*:.。..。.:*・*:゜・*:.。.
 
 憲法カフェ@岸和田


 珈琲などを飲みながら、憲法について考えよう!


日時: 2017年8月5日(土)14:00~


会場: CTL Bank 泉州倶楽部
   (大阪府岸和田市北町14-3)
 * 昭和8年建設の和泉銀行本店として使われた、登録有形文化財です。


参加費: 1000円(ドリンクつき)


講師: 小谷 成美 弁護士
  (のぞみ共同法律事務所/明日の自由を守る若手弁護士の会)


申込: 要参加申込 定員40名
  ※申込は、郵送、FAX、メールにてお願いします。
   FAX:072-438-3644
   メール:senshushiminrengo@gmail.com


主催: 泉州市民連合


2017年7月12日水曜日

7月29日(土) 楾大樹弁護士の「檻の中のライオン」憲法カフェ@広島市のブックカフェ



 楾大樹弁護士の「檻の中のライオン」憲法カフェ、29日には
広島市のブックカフェで開催されます♪

 夏休みですので、ぜひお子さん連れでお越し下さい。
 思っていることを自由に語り、住みたい場所に住み、なりたい職業を
目指し、愛する人と結婚する…そんななにげない生活は、憲法なしに
は送れません。首相が前のめりに憲法を変えようとしている今、憲法が
どんなものなのか、基本のキだけでも、ぜひ知ってみてください☆


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「檻の中のライオン」憲法カフェ
              @広島市のブックカフェ


 平和公園から徒歩2分。社会と人、人と人とをつなげるブックカフェ
【Social Book Cafe ハチドリ舎】オープン記念イベント
 子供にもわかりやすい『檻の中のライオン 憲法がわかる46のおはなし』
(かもがわ出版)の著者、楾(はんどう)大樹弁護士による小中学生にも
わかる憲法のおはなし!
 これまでに、全国10都道府県で開催し、今回が68回目!
 大人の方も大歓迎!
 ご家族連れや、学校の先生、憲法を一から学んでみたい方など・・・
 お待ちしています!
 来年度から、正進社の中学校公民副教材「公民の資料」に10ページ掲載
決定。


日時: 7月29日(土)13時~14時半


会場: Social Book Cafe ハチドリ舎
   広島市中区土橋町2-43 光花ビル201
   (平和公園から西へ徒歩2分)


対象:概ね小学6年生~大人の方


料金:ワンドリンクつき500円
   お菓子など別途注文できます。
   開始前にランチもできます。


申込:ひろしま市民法律事務所
   082-511-0350(電話受付 平日9時~18時)
   または、FBイベントページに人数・学年を書いてください。


定員: 30人


※ 書籍『檻の中のライオン 憲法がわかる46のおはなし』の
 販売・サイン会あり


※ 檻の中のライオン憲法条文クリアファイルなど、オリジナル
 グッズも販売

<FBイベントページ>
https://www.facebook.com/events/1786468404998672/?fref=ts





2017年7月11日火曜日

共謀罪(テロ等準備罪)が施行されました。心の支配などぜったいに許しません。


 7月11日になりました。
 今日は共謀罪(テロ等準備罪)の施行日。
 ついに、戦後最悪の治安立法が、力を持って動き始めます。

 政府・与党がどんなに「時間が経てばそのうち国民も忘れるだろう」と
バカにしようと、私たちは忘れません。
 国連の条約を結ぶためだという「目的」は、まるでウソでした。他でもない
国連の特別報告者が「その法律マズいでしょ」と警告したのですから!

 組織的犯罪集団だけが対象だと政府は言いますが、論理必然的に
「誰がテロリストで誰が一般市民なのかパっと見区別つかないから、
とりあえず国民全員を監視する」ことになります。
 単なる労組でも、単なる人権団体でも、単なる住民団体でも、「無害な
フリして、実は犯罪を企ててるだろう!」と検挙できてしまう余地を、
「あえて」そのままにして成立させたのは、この法律の真の目的が、
まさに「市民運動への恫喝」にあるからなのでは、という疑念は確信に
近づきつつあります。

 成立した6月15日と並んで、刑事法の体系が大きく崩れ、戦後民主主義
の歴史が大きく傷ついてしまった今日という施行日。まずは、改めて、
あすわかのメッセージをぜひお読み下さい。


*・゜・*:.。.*.。.:*・☆・゜・*:.。.*.。.:*・☆・゜・*:.。.*.。.:*・☆・゜・*:.。.:*・☆・゜・


 共謀罪(テロ等準備罪)が作られた今、「これからどうすればいいの」と
震えるすべての方へ。


 どうか、けっして、萎縮しないで下さい。
 その震え、その不安こそが権力の狙いなのですから。

 私たちには自由にものを考え、表現する自由があります。
 心の中を誰にも覗かれない自由があります。
 憲法に違反する共謀罪のせいで、皆さんが自発的に自由を手放したら、
永遠にこの国の民主主義は帰ってきません。
 一人ひとりが考え、表現し続けることは、「共謀罪」を運用させずに死文化
させる大きな圧力になります。

