2020年11月24日火曜日

軍事研究と「学問の自由」の緊張関係


 前回の記事でご紹介した信濃毎日新聞の社説、

 軍事研究へ研究者を取り込む動きについても大切なことが書かれ

ています。


● 学術会議への介入 自由の圧迫に抗さねば (信濃毎日)

https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2020112300065


<一部抜粋>

 運営費交付金は総額の削減が続き、法人化後の10年でおよそ1割

減額された。研究者は資金不足にあえいでいる。軍事応用できる基礎

研究に助成する公募制度を防衛省が始めた15年度には、大学からの

応募が相次いだ。軍事研究に科学者を取り込む動きは安倍政権下で

目に見えて強まった。

 歯止めをかけたのが学術会議の17年の声明だ。学問の自由、大学

の自治の観点から、防衛省の制度は「政府による介入が著しく、問題が

多い」として大学や研究機関に慎重な対応を求めた。同時に、戦争を

目的とする研究を絶対に行わない決意を掲げた50年と67年の声明を

継承すると明記した。

 学術会議は、戦争に科学者が動員され、また自らすすんで協力した

ことへの深い反省に立って創設された。軍事と一線を画す決意は、ゆる

がせにできない戦後日本の科学界の出発点である。

<抜粋終わり>


 つまり、予算を削って事実上「研究者が自由に研究できる」環境を

奪い、防衛省が札束で引っぱたくように軍事研究に誘い、科学者コミュ

ニティを切り崩しているわけです。

 

 日本学術会議の「軍事的安全保障研究に関する声明(2017年)」

は、札束(予算)に誘われるがままに軍事研究を始めれば、防衛省(国

家権力)の大学・研究への介入(コントロール)は不可避で、研究の自主

・自立も、学術の健全な発展も、消えてなくなることを懸念したものです。

短いので、ぜひ全文お読みください。


<日本学術会議>

軍事的安全保障研究に関する声明(2017年3月24日)

 http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/gunjianzen/index.html


 少なからぬ方々が、軍事研究を禁じる日本学術会議こそ、「学問の

自由」を侵害している!と怒っておられますが、

 声明をお読み頂ければ分かるように、そもそも日本学術会議は軍事

研究を「禁じ」てはいませんし、

 予算を枯渇させて研究者が自由に研究できない環境にした上で、

「防衛省の予算で研究いかがですか♪」とばかりに甘く厚い札束で

軍事研究へと誘う。その誘いの先には研究の自律性も、成果の公開も、

科学者の倫理もない。

 この状況を前に、一体、「学問の自由」を侵害しているのは誰かと、

問いたいところです。