2021年5月11日火曜日

自民党「LGBT理解増進法案」の危うさ。多数派の理解ってなんでしょう。


 札幌地裁では同性カップルが婚姻によって得られる利益を何一つ

享受できないことは憲法14条1項違反であるという画期的な判決

が出て、同性婚の実現の含め性的少数者の人権保障あるいは差別

解消に向けて大きく前進ができそうな予感、ですが、

自民党が提案している「LGBT理解増進法案」には、問題があります…。


● 「自民のLGBT理解増進法案は差別放置」 当事者ら反対表明 (毎日)https://news.yahoo.co.jp/articles/e09ad6d1b1c60233ea1cd0cbba910ed0fc4225d5


● LGBT新法、差別禁止を盛り込まず。

                     自民修正案に野党が「ちょっと待った」 (ハフポスト)

https://www.huffingtonpost.jp/entry/lgbtq-law_jp_6098ce32e4b0b37f894aee30


 立憲民主党など野党がすでに国会に提出しているLGBT差別解消

法案が、きっぱりと性的指向・性自認を理由とした差別の解消を

目的としているのに対し、自民党の法案は「知識の着実な普及・

相談体制の整備」などによって「多様性に寛容な社会の実現」を

目的に掲げるだけ…。


 これは単に「物足りない」では済まない問題です。

 「国民の理解の増進」は確かに大事ですが、それだけ強調すると

「少数者の人権保障はマジョリティが理解してからでいい」ことに

なりかねません。

 つまり少数者の人権保障をするかどうかは、多数決で決めましょう、

といっているのと同じです。自分たちが理解したら人権保障を施して

あげるよ、という傲慢な発想は恥じるべきもので、そこに人権を踏み

にじられている人がいる以上、「それは差別だ」「それは許されない

んだ」と行政がリーダーシップをとって率先して指摘し、社会のアップ

グレードを促すことこそが必要です。「多数派の理解」を待つのは

おかしな話なのです。


 深刻な差別を前に、「国民の理解の増進」とか「多様性に寛容な社会」

という人当たり良い言葉しか使わない法案を出す姿勢自体からも伝わる

ものがあります。そこに差別が存在していることを正面から認めず、

「差別のつもりじゃなくて、まだ理解が進まないだけです」、と言い訳

し、差別を「仕方ない」ものとしてダラダラと容認し続けかねない

危うさを感じます。

 

 多くの自治体で広がりつつある同性パートナーシップ制度について、

自民党がいまだに「慎重な検討が必要」と主張し続けているさなかに、

この法案が出てくることの危うさも、上記ハフポストの記事の中で

解説されています。

 せっかく広がりつつある動きが、「差別的な仕組みの是正より、

まずは多数派が理解することが大事」といわんばかりのする自民党の

法案によって、ペースダウンする危険があります。稲田朋美氏は

「自治体のパートナーシップの取り組みについては、全く阻害する

つもりはない」といいながら、法案への「パートナーシップ制度を

阻害しない」の明記は拒否。この矛盾からも、危うさは伝わって

きます。


 差別は許されないんだ、と本当に憤っているのかどうか、が明瞭です。