 それから、万が一、おかしな政治に声を上げる市民が共謀罪で捜索されたり
逮捕されたりしても、けっして「犯罪者」扱いしないでください。
 テロ等準備罪というまがまがしい名称で、「もの言う市民」を反社会的な存在
かのようにレッテル貼りする手口に乗せられたら、排除を恐れてみんな考える
ことを止めてしまいます。
 自由に政治を批判してなにが悪い、という風を吹かせ続けましょう。


 国民の心を侵すことになんのためらいもなく、同法案に賛成した政府・与党、
すべての国会議員を、私たちは忘れません。
 全身の血が沸くほどの怒りをもって、あなたたちを許しません。
 いくらでも濫用できる条文で「物言う市民」を恫喝する現政権に、民主主義
国家の舵を取る資格はありません。


 落胆、やりきれない思い、徒労感。すべての重い気持ちで押しつぶされそう
になっているすべての人へ。
 それでも希望はあるのです。
 あなたがその怒りを前向きなエネルギーに変えてくれる限り!

 私たちはいまある自由と、自由でいられる社会を手放したくありません。
 子どもたちの尊厳と自由も、穏やかな民主主義の社会も、手放すつもりは
ありません。
 自由を行使し続けることでしか、自由は守り抜けない――憲法が問いかける
「不断の努力」の覚悟を、「彼ら」に見せつけましょう。


 私たちあすわか570名は法律家として、主権者として、「不断の努力」で
共謀罪を廃止させることを誓います。

2017年7月10日月曜日

やや日めくり憲法 79条<最高裁判所の裁判官>



 
日本国憲法 79条
1 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の

 定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、
 その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを
 任命する。

2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後

 初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の
 審査に付し、その後十年を経過した後初めて
 行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、
 その後も同様とする。

3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の
 罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に
 達したときに退官する。
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の
 報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額する
 ことができない。


 いやはや…長い条文ですね~><


 79条は、最高裁判所の裁判官について書かれています。
 最高裁判所は、司法権の最高国家機関です。
 「権力をしばる」「権力が暴走するのを防ぐ」という立憲主義の観点から、
司法権が他の権限から独立していることは、とても大切です(日めくり76条
参照)。


 一方で、日本では、国民主権、つまり「私たちが主役」ですから、司法権にも、
国民のコントロールが及ぶようになっていることも大切です。
 79条の1項から4項は、国民のコントロールが意図された条文です。
 1項は、最高裁判所長官以外の、最高裁の裁判官は、「内閣でこれを任命
する」となっているので、国民のコントロールとは関係ないようにも見えます。
 しかし、日本国憲法は、内閣総理大臣を、選挙で選ばれた国会議員の中から
選ぶとしており、間接的に、民意を行政に反映させようとしています(日めくり
67条参照)。このような内閣が任命権を持つことで、国民の司法に対するコン
トロールを図ろうとしている、ということです。


 ですから、79条1項があるからといって、内閣が、自分たちに都合のいい
判決を出しそうな裁判官を、自分勝手に選んでいい、というわけではないこと
に注意が必要です。


 そして2項では最高裁判事の「国民審査」

 最高裁の裁判官を、適任かどうか国民が審判を下せるとても
貴重な機会です。
 最高裁の裁判官として「この人はふさわしくない!」と
思ったら、バツ印×をつける、という方法。
 なかなか関心を持ってもらえないのがとても残念ですが、
 許されない人権侵害な法律を違憲で無効だ!と争う裁判や、
 どう考えても無実なのに警察や検察の違法な捜査で起訴され
ている裁判など、
 国民の人権が問題になる裁判は、多くが最高裁まで争われます。
 その時に、最高裁が的確に違憲判決を出しているか、警察・検察
の違法捜査をきちんと「違法」だと判断しているか、15人それぞれ
の意見も示されるのでしっかりチェックできます。
 多数決で合憲判決が出たけれども私はこの法律は違憲だと考える、
という意見を出している裁判官は誰か、
 人権保障の視点から厳しく判断しているのは誰か、判断していない
のは誰か、
 司法のトップが憲法や人権の理念を堅持しているかどうか、実は
国民が「国民審査」でコントロールできる機会がある、ということを
ぜひ知っておいてください。

 5項では、最高裁判所裁判官の定年制が定められています(現在の法律では、
70歳が定年です)。
 6項には、定期的に相当額の報酬を受けることと、この報酬が減額されない
ことが書かれています。


 日めくり憲法76条の回に書いたように、「裁判所」だけでなく、一人ひと
りの「裁判官」の独立も保障されます。裁判官は、公平でなければならず、
内閣や他の裁判官などの意向を「忖度」してはなりません。
 79条6項は、裁判官の身分を収入面から保障することで、裁判官の職権の
独立を強化しています。
 この点について、自民党改憲草案は、
「この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による
場合を除き、減額できない。」
 としており、報酬の減額の余地を認めています。
 これは、裁判官の職権の独立性を強化するという趣旨を弱めるものですので、

