<日本国憲法 3条>
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
なんどもお話していますが、
日本国憲法では、天皇は、あくまでも「象徴」とされて、
政治的な権能を一切もたなくなりました(第1条)。
そんな「象徴」である天皇の仕事は何かといえば
第3条~第7条に規定される国事行為(「国事に関する行為」)です。
第3条には、国事行為をどのように行うか、その責任の所在が書かれています。
さて、「国事に関する行為」という表現だけ聞くと、
なんだか政治に関することも含まれそうですよね。
そして、それを内閣の「助言と承認」に基づいて行う、と規定されている。
そうすると、あたかも天皇が主体的に何か政治的なことを決定できてしまいそうです。
でも
第4条は天皇の「国政に関する権能」を明確に否定しています。
「象徴」という位置づけからも、それは明らかですよね。
そのため、言葉そのものの解釈としてはやや苦しいけれど、
内閣の「助言と承認」には、
行為の内容を実質的に決定する権能も含まれる結果、
天皇の行為は、あくまでも形式的、儀礼的、名目的なものに過ぎなくなる
と解釈されています。
例えば、
第69条に規定する場合を除く衆議院の解散(第7条第3号)について
内閣が決定していますがその根拠は、
内閣が「助言と承認」するという
第3条及び第7条柱書
とされています。
つまり、
天皇は、内閣の決めたことを、
その助言と承認のとおりに形式的、儀礼的、名目的に行為を行うだけ、
ということにして、政治的なちからは一切もっていないですよ、ということにしたのです。
そして、天皇は決められたことに従って形式的に国事行為を行うだけだから
その結果に関する政治的責任は、内閣にある、ということで、第3条に規定されています
ちなみに、
「助言と承認」は、英語(公定訳)に訳しても“advice and approval”であり、
2つの行為が必要そうですが、
2つは一体として1つの行為と捉えられています。
このように、旧憲法が、
天皇は統治権を「総攬」するとし政治的権力の中心に天皇を据えていたのとは異なり、
日本国憲法は、天皇の有していた政治的権能を一切否定し、
その行為を極めて限定的なものにしました。
天皇も国家機関の一つであって
その権能は、憲法の厳格な制約に服しているのです(立憲主義)
だから、99条は天皇にも義務を課したのです!