2020年10月7日水曜日

「国家予算を投じてる」は、人事に介入していい理由にはなりません

 

 日本学術会議への人事介入の件、「国家予算を投じている内閣府直轄

の機関なのだから、人事に介入するのは当たりまえ」という言説が、

ありますね。

 「国民の血税が注がれているのだから、民主的コントロールを及ぼす

必要がある」なーんて聞くと、思わず、なるほどね~なんて思ってしまう

人、少なくないと思います。


 そのポイントに対して、毎日新聞の社説の中にあるこの一節をご紹介

します。


「首相は、政府が年間約10億円の予算を支出していることや、会員が

特別職の国家公務員になることを人事権行使の理由にしている。

しかし、学術会議は一般の省庁とは異なる。予算や身分の問題と、

任命権の話は別だ。」

 

● 学術会議巡る首相発言 これでは説明にならない (毎日)

https://mainichi.jp/articles/20201007/ddm/005/070/075000c


 信濃毎日新聞の社説もまた、雄弁です。

「学術会議は政府の機関であり、年間およそ10億円の予算を投じて

いることにも菅首相は言及した。けれども、それは介入を正当化する

根拠にならない。

 公の機関として国の予算で運営を支えるのは、学問の自由を保障

するためであって、政府に従わせるためではない。政治権力からの

独立が確保されなければ、学問の自由の土台が揺らぐ。」


● 学術会議人事 首相は何も答えていない (信毎Web) https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20201007/KT201006ETI090011000.php


 「国家予算を投じているのだから介入して当たり前」という言い分は、

それを言い出したらキリがないわけです。

 福山和人弁護士の「学術会議に国が10億出してるから人事に口出し

してよいなら、政党交付金をもらった政党の党首は総理が決められる

のか?  アホすぎる理屈だ。」というツイートは、なによりも明快で

しょう。

https://twitter.com/kaz_fukuyama/status/1313297811224489985?s=20


 というわけで、国家予算を投じているから介入して当然、という

「一見もっともらしい言説」には、警戒が必要です。

 もし周囲に、こうした「もっともらしい言説」に流されている方が

いらしたら、ぜひ上記記事やツイートをさりげなく教えてあげてください。