裁判官が内閣の意向を「忖度」して、公正な判決を出しにくくなってしまわな
いか、心配です。

2017年7月9日日曜日

やや日めくり憲法78条 (裁判官の身分保障)

 日本国憲法 78条
  裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務
 を執ることができないと決定された場合を除いては、
 公の弾劾によらなければ罷免されない。
  裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふこと
 はできない。


 裁判官は、裁判所という組織に所属してはいますが、
 個々の担当の仕事は、上司や最高裁の指示を受けることなく独立して
行っています。

 ときには、ベテラン国会議員が当事者となる事件を担当することもある
でしょう。
 内閣など行政機関がやったことや、国会が決めた法律を、憲法違反と判断
せざるを得ないときもあるでしょう。
 そんなとき、内閣とか大臣とかから「オレ様を負けさせやがって、クビだ!」
なんてことが許されてしまったら、怖くて、とても公正な判断なんてでき
ませんよね。

 そこでこの憲法78条で裁判官を罷免(クビ)できる場合を厳しく限定
しているのです。

 裁判官の身分保障は、行政や立法に対する冷徹な違憲審査権を有し、立憲
主義の砦である裁判官が安心してその役割を果たすために欠かせない規定
なのです。

 なお、「公の弾劾」とは、国会に設置されている弾劾裁判所を言います。
 裁判官同士では裁かない、というわけですね。

 なんてすがすがしい、三権分立!

 ……とはいえ、 
 本当に裁判官って「お上」の顔色をうかがわずにいられるの?
という点には、疑問の余地もあります…(-_-;)。
 大日本帝国憲法のもとでも裁判官の身分保障をする規定はありました
(58条)が、裁判官の人事は司法大臣に握られており、個別の事件の担当
裁判官に、大臣や上司の裁判官が口を出した例もありました(大津事件など)。

 日本国憲法のもとでも、担当裁判官に上司が圧力をかけた例があります
(長沼ナイキ訴訟での平賀書簡事件)。

 また、国を敗訴させる判決や無罪判決、違憲判決を出した裁判官が
「なぜか」同期と同じように出世できず、全国の家庭裁判所の支部(都市部
から離れたところにあります)を転々とさせられる事態が起きており、
『渋々と 支部から支部へ 支部まわり 四分の虫にも五分の魂』といった歌も
詠まれています。

 最近でも、白ブリーフ1枚(実際には水着だそうです)の姿をTwitterに
アップするなどして人気のある裁判官が縄で縛られた上半身裸の男性の写真を
投稿したということで「厳重注意」処分を受けたことがありました。
しかもそれが顔写真つきでデカデカと報道されました。

 個人としての言動で、何も悪いことをしていないのに、まるで犯罪者扱い。
 裁判所は自分たちのプライベートな言動をチェックしているのか、と、若い
裁判官たちはさぞ慄いたことでしょう!
 でも、その裁判官を応援する声は根強く(インターネット社会って本当に
いいですね)その後も元気に投稿を続けておられます。
 臆することなく、自分らしく生き、おかしいことを「おかしい」と言える
社会を作っていきましょう!

2017年7月8日土曜日

やや日めくり憲法 77条 最高裁判所が規則を作ります

 日本国憲法 77条
  最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、
 裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する
 事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はな
 ければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を
 定める権限を、下級裁判所に委任することができる。


 76条に引き続き、「司法権の独立」に関する条文が続きます。
 76条3項は、一人一人の裁判官が独立してるんですよってことを書いて
いましたね。
 今日から説明する77条などの規定が、制度の面からも、裁判官の独立を
支えています。


 77条は、まず1項で、裁判の手続、弁護士・裁判所の内部のきまり、
裁判に関するアレコレについて、最高裁判所が規則を作りますよ、と書いて
います。
 「刑事訴訟規則」や「民事訴訟規則」といった規則がこれにあたります。
あまりなじみは…ありませんよね(^-^;?


 なぜ、最高裁判所が規則を作るということになったんでしょうか。
 裁判についてのアレコレに、内閣や国会に細かく口を出されたら、裁判所が
自分でいろいろ決めることができなくなっちゃいますよね。
 裁判所のなかでは、最高裁判所の監督がちゃんと行き届いていることも必要
だとされます。
 また、裁判所は実際に裁判をやっている現場なわけで、いちばん詳しい裁判所
の判断を尊重してもいい、というわけです。

 裁判というのは、実際のもめごとに際して人権を実現したり、ときには人権
を制約することを認めたりするものですから、
 個人の権利・自由の保障という「立憲主義」を支える極めて重要な役割を
担っています。
 もっとも、権利は時として多数者によって侵害されることがあるため、裁判所
は、政治権力から一定の距離を置くべき、ともいえます。

