自民党総裁選の候補者4名が、ネット討論会で憲法改正などを議論
した、という記事。
4名とも、2018年に自民党がまとめた「改憲4項目」を踏まえた
改憲を進める気のようです。
● 高市氏「公共の福祉、わからん」 自民総裁選の改憲論議 (朝日)
https://www.asahi.com/articles/ASP9W6KD2P9WUTFK00H.html
とりわけ注意したいのが、高市氏が「公共の福祉」に基づく人権の
制約・調整について、これを「公益及び公共の秩序に基づく」制約、
と改憲したいと言及した点です。
<一部抜粋>
高市氏は討論会で「大変興味があるのは12条の解釈です」と強調。
憲法12条は国民が自由や権利を公共の福祉のために用いる責任に
ついて記すが、高市氏は「公共の福祉という言葉が中途半端でわか
らん。『公益および公共の秩序』として、国民の命や国家の主権に
関わるような事態に一定の制限ができる形をはっきりさせたい」と
述べた。
憲法が保障する人権の制約理由となる「公共の福祉」については、
自民党があいまいだとして12年の改憲草案で「公益及び公の秩序」
に置き換えるよう提起。これに対し、政府が人権を過度に制約する
根拠になりえるとの批判が出ている中で、高市氏は改憲案4項目に
ある緊急事態対応にからめて訴えた形だ。
<抜粋終わり>
「公共の福祉」という言葉が中途半端でよく分からない、という
のは、2012年に自民党が改憲草案を出した際にも解説で書かれて
いたことです。ならば基本書を読んで学んでみては、と進言したい
ところです。
公共の福祉=公益・秩序、ではありません。まったくの間違いです
ので、初めて見る方は憲法のキホンとしてぜひ覚えていて下さい。
日本国憲法は、この世で最も大事なのは人権だと考えます。
だから「秩序」や「公益」なんてものを優先して制約するなんて
許されません。
その人権を制約していい時があるとすれば、それは「誰かの人権と
誰かの人権がぶつかったときだ」というのです。
例1:好き勝手に「自分には職業選択の自由があるから今日から
医者になる!」と開業したらどうなるか
→ きっと誰か死ぬし、病む。
→誰かの職業選択の自由と誰かの命が衝突。
→ 命を優先すべきだから、医師は許可制(免許制度)にする。
こういう調整システムのことを「公共の福祉に基づく制約」といい
ます。確かに聞きなれない言葉ですが、憲法の教科書を開けば必ず
最初の方に書かれていることです(改憲だ改憲だ!と叫ぶ人にかぎって
憲法の教科書を読んだ形跡が見られないのは何故だろう、と不思議で
たまりません)。
公益に基づく人権制約、
公の秩序に基づく人権制約、
これを許せば、立憲主義は終わります。
公益とか秩序ってなんでしょう?正直、よく分かりませんよね。
分からないから、決めるのは(警察)権力になるのです。
「その表現は秩序を乱す」「その活動は公益に反する」と警察に言わ
れてしまえば、もう終わり。あえて、モヤモヤとした曖昧な言葉を憲法
に書き込んで人権制約の根拠にすることで、権力は万能の力を手に入れ
ることができるわけです。
権力が許す範囲でなら人権を行使してもよい。
(法律の範囲内でなら人権を行使してもよい。)
つまり高市氏(2012年の自民党改憲草案)は、大日本帝国憲法と
同じ政治体制を目指しているといえましょう。
書いていて怖いです。
こういう、「権力を憲法でしばる」という発想とは真逆の、「国民より
国家」「人権などジャマ」という世界観の人が、与党トップの候補にまで
なってしまうという現実は、恐怖そのものです。