2017年10月8日日曜日

やや日めくり憲法 7条(天皇の国事行為2)

第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

ここに並べられているのは、天皇が行うこととされている「国事行為」です。
明治憲法の頃と違い、天皇は主権者ではなく、政治に口出しする存在ではないので、
国事行為はいずれも形式的な行為ばかりです。

天皇が交付する「憲法改正、法律、政令」の決定をするのはいずれも天皇ではありません
(憲法改正なら国会の発議と国民投票、法律なら国会、政令なら内閣が内容を決定します)。
国会の召集、衆議院の解散も、天皇が「やる」と決めて行うものではありません。
すべて、「内閣の助言と承認」が前提です。

ところで、
「内閣は、内閣不信任決議案が可決されなくても、衆議院を解散できるのか」という問題があります。
憲法の中で、衆議院の解散について触れているのは、この7条のほか、69条があります。
「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」

それ以外にどういう場合に衆議院を解散することができるのか、特に書かれていないのです。
そのため、現在の政府の解釈は、この7条を根拠に、
内閣の判断で、不信任決議がなくても解散をすることができる、という見解に立っています。
今回の衆議院解散も、内閣不信任決議を前提としない解散です。

他方で、衆議院を解散して選挙をすることで何ができるかというと、
国民の信を問う、つまり改めて「誰に立法を任せますか」と意見を聞くことです。
選挙を1回やれば、莫大なお金がかかりますし、
その間、解散してしまった衆議院は開催できないことになります。
つまり、必要ないときに解散をすることは、不利益が大きいということです。

そういう衆議院解散を、何の制限もなく、内閣の判断で好きなようにできる…のでしょうか?
内閣が、「今なら自分のお友達に有利だ!」と思ったときに衆議院を解散して、
自分とそのお友達の地位を盤石に…ということもできるのでしょうか?

憲法に答えがない以上、解釈するしかないところなのですが、

もう少しきちんと決めておいてもよかったのかもしれません。