 昔は、裁判をする権利は権力者が持っていました。
 でもそれを切り離して、法と道理にかなった裁判を受けたいという人々の
「不断の努力」(12条)の積み重ねが、司法権の独立の考え方につながって
いるといえます。

 ところで、いくら「裁判官は独立だ!」と言ったところで、裁判制度自体が
政治権力に左右されるのであれば、裁判官も安心して仕事ができないし、
私たちも裁判所を信頼してもめごとの解決を任せることはできませんよね。

 そこで、憲法77条は、裁判制度についての細かいアレコレを、一番よく
分かっている裁判所に委ねることによって、司法権の独立を制度として支え
ているのです。

 最高裁判所が裁判部門の全てを取り仕切ることになって、国民のコントロ
ールが及ばないんじゃないか?という疑問も浮かんできます。
 裁判所が情勢の変化をふまえることも大事ですが、大衆に流されすぎる
裁判所というのもキケンな気がしませんか?
 政治権力だけでなく大衆からも独立した裁判所・裁判官のもとでこそ、
国民が正しく裁判を受ける権利(32条、82条)が保障される、という
考えがあらわれた規定だと思われます。

 ちなみに、77条2項では、「検察官」だけが規則に従わないといけない
ような書きぶりですが、私たち弁護士も、ちゃんと裁判所規則にのっとって
裁判活動をしていますよ^^念のため。

2017年7月7日金曜日

やや日めくり憲法 76条<司法権>


 日本国憲法 76条
1 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の
 定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2 特別裁判所は、これを設置することができない。
 行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその
 職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。


 「立法」「行政」と続いて、この条文から第6章「司法」という国家作用
が登場します。

 「立法」は法を創ること、「行政」は法に基づいて活動する働きのこと
でした。
 そして「司法」は、紛争解決のために法を適用して裁くという働きを指し
ます。
 犯罪行為をした人間に対して、逮捕したり訴追したりするのは警察や検察と
いった「行政」の働きによるものですが、有罪か無罪か、また、どれだけの
刑罰を与えるかを裁くのは「司法」の働きです。


 私たちの憲法は、「司法」の権限を、他の国家作用を担う「国会(立法機関)」
と「内閣(行政機関)」とは独立した存在である、最高裁判所を頂点とする裁判
所組織に委ねました(最高裁判所の下には、高等裁判所、地方裁判所、家庭
裁判所、簡易裁判所がといった下級裁判所があります)。
 いわゆる「三権分立」ですね。
 「権力をしばる」「権力が暴走するのを防ぐ」という立憲主義の思想にとって、
司法権が他の権限から独立していることは必須といってもよいでしょう。


 第2項で設置できないとされている「特別裁判所」とは、特別の人間または
事件について裁くために、通常の裁判所の系列に属していない機関のことです。
 戦前の「軍法会議」がその典型です。戦前の「軍法会議」は、軍隊内だけで
処理されてしまい、裁判所がクチを出すことはできませんでした。
 私たちの憲法下では、どんな紛争も、最終的には最高裁判所を頂点とする
裁判所組織での裁きを求めることができるようになっています。


 なお、「家庭裁判所」は家庭にまつわる事件を扱うために特に設けられた
裁判所ですが、ちゃんと最高裁判所を頂点とする系列に組み込まれている
「通常裁判所」の一つです(地方裁判所と同等の位置に立つ機関です)。


 ちなみに、先ほどは「どんな紛争も」と言いましたが、正確には「法律上の
争訟」であることというしばりがあります。
 これを語りだすとキリがないですが、例えば、アッラーとイエス・キリストの
教えはどちらが正しいか、なんていう宗教的論争について裁いてほしいと
言われても、法を適用して判断できることではないのでムリだせ、というような
話です。


 第3項は、「裁判所」だけでなく、一人ひとりの「裁判官」の独立も保障されて
いるということです。裁判官は、具体的事件を扱うにあたって、公平でなけれ
ばならないことは当然ですし、権力者の意向を「忖度」する必要もないし、
また、してはならぬのです。
 また、事件を担当していない他の裁判官の意向だって同じです。
 事件を担当している裁判官に対して上級の裁判官があれこれクチを出す
ことも「裁判官の独立」を侵害するものとしてNGなのです(しかし、過去にその
ようなことが行われたとされる事件がありました。
(詳しく知りたい方は「長沼ナイキ訴訟」「平賀書簡」という用語を検索してくだ
さい)。


 裁判所という組織が国会・内閣から独立していることと、個々の裁判官の
独立が保障されているということは、ともに「権力をしばる」「権力が暴走する
のを防ぐ」ために必要なことなのです。

2017年7月6日木曜日

1年前の高村副総裁(自民党)→「9条改正の可能性ゼロ」!



