2017年10月2日月曜日

やや日めくり憲法1条(天皇の地位と主権在民)


 

 やや日めくり憲法シリーズ、最終盤にかかってきました!
 今回は1条を見てみましょうっ。


<日本国憲法 1条>

「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合
の象徴であつて、この地位は、主権の存する
日本国民の総意に基く。」




 この1条はじめ、天皇に関する日本国憲法の条文の意味は、戦争に
負けるまでの天皇の位置付けと比べるとよく分かります。

敗戦まで…つまり、大日本帝国憲法によると、天皇は、

国の統治主体(1条)であり、

「神聖にして侵す」ことができず(3条)、

「国の元首にして統治権を総攬」(4条)する存在でした。




 これに対して、日本国憲法は、まず前文で「日本国民は、・・・ここに
主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とし、
さらに1条で「主権の存する日本国民」として、国民主権を基本原理と
することを明らかにしています。


 ここで言う「主権」とは、国の政治のあり方を最終的に決める権力・権威
のことを意味し、
 つまり国民主権というのは、その権力・権威が、国民の側にあるという
ことを意味します。



 そして、この国民主権を前提として、1条は、天皇を、大日本帝国憲法
時代の「神聖不可侵な国家元首として国の統治権を全て掌握する存在」など
ではなく、あくまで国及び国民統合の「象徴」と位置付けています。


 この点、2条に「皇位は、世襲のもの」とあるように、天皇制というシス
テムは、公権力が、あの「ご一家」…特定の血筋・家柄にある人たちを
「特別の存在」として扱うことを内容とするものです
 なので、これって、本質的には14条1項2項が禁止する「門地による
差別」、「華族その他貴族の制度」に該当し、14条1項の「法の下の平等」
に反しちゃってますよね。


 連合国が、アジアを侵略した日本の戦争責任を裁いたり、占領して民主主義
国家として再生させようとしていた当時、「天皇の戦争責任も追及して、天皇
制を廃止すべきなのでは」という議論がありました。
 ただ、さまざまな事情を考慮して、最終的には連合国軍総司令部(GHQ)は、
天皇制を存続させつつ民主主義国家として立て直す道を選びました。



 こうして、日本国憲法では、自由・平等といった大原則の「例外」的な存在
として天皇制を存続させています。



 重要なのは、天皇は、神や絶対君主ではなく、あくまでも国民主権の下
「国政に関する権能」を有さず(4条1項)、国事行為(7条など)など
形式的・儀礼的な役割のみを担う「象徴」である点です。象徴という役割を、
国民の総意で、天皇にお願いした、という理屈です。