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2015年7月24日金曜日
首相のお気に入りの「米艦の邦人輸送」の事例がイタイほど空想なワケ
参議院での審議を前に、いくつか過去の記事を掘り返してみます。
安倍首相が事あるごとに自信を持って示す、あの事例。
あの図、あるでしょ。
「近隣諸国で紛争が起こって、逃れようとする邦人を輸送する
米国の船が襲われたとき、その船を守れなくていいのか」
そうそう、これこれ。言ってますよね~。
これだけでなくて、政府が挙げる「こんなとき集団的自衛権が
使えなくてどうする!事例リスト」は、別に集団的自衛権を行使
しなくても対処できたり、非現実的なものだったりっていうケース
ばかりなのですが、
今日は特に!
この頻出の事例がどう非現実的(というか正直、空想に近い)か、
ご説明します。
① まず、日本人の避難者を乗せた船を自衛隊が護衛することは、
日本自身の防衛上不可欠な行動なのだから、個別的自衛権を
行使する、という問題なはずです。
なので集団的自衛権を行使しなくても全然困らない…ですね。
② そもそも戦争になってる段階で日本の民間人が大量に朝鮮
半島に残っている、という想定自体がありえない。
外交が決裂し、国と国との関係が悪化し、戦争に発展するその
過程は、当然日々報道されますし、どこよりも日本含め各国の
政府・情報機関が詳しくキャッチします。そして自国民の命を守る
ために、情勢が悪化し始めた段階で渡航制限や帰国を促したりします。
海外旅行に行く前に、外務省のHPで確認することもありますよね?
なので、朝鮮半島で実際に戦争が勃発した時点で、日本の民間人が
(しかもお年寄りや子どもが)残っている、という想定自体が、実は
けっこう非現実的なのです。
(むしろ、そんな状況になるまで邦人を朝鮮半島に残していた
政府の怠慢・能力の無さがまず問われてしまいます。)
③ それでもごくごく一部の民間人は、やむを得ない事情で
朝鮮半島に留まっているかもしれません。
だから日本に連れて帰らなければ、たしかにそうなるでしょう。
しかし、自国民の命を守るための軍事的な基本のキですが、
まずは戦況が落ち着くまでは身の安全を確保していてもらう
わけで、戦闘機が飛び交い、いつ撃沈されるか分からない
とかいう戦火をかいくぐって船に乗せ、海を渡らせることなど
するわけがありません。軍事的に、非常識です。
④ ついでにいうと、臨戦状態の軍艦には武器・兵器が詰め
込まれています。
民間人が乗るスペースはありません。
⑤ きわめつけに、「米艦は邦人輸送を事実上しない」、と事実上
宣言されています。
報道もされましたが、日米の「日米防衛協力のための指針」
(ガイドライン)に基づく周辺事態法を作る際、アメリカ側の強い
意向で、避難する日本人を米軍が運ぶ「非戦闘員救出作戦」
(NEO)は拒否されたのです。
それもそのはずで、米軍は海外の自国民らを救出・保護する際
のルールを自分で決めています。
そこにはハッキリと国籍による4段階の優先順位があって、
第1順位 米国のパスポートを持つ者(米国籍)
第2順位 米国の永住許可証(グリーンカード)を持つ者
第3順位 英・加・豪・ニュージーランド国民
第4順位 その他
つまり日本は「その他」なのです。この優先順位から、
「アメリカ自身が真の同盟国だと思ってる国はどこか」が
素直に伝わってきて面白いですよね!
韓国に居住している米民間人は14万人いますから、
戦争になるまでに減っているとはいえ、日本人が実際に
運んでもらえる日が来るまでには戦争終わってるんじゃ
ないか、というほど、事実上、「米軍は日本人を輸送しない」のです。
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いかがでしたか?
こんな事例を挙げて、
「こんな事態が起きたらどうするんですか!?」と迫ってくるなんて、
ちょっと反則だなぁ、と思いませんか?
非現実的にもほどがある、という、そういうファンタジーな事例
なのです。
集団的自衛権がなくっちゃ日米同盟は終わりだ!なんて
言われても、不安にならないでください。
不安になっている人を見つけたら、あれめっちゃファンタジーだよ、
と伝えてください。
不安にさせるのが、たぶん、「あの方々」の思惑なのですから。
(2014年6月の記事を改訂)