 あすわかtwitterより。



 
 引用したのは、この毎日新聞の記事です。

● 自民・高村氏 「憲法9条が改正される可能性はゼロだ」(毎日)
 http://mainichi.jp/senkyo/articles/20160706/k00/00m/010/133000c


 国会議員は「全国民の代表」として、何が全国民にとって利益なのか
常に考え続け、政策を提言したり公約を掲げたりして、支持を訴えて
います。
 その過程で、当然、考えが変わることもあるでしょう。時代状況の変化
もあるでしょうし、様々な識者の意見を聞いたり知識を増やしたり議論を
重ねていくうちに、従来とは考えが変わることは、大いにあり得る話です。

 しかし、その際には、今まで掲げていた公約や政策を支持して投票して
くれた人たち、ひいては全国民に対して、言葉を尽くして自分の「変化」
について説明する義務があります。なぜ今までの信念が誤っているとの
結論に至ったのか、どのような変化があったのか、説明してくれないと、
国民は当然、信頼できなくなります。誠実な説明があれば、納得して支持
し続ける人もいるでしょうし、やはり考えが異なるので支持をやめる人も
いるでしょう。
 でも少なくとも主権者に対して、自分の考えを知ってもらおうと努力の
限りを尽くす態度は、誠実と言えます。
 

 高村副総裁には、それがありません。
 「9条が改正される可能性はゼロだ」と言っておきながら、たった1年で
安倍首相の9条改正プランを推進するという、この心変わりについて、
私たち国民に「なぜ180度心変わりしたのか」必死に説明しようという
フリすらしない… あまりにも、あまりにも、ガッカリすぎます。


 というか…最初から「9条が改正される可能性はゼロ」なんて、口から
出まかせ、だったのかな? なーーーんて。

2017年7月5日水曜日

やや日めくり憲法 75条<国務大臣の訴追>

  日本国憲法 75条
  国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意が
 なければ、訴追されない。但し、これがため、訴追
 の権利は、害されない。


 国務大臣、つまり内閣のメンバーは、国務大臣の地位についている間は、
内閣総理大臣が「いいよ」と言わないと、訴追(犯罪の疑いがある人につい
て、刑事裁判を起こすこと。「起訴」といわれます)されない、
というルールを定めた条文です。

 なぜこんなルールが必要かというと、
 内閣は行政権(国会が作った法律を使って、国のいろいろな事務をやること)
を担っていて、そのメンバーの国務大臣は、その担当する行政の内容(防衛
大臣なら、国防のこと)についてトップとしての責任を負っています。

 他方、訴追(起訴)をするのは、検察官です。
 刑事裁判をやるのは裁判所、つまり、司法権ですね。
 万が一、司法権を担う検察官が暴走して、気に入らない大臣を起訴して刑事
裁判にかけてしまったら、行政に対する、重大な妨害になります。

 そういった事態を防いでいるのが、75条です。
 これも、三権分立を支える制度ですね。

 つまり、権力の一部が暴走して、憲法を守らない(ここでは、行政権を任さ
れた内閣を、権力を都合よく使って妨害すること)を防ぐ役割があります。

 じゃあ、総理大臣が「訴追していいよ」と言って守ってくれない限り、大臣は
悪いことをやり放題なのか!?というと、それは違います。
 大臣が務めている間は、公訴時効(刑事裁判についての時効。よく、指名手配
の話題で「あと○日で時効!」というアレです)が止まります。
 つまり、何年大臣をやったとしても、時効を気にせず、大臣ではなくなって
から訴追すればいいのです。

 これが、「訴追の権利は、害されない」ということの意味です。
 
 亡くなる瞬間まで大臣だったら、別ですが…。

7月20日(木) 楾弁護士の憲法カフェ「檻の中のライオン」@呉市



 都議会議員選挙では、自民党つまりは安倍政権に対する都民の
強い不信感が示されました。安倍首相はこれを「厳しい叱咤」と受け
止めるとのことですが、ほんとにそう受け止めたなら誠実に行動で
表してほしいですね。

 首相個人の執念だけが先走りしている感でいっぱいの「憲法改正」
議論は、とにかく「止める」のが一番でしょう。謙虚に立憲主義とはなにか、
日本国憲法はどのようなものかを基本から学び、憲法尊重擁護義務を
負う首相が歩むべき道を、知って頂きたいなと思います。
 
 政府が無視し続ける、そんな「憲法」、一体なにが書かれているのか、
私たち国民も知っておかなきゃ損なんです! 
 単なる「おっきな法律」みたいなものではなく、国民が政府を縛るもの、
なんです。
 え、初耳?今からでもまったく遅くありません。
 私たちのなにげない普段の生活の土台になっている憲法、基本のキ
だけでも、憲法カフェに来て、知ってみませんか♪

 楾大樹弁護士のベストセラー「檻の中のライオン」、来年度から正進社
の中学校の公民副教材「公民の資料」に10ページ掲載されることになり
ました!
 そんな楾弁護士の憲法カフェ、7月20日には呉市で開かれます(^^)/


