2017年2月9日木曜日

やや日めくり憲法 29条(財産権・損失補償)


日本国憲法 29条(財産権)

  財産権は、これを侵してはならない。

2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、
 法律でこれを定める。



 「公共の福祉」という言葉、12条で登場したのを覚えてますか?
誰かと誰かの人権同士が衝突したときに一方の人権を制限できる、その理論の
ことでした。

 日本国憲法の「人権カタログ」にはいろいろな人権が書かれていますが、
個別の人権についてわざわざ「公共の福祉で制限するよー!」と書かれている
のは、22条の職業選択の自由と、この財産権を定めた29条の2つだけです。

 29条は、私有財産を保障したものですが、一方で、「公共の福祉」という原理
による積極的な規制も予定している条文だということになります。



 たとえば、営業する自由は、財産権の一内容です。

 でも、飲食店を開こうと思ったら、知事の営業許可をとらなければならない
ことになっています。衛生じゃないものを販売して市民が食中毒になったり
しないように、営業の自由を制限しているというわけです。
 食中毒が出てしまったお店が営業停止になったなんてニュース、時々聞き
ますよね。

 また、セブンイレブンがフランチャイズ加盟店に、消費期限が近い商品の
値下げ販売(見切り販売)ができないようにしたことについて、公正取引委員会
が取りやめるように命令したことがありました。
 これも、巨大企業が市場を独占するのをやめさせて自由な競争ができるように、
という政策目的で、セブンイレブン本部の営業の自由を制限したわけです。


 そしてこういった財産権を制限するときは、きちんと法律に基づいてやらない
といけませんよ、というわけですね(前者は食品衛生法、後者は独占禁止法)。


そうはいっても、政策のために財産を取り上げる場合には「正当な補償」が必要
ですよ~、というのが、29条3項です。

3項 私有財産は、正当な補償の下に、
  これを公共のために用ひることができる。


 自分の住んでいる家土地、使っている畑などを突然召し上げられて住処や
生業を失って何の補償もない…なんてことがないように、正当な補償をしなさい、
と憲法レベルで書いてあるのです