2013年11月12日火曜日

特定秘密保護法案 ジャーナリストの反対声明・記者会見


 日々、国内外からの批判が高まっているにもかかわらず、
強行採決のおそれさえ強まる特定秘密保護法案。
 国の行く末を決めるのは一部の権力者ではなく私達国民
自身のはずです。いつ何をしたら罰せられるか分からずに
怯える生活などイヤです。国の行く末を決めるのは私達な
のに、重要な情報は何も見られない、見てはならない、見
たら処罰されるなどという社会はイヤです。


 昨日(11日)、この特定秘密保護法案に反対するジャーナ
リスト有志8人が、東京都内で記者会見し、法案が成立すれ
ば国民の「知る権利」や報道・取材の自由が大きく侵害され
ると訴えました。(順不同:田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏、
金平茂紀氏、岸井成格氏、青木理氏、川村晃司氏、大谷
昭宏氏、田勢康弘氏)


 8人は会見の冒頭「私たちは『特定秘密保護法案』に反対
します!」と記した横断幕を掲げ、声明文が読み上げられま
した。(個人としての賛同にもかかわらず)賛同者に名を連ね
たくても権力と組織上層部からの目に怯えてそれができない
という人達が相当数いたことを、賛同者欄を黒塗りにすること
で表現していました。
 以下に、出席した8名の方々の発言の要約を載せます。


◆ 青木理氏
 強い懸念を抱いている。警察情報もテロ対策目的であれば
「特定秘密」にできる。ということは、警察情報のほとんどが
特定秘密になる、ということ。自分は長らく警察を取材してきて、
公安警察についての本を書いたが、この法案が通れば、以後、
あの本は書けないことになる。


◆ 大谷昭宏
 特に訴えたいのは、21条(共謀・教唆・扇動の処罰規定)。
情報公開で出てきた黒塗りの部分に何が書いてあるのかを
教えて欲しいと言えば教唆罪になる。真実が知りたいから是非
教えてくれと言えば扇動罪になる。そしていつの間にか(あれ
ほど反対に遭って実現されなかった)共謀罪の復活が狙われて
いる。こういう狡猾な手口でやられている、とてもじゃないがこの
法律は通せない。
 国権の最高機関であり国民全体の代表者である国会議員が、
官僚の作った秘密を国民に発信することで処罰されるなど、論外。
自分で自分の不当な処罰規定を通そうとする議員達はどういう
つもりなのか、本当に疑問でならない。


◆ 川村晃司
 前文を読むと、基本的な構造が「知らしむべからず」。とりわけ
メディアにおける萎縮が懸念される。取材方法が「正当」かどうか
を、誰が判断するのか?取材の内容ではなく不当・不正。
 日常的な夜討ち朝駆けの取材、これが安眠妨害だと言われた
瞬間に正当な取材方法ではないと解釈されかねない。メディアが
書いた時点で秘密が「漏れる」のだから、メディア規制法に他な
らない。田原さんが公開の番組で「きちんと真実を述べて下さい」
と閣僚に迫った時点で、それが教唆罪・扇動罪にあたることになる。


◆ 岸井成格
 大きな危惧を抱き、のちのち後悔をしたくないという思いで
ここに集まった。この法案は、おそらく集団的自衛権の行使
容認へ向けた策動である。アメリカと軍事行動を共にする
ために、ここまで悪のりしている。「特定秘密」の定義が無く、
なんでも秘密にできる構造になっている。そして秘密と「その
他の情報」という文言までくっついている。収集することも整理
することも能力(?)もNG、これは何なのか。そして21条の
処罰規定である。「配慮」。正当な取材かどうか誰が判断する
のか?メディアの考える公益と権力の考える公益は時として
違う。検証する機関が無いことも問題。国会議員達の危機感も
足りない。国家安全保障に支障のある情報は秘密会にも出せ
なくなるのだから、国政調査権も著しく制限される。
 西山事件は、裁判所が「あの密約は秘密にすべきではなか
った」と認定しているにもかかわらず未だに外務省が密約の
存在を認めていない。その西山事件もこの法では処罰対象と
なるという。
 これだけずさんな法案にもかかわらず、修正の上で通って
しまうかもしれないなどという情報を聞いた。


