2021年3月19日金曜日

同性婚札幌判決 産経のおかしな社説


 ご存知のとおり、同性カップルたちが起こした訴訟で、札幌地裁が違憲

判決を出しました。各紙が報じている中、おかしな社説があったので、

ご紹介します。


● 【主張】同性婚否定「違憲」 婚姻制度理解せず不当だ (産経)

https://www.sankei.com/smp/column/news/210318/clm2103180003-s1.html?fbclid=IwAR19KMlW2bZIk96oX280wtkGa1bfablOyWkZ8t0nxfn5hqlkQWkMYxOnrkY


<一部抜粋>

 札幌地裁は、憲法24条の「婚姻は両性の合意のみに基づく」との

条文について、「異性婚について定めたものであり、同性婚について

定めるものではないと解するのが相当である」として、原告側の主張

を退けた。

 それでは憲法24条は、14条違反ということになる。24条に

ついて判決は「同性愛者が営む共同生活に対する一切の法的保護を

否定する趣旨まで有するとは解されない」と述べたが、「両性の合意

のみ」の両性を異性間と規定する以上、この解釈には無理がある。

 この矛盾を解消するためには、憲法改正を議論しなければならない

はずだ。

<抜粋終わり>


 判決は、憲法24条について、こう述べています。

「同条は,異性婚について定めたものであり,同性婚について定める

ものではないと解するのが相当である。」(18頁)

「そもそも同条は,異性婚について定めるものであり,同性婚について

触れるものではない」(26頁)


 これを読んで、「24条は同性婚について定めていない=24条は

同性婚を禁止している」と考えるのは間違いです。

 判決は、24条を「同性婚についてはなんら定めるものではない」

ので、同性婚についてはノーコメントな条文だと解しました。

 そう考えると、24条が同性愛者を差別しているわけではないことは

当然で、「それでは憲法24条は、14条違反ということになる。」

という上記社説の理屈は、大変おかしなもの、というか間違っています。


 なんでこんなおかしなことを言っているのだろう、と不思議ですが、

結局「矛盾を解消するためには、憲法改正を議論しなければならない

はずだ。」という一文に導くためなのかな~、と思ってしまうのは

too much邪推でしょうか…。


 24条が同性婚を否定している規定ではない、というのは憲法学では

通説です。さらに先日、衆議院法制局は同性婚について「憲法13条、

14条等、他の憲法条項を根拠として同性婚の法制度化は憲法上の要請

であるとする考え方はいずれも十分に成り立ちうる」と答弁しました。

憲法改正は必要なく、政権が判決や当事者の方々の声を真摯に受け止め、

今すぐ法制度化に着手すればいい、という段階です。


 もう一点、看過できない箇所があります。

<一部抜粋>

 国側が主張してきたように、婚姻制度は、男女の夫婦が子供を産み

育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。社会の

自然な考え方だ。

<抜粋終わり>


 今どき、こんな婚姻のとらえ方はあり得ません。

 子どものいないカップルや高齢カップルの婚姻は、婚姻制度の目的外

利用だとでもいうのでしょうか。「結婚すれば当然子どもを産み育てる

だろう」という家族観の押しつけは容認できません。 


* 判決文のPDF

https://www.call4.jp/file/pdf/202103/533e3260db61a96e84711d1f0c02d5d6.pdf?fbclid=IwAR27-QHfgMQZ2dzYu9H24ctcY9oz0CBP7j1fTYL7INqlFHwxcFW1fSyqc4s