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 憲法カフェ「檻の中のライオン」@呉市


 呉市安浦町の信楽寺本堂で、憲法のおはなし会を開催させていた
だきます!
 わかりやすい憲法のお話、「檻の中のライオン」の著者、楾大樹弁護士の、
パペットを使った、お話です。
 そもそも憲法ってなぁにというところから、みんなで学んでいきたいと思い
ます。
 どなたでも歓迎ですので、ぜひ。


日時: 7月20日(木) 19時~21時


会場: 信楽寺 本堂
   広島県呉市安浦町内海北1-5-5


講師: 楾 大樹 弁護士
  ひろしま市民法律事務所 所長
  『檻の中のライオン 憲法がわかる46のおはなし』著者
  明日の自由を守る若手弁護士の会 所属


参加費:500円(高校生以下無料)
  お菓子やお飲み物を用意しております。


申込み・お問い合わせ:信楽寺 広幡
    0823-84-2375 hirohata@i.email.ne.jp
  信楽寺HP https://shingyouzi.jimdo.com/

 

* 当日飛び込み参加も大歓迎ですが、準備の都合上、事前申込みに
  ご協力ください。
* 託児は特に設けていませんが、小さなお子様連れも大歓迎です。


<FBイベントページ>
https://www.facebook.com/events/227364324435813/?acontext=%7B%22action_history%22%3A%22null%22%7D


やや日めくり憲法 74条<法律への署名>



 日付変わって昨日になっちゃいましたが、7月4日、アメリカ独立記念日
として有名ですね~
 …という話しとは全く関係なく、憲法74条について解説します。



 日本国憲法 74条
 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が

署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。


 国民の権利・自由を保障することを目的とする立憲主義にとって、
権力が集中されることなくきちんと分立しておくことが不可欠であることは、
あすわかファンの皆さんにとってはもう当たり前のことですよね!?


 法律を制定する立法を担当するのが国会で、制定された法律を執行する
行政を担当するのが内閣と、権力が分けられています。
 そして、法律にはそれぞれ担当する省があるのですが(例えば、先日成立
した共謀罪(テロ等準備罪)であれば法務省)、その法律を直接執行する
省の大臣を「主任の国務大臣」と呼び、責任をもって執行することを明らか
にするためにその署名が求められます。


 また、72条のところで説明したように、内閣総理大臣は行政各部を指揮
監督する権限がありますから、担当省が法律を誠実に執行することについて
最終的な責任を持つことを明らかにするために、主任の国務大臣とともに
署名することが求められるのです。

 2017年7月11日、共謀罪(テロ等準備罪)が施行されました。

 自由と民主主義を著しく蹂躙する史上最悪の治安立法に対して、あすわか
は成立直後に廃止させる不断の努力を誓いましたが(「心も民主主義も手放
しません~共謀罪成立と民主主義への冒涜に激怒するあすわか声明~」を
ご覧下さい)、廃止されるまでは共謀罪が動くことになります。


 この法律に署名した金田法務大臣と連署した安倍首相には、誠実に執行
する責任があります。あいまいな運用は許されませんし(政府のおかしな
行動に対して声を挙げるという至極当然の表現の自由の行使を弾圧する
なんてもってのほか!)、「もの言う市民」を敵視してこっそり監視するなんて
こともあってはならないのです。


 結局、人権侵害をしないようにするためには、共謀罪を適用しないことこそ
「誠実に執行する」ことになるのではないでしょうか。


 だったら、廃止するしかありません!

2017年7月3日月曜日

やや日めくり憲法 73条<内閣の職務>



 内閣は,三権分立のもと,行政権を司る役割をもった機関です。

 立法権は国会,司法権は裁判所と,
 それぞれの役割はけっこう明確なのですが,
 行政権の仕事は膨大で不明確です!

 このへんのことは,65条(6月5日)でも触れましたね。

 本日7月3日の73条は,
 そんな膨大で不明確な行政権を司る内閣の具体的な仕事を,書いています。

 内閣総理大臣ではなく,多くの国務大臣も含めた組織としての「内閣」の
仕事です。

 柱書で,「一般行政事務の外」とした上で,
7つの項目を特に書き出しています。


日本国憲法 73条   

 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一   法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二   外交関係を処理すること。
三   条約を締結すること。但し、事前に、時宜に
 よっては事後に、国会の承認を経ることを必要と
 する。
四   法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を
 掌理すること。
五   予算を作成して国会に提出すること。
六   この憲法及び法律の規定を実施するために、
 政令を制定すること。但し、政令には、特にその
 法律の委任がある場合を除いては、罰則を設ける
 ことができない。
七   大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を
 決定すること。


ここで書き出された7つの項目も,
「一般行政事務」に含まれるって言えるのですが,
あえて明記するほどに重要な事務だということです。


さて,私は今,タイムリーにここに注目したい項目があります。

第4号の,
「法律の定める基準に従ひ,官吏に関する事務を掌理すること」
というところです。


官吏というのは公務員です。
公務員が「全体の奉仕者である」ことは,
憲法15条(1月5日)で確認済みですが,

その公務員の仕事が,
公平公正であることを,
内閣が掌握するつまり,
管理監督するというのです。
選挙で選ばれていない公務員に対し民主的コントロールを及ぼすのです

