「大規模災害発生時などに、国会議員の任期が延長できることなどを憲法に規定しておくことは急務だ」
とおっしゃったとのこと。
http://www.asahi.com/articles/ASH57331FH57UTFK003.html
来年夏と言われている憲法改正の発議&国民投票で、
緊急事態条項の導入が争点になる可能性が高いということですね。
この「緊急事態条項」、今の憲法にはない制度です。
おおざっぱに言ってしまえば、戦争や災害などの緊急事態に、緊急事態だからということでいつもとは違うことをやってもいいよ、とあらかじめ憲法の縛りを緩めておきましょう、というもの。
船田議員が例えに挙げた国会議員の任期延長だけだったら、
「それくらいならいっか」
と思う人も多いかもしれません。
でも、衆議院の解散中に緊急の必要が生じたときは、参議院の緊急集会を開くことができるので(憲法54条2項、3項)、国会議員の任期延長もどこまで必要なのかなぁ、という議論はあります。
しかし、それだけではありません。
自民党憲法草案では、緊急事態では何人も国その他の公の機関の指示に従わなければならないとされていて、
要するに、緊急事態では人権を制約して国の言うとおりにしてもらいますよ、とされています。
どのような場合に、どのような人権が、どの程度制約されるのか、緊急事態が解消した後に制約された人権が保障されるのか等、具体的なことは全く明らかになっていません。
人権は最大限に尊重しますよー、と言っていますが、尊重した結果、人権を制限するわけですよね。今でも、人権があってもいろいろ制限されてますが(憲法13条で環境権が保障されていると考えられていても原発は止まらず、財産権が保障されていても被災者には十分な損害賠償がされていなかったり、特定秘密だと言って知る権利が侵害されたり…。)、それより明らかに弱くなるわけですよ。
また、緊急事態に内閣が国会の権限も持ちますよ、ということも自民党草案に書かれています。
法律をつくるときの侃侃諤諤の議論を経ずに、内閣の思うとおりにしようというわけですね。
このように、緊急事態条項は、内閣の権限を限りなく強めて、三権分立もすっとばして、人権の制限を可能とする、リスクあるものなんです。
緊急事態条項は、震災のときに必要だーと言われています。
しかし実は、被災5県(兵庫、新潟、岩手、福島、宮城)の弁護士会が反対の声明を出し、共同で記者会見をしています。
兵庫県弁護士会の声明→ http://www.hyogoben.or.jp/topics/iken/pdf/150410seimei.pdf
福島県弁護士会の声明→ http://www.f-bengoshikai.com/topics/t1/2194.html
被災地の弁護士会は、被災者支援のために、精力的に避難場所を回ったり、法律相談を受けたりして、ニーズをくみ取り、二重ローン問題の解消のための立法提言をするなどしてきました。被災者が困ったことは何だったのかを、現場で最も熟知しているといっても過言ではありません。
その被災地の弁護士会が反対しているということは、本当に緊急事態条項が被災者のための制度なのか、と思ってしまいますよね。
緊急事態にどういうことが許されるようになるかっていうのは、緊急事態条項をおいている国によってもさまざまです。
「緊急事態条項の創設については各党に異論が少ない」なんて言っている状況で本当にいいんでしょうか?