◆ 田原総一朗
 我々は、議員や閣僚を取材する際にいろいろ事前に調べて
発言の矛盾を突く。弁解など聞きたくない、本当はどうなんだ、
と聞くことで何人も大臣を辞任に追いやってが、これはたぶん
このままでは教唆罪・扇動罪になる。あるいはオフレコで自民
党幹部に会い、いろんな話を聞いて、後日名前は出さずに
「財務省はこういうことを言っていた」と言うことも共謀罪になる。
自民党議員自身が秘密保護法のことを分かっていない。どこ
にもチェックする機関が無く、国会ですら検証できないことを
自民党議員自身が知らないのだ。どこの国でも20年か30年
で国家機密は公開されるのに、この法案では権力の判断で
永遠に秘密にできてしまう。
 (西山事件について)記者が秘書と仲良くするのは取材と
して常識。この法案で西山さんが有罪になるということは、
記者全員が有罪になる。「情を通じて」などというのは当たり
前で、記者は幹部と仲良くなることで情報をもらう。


◆ 田勢康弘
 どの国でもどの時代でも権力は拡大解釈して隠し、最後に
は必ず嘘をつく。権力とはそういうもの。これほどの法案が
出されていても騒然となっていないのは、国民のメディア
不信からだろうか。安倍政権の性質からして間違いなく拡大
解釈をしてくる。なんとしてでも潰さなければならない。


◆ 金平茂紀
 権力はこれまで嘘をついてきたし、これからも嘘をついて
くる。この法案の論議において、「西山事件は同法案の下
では処罰の対象となる」と担当者が発言した。西山事件の
本質は、政府がアメリカと密約を結んでいたにもかかわらず
「密約など無い」と嘘をつき続けていたこと。なのに、「西山
事件は処罰対象です」などと軽々しく言う人たちがこの法案
を作っているということへの激しい憤りを感じる。2002年
4月に、鳥越さん田原さんとともにメディア規制3法への反対
の声を上げた。その当時と比べて、今はもっともっと息苦しく、
声をあげづらい世の中になってきている。筑紫さんも生きて
いたら、必ずこの場にいただろう。メディア規制3法の時、
多事争論をもじって多事封論と言っていた。同法案は修正
などではなく、廃案にすべき。


◆鳥越俊太郎
 安倍政権は、政権発足時以来「レジームチェンジ」と言って
いる。積極的平和主義とも言っている。安倍政権が今、求め
ているのは単に特定秘密保護法案の制定だけではない。
日本版NSCを司令塔に特定秘密保護法を手に持ち、集団的
自衛権の行使に踏み切りたい。積極的平和主義と言えば
耳障りがいいが、要は「戦争する」ということ。この3点セットで、
戦争できる国に体制を変えたい、という意思が背景に横たわ
っている。このことを発信して反対しなければならない。にも
かかわらず、世論調査では反対の方が多いとはいえ、世論は
高まっていない、そのことに不安を感じて、ここに集まった。
「特定秘密」とは何が秘密なのか分からない、取材は「正当な」
「不当でなければ」よいという。
 同法案は必ずや萎縮効果を生む。廃案を要求する。
 首相動静を小池百合子議員が「知る権利を超えている」
「これも秘密に当たる」と発言。バカなんじゃないかと思う。
テロリストのターゲットになりうる、という理屈。過去のこと(首相
の前日の日程)を書くことがなぜ秘密に当たるのか。笑止千万
としか言いようがないが、議員達はそういう意識で法案を取り
扱っている。どうしようもないな、という思い。これについて野党
からも異論が出ないことが衝撃。


(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013111101002079.html


(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/1111/TKY201311110316.html


(IWJ ネット中継)
http://www.ustream.tv/recorded/40675015