民主的に選ばれた国会議員の中から
さらに民主的に選ばれた内閣総理大臣が組織する内閣が管理監督するからこそ,
公平公正な公務員の仕事が遂行されると・・・


行政権を司る内閣が,
公務員の仕事を管理監督することなんて,
わざわざ「書くまでもなく言わずもがな」
なワケですが,

それでも敢えて憲法の条文に,
取り出して書いているところに,

公務員の公平公正を司ることが,
内閣の重要な仕事ですよという,
憲法が内閣に込めたメッセージがあるのです。


みなさん,もうここらあたりで,
このタイムリーに気付いていただけたはず。

加計学園(かけがくえん)ですよ。

公務員がいわずもがなの公平公正に
仕事をしようとしているのに,

当の内閣が,内閣総理大臣も,内閣の官房副長官も,

内閣のド真ん中から,
「むしろこっちにこうしてだな」
なんて指示が飛んだというのです。

そして,公平公正に仕事をしたいと言った公務員のことを・・・


憲法は,公務員の公平公正が
極めて重要だからこそ,
民主的に構成された内閣に,
その管理監督を委ねたはずです
(公務員の権力を制限するという立憲主義的な発想です)

ところがその内閣が,
管理監督する立場を逆手にとって,
公務員の公平公正を否定して,

内閣総理大臣の私的な気持ちに応えるように指示をする・・・。


今回の加計学園の問題が,
実は,憲法の根本を覆すような問題であることも,
憲法73条をひもとくとわかるのです。

この点だけをとってみても、
憲法の重要性
憲法を無視することの無茶苦茶さが分かるってもんです。

大日本帝国憲法の復活を夢見る方が、「都民ファースト」代表に就任



あすわかtwitter より。


 https://twitter.com/asuno_jiyuu/status/881735892473225216


 当選した都民ファーストの方々にアンケートを取ってみると
いいかもしれませんね。
 「そんな人だったとは知らなかった」…なんて回答がないことを
祈ります。
 新しい都議会第1党の性格が分かるでしょう。

2017年7月2日日曜日

やや日めくり憲法 72条<内閣総理大臣の権限>


 日本国憲法 72条  
  内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に
 提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告
 し、並びに行政各部を指揮監督する。


 というわけで、本日は「内閣総理大臣の権限」を定めた72条について
考えてみましょう。

 明治憲法においては、内閣総理大臣は「同輩中の主席」に過ぎませんでした。

 つまり、他の大臣と対等の地位で、単に大臣の中の学級委員のような存在
でしかありませんでした。
  そのため、大臣達の中で意見が一致しないような場合、内閣総理大臣は、
衆議院の解散や総辞職といった、 ガラガラポン!的な手段を取るしかありま
せんでした。

 でも、閣内不一致の場合にいちいち解散や総辞職をしていたら、政治が
不安定すぎて不安定すぎて震えてしまいますね。

 そこで、現行憲法においては、内閣総理大臣に、首長という他の大臣よりも
一段と高い地位を与えました。
  また、国務大臣の任免権を与え、(憲法68条)、閣内不一致のときは、
内閣総理大臣が他の大臣を辞めさせることで内閣を維持することができる
ようにしました。

 そして、72条で、
①内閣を代表して、議案を国会に提出する
②一般国務及び外交関係(つまり国の内と外のこと)について国会に報告する
③行政各部を指揮監督する 
という強い権限を与えました。

 ①、つまり「内閣を代表して議案を国会に提出」という文言に注目して
下さい。

 憲法は、立憲主義を維持するため、
権力を3つの機関に分散しようという、三権分立のシステムを採用しています。
 そして、内閣とは、三権のうちの「行政」を担う機関に当たります。
「行政」とは、「立法」によってできた法律を、実際に使って政治をすること
です。
(起こった出来事に、あとから法律をあてはめるのは「司法」です。)
  この「行政」を行う内閣を代表するのが、内角総理大臣だということになり
ます。
 
 ですから、もしも総理大臣が「私は立法府の長」などといったら、
 それは三権分立をないがしろにするような酷い間違いだということになります。
 総理大臣は「立法府」でなく「行政府」の代表者なのですから。
 
 でも、わが国の賢明なる総理大臣に、そんなやばい間違いをする人がいるわけ
ありませんよねッ☆
 そんなアホな発言したら議事録から削……、
 おや、玄関に誰か来たようだ。。。
 こんな時間に誰だろ、ちょっと見てきますね。。。。。。。

やや日めくり憲法 71条(総辞職後の職務続行)



