2017年5月10日水曜日

やや日めくり憲法59条(法律案の議決、衆議院の優越)


日本国憲法 59条〔法律の成立〕

①法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

②衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした
 法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で
 再び可決したときは、法律となる。

③前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、
 両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

④参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、
 国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しない
 ときは、衆議院は、参議院がその法律案を可決した
 ものとみなすことができる。



 憲法59条1項は、原則として、国会(両議院)の議決だけで法律が成立する
ことを定めています。
 国会は唯一の立法機関(41条)ですから、内閣や裁判所などの国会以外の
機関が関与することなく、法律が成立するわけです。
 当たり前のじゃん、と思われるかもしれませんが、明治憲法の時代には、
法律として成立するには、国会(帝国議会)の議決以外に、天皇の「裁可」が
必要でした(明治憲法6条)…💦

 これに対して、日本国憲法59条1項は、国民の代表である両議院の議決だけ
で法律が成立することを定めて、国民主権であることを明らかにしているのです。


 また、衆議院議員も参議院議員も「全国民の代表」ですから、両議院の賛成が
あって初めて、国民の意思が表明されたとして法律が成立します。


 しかし、衆議院と参議院とで与党と野党が逆転している場合(いわゆる「ねじれ
国会」)、衆議院では賛成なのに、参議院では反対となって、法律が成立しない
こともありますよね。
 二院制を採っている以上、そんなケースは容易に想定できますが、両議院の意思が
一致しない限り、法律が成立しないとなると、重要な法律が成立せず、国政が滞って
しまうのも、たしかです。

 そこで、参議院が反対しても、衆議院で3分の2以上の賛成で再可決すること
で法律が成立するとして、国政が滞ることを防いでいるのが、この規定なわけです
(2項)。

 ですから、実は、衆議院で3分の2以上の議席を占めれば、参議院の意思に関係
なく、法律を作ることも可能です。


しかし、「数の力」に任せて、どんなに参議院が反対していても無視して
法律を作ってもいいというわけではありません。二院制にした意味は、衆議院の
暴走を止めて冷静な議論を促すところにあります。

 衆議院と参議院が異なる議決をしたときには、衆議院で再議決をする前に
両院協議会を開くことができます(3項)。
 多数決で決める前に、話し合いでできるだけ国民の意思を反映させる努力を
してください、ということを国会議員に求めているわけです。

つまり、国会議員にも「不断の努力」が求められているのです。