2015年5月10日日曜日

【「17条の憲法」は、憲法ジャナイヨ!】

【「17条の憲法」は、憲法ジャナイヨ!】

最近、トンデモ憲法改正漫画が出回ってて、あすわかでもいろいろ突っ込ませていただきました。
そんな中、常々不思議に思っているのが、憲法を変えたいという人たちは、戦後70年もたって実情に合わなくなったから変えようという主張がある一方で、日本古来の伝統を踏まえた憲法にしようという主張もしているということです。

例えば、安部首相は、昨年、国際法曹協会(IBA)の年次総会で挨拶したときに、「聖徳太子は、早くも7世紀に、17条からなる日本で最初の憲法を制定しました」と言いましたし、自民党の憲法改正草案Q&Aでは、「和の精神は聖徳太子以来のわが国の徳性である」と言って、憲法前文に入れるべきだと言っています。7世紀という大昔の「17条の憲法」って日本史でやりましたよね。

古いから変えようということなのか、古いのに戻せというのか、どっちなのかと、はっきりしろと、盛大に突っ込ませていただきます☆

新しい、古いということで言ったら、日本国憲法は、当時の最先端の憲法で、その後も変える必要がなかったから、ここまで変えることなく来たんだと思いますけれどもね。
アメリカ憲法なんて、人権規定がなかったから、後から修正していったわけですしね。

それで、「17条の憲法」の話を聞いて、正直、「え?まだそれ言います?」という気分ですが、おそらく西洋から持ち込んだ人権の概念を否定したいばかりに、「日本には昔から憲法あった!凄い!」と言いたいんでしょうね(それを言い始めたら、明治憲法も外国から持ち込んだわけですけども。)。
じゃあ、自民党の憲法改正草案に「17条の憲法」が生かされているかというと、先ほどの一言以外にはなくて、他の16条はどこにも見当たりません。
(どれだけ「17条の憲法」が憲法からかけ離れたものかは、後半でザックリ分析します。)

一言で言うと、「17条の憲法」は「国家公務員倫理法」であって、いわゆる「憲法」ではありません。
憲法というのは、国政の基本を定める法ではありますが、それだけでなく、国家権力を縛って国民の自由を守るためのものです。憲法が縛るのは国民ではないんです(ココ大事。テストに出ます。というか、国民投票のためにも分かってないとマズいです。)
「憲法」と名前が付いていればいいってものではないんですね。

後でザクッと分析しますが、「17条の憲法」は、役人の行動を縛るという意味では権力を縛っているようにも見えます。しかし、天皇の権力は縛られていなくて、天皇が権力を振るえるようにするためのものなんですね。

これに対して、日本国憲法は、天皇も含め、国家権力を縛って、国民の自由を守るためのものですから、全然違うのです。
国民も「17条の憲法」の和する精神で、天皇とか権力の言いなりになれということなら、それは違うと申し上げておきます。

そもそも、和するのが日本人の徳性だったら、どうして壬申の乱とか、戦国時代とかあったんですかね?そうじゃないから、仲良くしろよ、と言われたんじゃないんですかね?和するのが徳性だったら、太平洋戦争は起こってないと思うんですけどね。

なんとなく、フワッと、日本には、昔から17条の憲法というものがあってーとか、国柄がーとか、和するのが日本人の徳性でー、それに合わせた憲法にしないといけなくてー、等と言われて、そうかもー、と思ってなんとなく憲法を変えようとしちゃいけないってことですね。

☆ここから先は、17条憲法の中身を分析しますー☆

17条の憲法を現代に当てはめるとどうなっちゃうのか見てみましょう!☆
 (17条の憲法や聖徳太子さんが良いとか悪いとかじゃなくて、ね。)
☆1条くらいしか見たことない方が多いと思いますが、
 今回は、特別に、なんとなんと、全部の条文を見ちゃいます!

ということで、早速、中身に入りまーす。

1 仲良くしろよ。その方がいい議論ができるからな。

→ 仲良くできるにこしたことはないですね。でも、そうはいかないから、裁判って制度があるんですよね。和するために、個人の権利が際限なく侵害されてもいいのかってことですよね。

2 仏法僧を尊敬しろよ。

→ 今は、信教の自由や政教分離ってものがあるわけでして、宗教やら神様を尊敬しろなどと、国家から押し付けられるべきではありませんね。

3 天皇の命令は聞けよ。

→ 権力者は絶対だと。この時点で、法の支配ではありませんね。
法の支配というのは、あるべき正しい法で権力を縛るという考えです。国民を「法で縛る」ということではありません。

4 役人は礼儀正しくな。でないと、国が乱れるからな。

→ 権力者が嘘をついていると、みんな真似しちゃいますよねーーー。

5 賄賂を取らずに、裁きは公正にな。

→ 賄賂を取る裁判官は、さすがに聞いたことはありませんが、最高裁に人事管理をされているので、国に都合のいい判決を書く裁判官はいますよね。あと、政治資金で問題があるのに、検察が起訴しないのはおかしいですよね。

6 悪事は懲らしめて、良いことしろよ。悪いことをする奴は、国への忠義心がないんだからな。

→ いや、それって個人の問題で、忠義心の問題じゃないんじゃないですかね?今の時代に、国への忠義がないから悪いことをするんだとか言われると、ドン引きしてしまいます。

7 役人は任務に忠実に、権限を濫用すんな。仕事は、適材適所な。
8 役人は、早く出勤して、遅くなってから退社しろよ。
9 役人は、真心を持って仕事しろよ。
10 他人と意見が違っても、怒んな。
11 信賞必罰な。
12 役人は、勝手に税金とるな。
13 役人は、職務を熟知しとけ。
14 役人は、他人に嫉妬すんな。
15 役人は、私心を捨てろ。でないと、不和になって、仕事に支障が起きるからな。

16 民衆を使うなら、春から秋は止めとけ。農耕養蚕をさせないといけないから。使うなら冬にしとけ。

→ 民衆を無理に使う役人が多かったんですかね。というか、今、勝手に国民を動員されたら困りますわ。自民党が入れようとしている緊急事態条項なんかは、そういうことができちゃうものですけども。

17 大事なことを決めるときには、一人で決めずに相談しろよ。

→ まー、最近は、閣議決定だけで、国会にも国民にも意見を聞かずに憲法違反のことを勝手に決める人もいますからね。

全体を見て、「17条の憲法」って、ホントに国家公務員倫理法っていう感じですよね。特に、7条から17条あたりは、こんな当たり前のことも書かないといけないほど、当時の日本の役人は酷かったわけですね。
いや、今でも国家公務員には、これに従ってきちんとやってほしいという気もしますね...。国家公務員法倫理法という意味なら、別に反対もしませんけれどもね。
それから、国の統治の基本を定めるという意味では、この17条憲法には、立法、行政、司法のあり方も定めてありません。そうした形式的な意味でも、「17条の憲法」は憲法の名に値しないということが言えます。

ということで「日本には昔から憲法があったんだ、だからそこに戻ろう」とか、「日本国憲法はもう古いから変えよう」とか、中身も見ないうちから決めつけて、印象だけで判断するのは、もうやめにしましょうよ。