 おはようございます。都民の方にとっては、今日は東京都議会議員選挙
ですね。
 大切な一票です。まぎれもなく、一番「主権」行使してるなぁと実感できる
機会ですし、必ず投票に行って下さいね。
 もちろん、あすわか的には、都民が納めた貴重な税金を、都民の命・健康
・平穏な生活を最優先させる政策に使おうと考える議員さんが、東京をより
豊かで住みよいクールな都市にしてくれると期待しています。


 さて、やや日めくり憲法、遅れ気味ですみません(^^;)。
前回70条では、内閣総辞職について(タイミングよくなんだか願望かのような、
なんつって)お話していましたね。
 内閣は、基本的にはいつでも自分たちの意思で総辞職できますが、「必ず
総辞職しなければならない」パターンもあるぞ、ということで69条と70条で、
そのケースを挙げてきました。

 そこに続く71条には、こう書かれています。


 日本国憲法 71条
 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理

大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。


 ふむふむ…

 もしかしたら…

 ちょっと面白みのない規定かもしれない♪

 内閣が総辞職すると、その瞬間、「この国には首相と大臣がいません」と
いう空白ができてしまうことになりかねません。行政も、社会も、国際情勢も、
絶えず動いているので、空白があるのは、ちょっと危険です。
 そこで、内閣は総辞職したとはいっても、次の内閣総理大臣が任命される
までは、とりあえずそのまま仕事しててね、というルールにしてあるわけです。


 新しい内閣総理大臣が指名されると(67条)、その内閣総理大臣は内閣の
メンバー(閣僚)を選んで組閣します。
   ↓
 それを受けて、旧内閣は最後の閣議を開いて、新しい内閣総理大臣の任命
について、「天皇への助言と承認」を決めます。
   ↓
 その上で、天皇が新しい内閣総理大臣の任命や、新しい大臣の認証をします。
   ↓
 この瞬間に、旧内閣総理大臣と旧大臣たちは、資格を失います。


 こういう技術で、責任の所在に穴が空くことを防いでいるわけですが、
総辞職した内閣というのはつまり国民からの信頼を失っている民主的正当性
のない内閣です。

 71条が「総辞職しても新しい首相が決まるまではとりあえず仕事続けててね」
と規定しているとはいっても、この期間内に新しい「4~5本目の矢」とかいって
新しい経済政策を発表したり、新しい(例えば、どんどん獣医学部作りましょう
という)法案を作ったりなどは、できません。当たり前のことですが、必要な範囲
の事務手続きに限ると考えられています。

やや日めくり憲法 70条(内閣総理大臣の欠缺又は総選挙施行による総辞職)



 あっという間に今年も上半期が終わり、7月に突入してしまいましたね~~。
梅雨空の下、今日は東京都議会議員選挙。
 投票権をお持ちの方は、必ず投票に行って下さいね。
 なになに、「自分の考えとぴったりの候補者がいなくて投票できなーい」?
 いえいえ、選挙というのは、自分の考えと完全に一致する候補者を選ぶ
ものではなく、言ってみれば「数ある不完全な候補者」の中から「一番マシと
思える候補者」を選ぶ作業です。
 住民が必死に働いて納めた税金を、どんなものに使うつもりなのか。
 住民の命や健康を最優先に考えているか。
 その地で紛れもなく「住民」として人生を歩んでいる在日外国人の人権を
どう捉えているのか。
 女性、LGBT、在日米軍基地、憲法改正…民主主義や自由といった視点
から、候補者を見て、比較してみませんか。

 さて、やや日めくり憲法、もう7月に入ってしまいましたが、70条を見て
みましょう。


 
日本国憲法 70条

 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員
総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、
内閣は、総辞職をしなければならない。


 内閣は、基本的にはいつでも自分たちの意思で総辞職できます。
 例えば閣僚が不祥事ばっかり起こし、とてもじゃないけれど自分たちは
これ以上国の舵取りを続けることは出来ない、と良識で判断して、総辞職、
とか。(フィクションです。)

 あるいは、首相による権力の私物化が止まらず、国民から激しい批判を
浴び、信頼を失った首相が、やはり自分たちは一国の内閣としてふさわしく
ないと常識的に考えて、総辞職、とか。(フィクションです。)

 ただし、「必ず総辞職しなければならない」ケースというのもあります。
前回、紹介した「内閣不信任案(69条)」が可決されたときなどのほか、
「内閣総理大臣が欠けたとき」と「衆議院議員総選挙の後に初めて国会の
召集があった場合」です。この2つのケースを定めたのが、70条なわけ
です。
 「内閣総理大臣が欠けたとき」というのは、死亡した場合や、総理大臣と
なる資格を失ってその地位を離れた場合や、辞職した場合です。
リーダー不在なのだから、総辞職するのは当たり前ですよね。


 「衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったとき」というのは、
新しい内閣総理大臣を指名することになるため、総辞職するわけです。
 内閣が総辞職した時に、新しい内閣が生まれるまで、行政の責任の所在
に穴が空いたりするのかな?と思いますよね。そこはどういう手続きになって
いるのか…それは71条で!チャンネルはそのままっ☆