2015年5月3日日曜日

いまだに「押しつけ憲法論」とかいって…2015


 さてさて、憲法イベント満載の今日、いろいろ書きたいことは
山積みです。昨年の今頃は何を書いていたんだっけ?と振り
返ってみると、「いまだに押しつけ憲法論とかいって」とため息
混じりに書いてました。そうでした、あすわかは毎年この時期に、
「いつまで押しつけ憲法とかいってるのー、ちょっとダ・サ・い
かも~」と発信していたのでした。
 今年もまだまだ、この謎な「押しつけ憲法論」がいろんなところ
で叫ばれているので、ちょっと待ったぁ、ということで、今年も
再掲します。


  日本国憲法は占領軍による「押しつけ憲法」だ、という主張は、
改憲を唱える人達の強い論拠となっていますし、自民党の自主
憲法制定という党是の根底にも、「押しつけ憲法論」が強く流れ
ています。

  しかし、この「押しつけ憲法論」、よーくよく考えてみれば、
論拠として...は非常にもろいもので、言ってみれば「突っ込み
どころ満載」な考えです (-_-;)


  大きく分けて2つのレベルでの反論できちゃいます。

  ① そもそも押しつけか否かなど改憲の是非の議論にとって意味がない。
  ② 押しつけではない。

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 ①について考えてみましょう。

 立憲主義・民主主義・天賦人権・国民主権・平和主義、これら近代
民主主義国家の原則は、敗戦までの大日本帝国憲法下にはありま
せんでした。それまでの「天皇を頂点とした軍部独裁の政治」に終止
符を打ち、日本が民主国家として生まれ変わるためには、憲法改正
は必至でした。

  マッカーサー元帥はじめGHQは、日本も敗戦を受け入れたから
には憲法改正の重みも当然分かってるだろう、と考え、幣原内閣に
憲法改正の試案を作るように指示しました。日本に任せればいいと
思っていたのですね。

 ところが、内閣の下に設けられた憲法問題調査委員会が作った
試案は、残念ながら明治憲法の焼き直しのようなもので、天皇主権
は温存されたままで、人権保障も徹底されていない、およそ民主的
とは言えない内容でした。

 GHQはこれにがっかりして、日本政府に丸投げしていても民主的
な憲法案は作れないだなーと判断しました。そこでGHQが案を提示
しつつ、政府との間で草案作成を進め、帝国議会に上程し、審議の
末、大日本帝国憲法の憲法改正手続にのっとり、日本国憲法が
制定されたのです。
 (ぶっちゃけ、恥ずかしい話なわけです。日本政府が天皇主権など
という時代錯誤な発想を捨てて民主的な草案を作れていればよか
ったのに、自分達ではそれができなかったわけですからね。)

  一橋大学の阪口教授いわく、「50年連れ添ったけれど、もとはと
いえば意に沿わない結婚だったから離婚しよう、という夫婦はいない。
離婚したいのは、結局相手のことが好きじゃないから離婚したいの
であって、たとえ意に沿わない結婚だったとしても,気が合って
仲むつまじい夫婦関係を築けたのであれば離婚はしない」。

  押しつけだから改正せねばならない、というのは、憲法の中身の
議論を避けた、理屈になっていない主張といえます。
  押しつけ憲法論を主張する方々は、結局は、立憲主義や民主主義、
天賦人権等々の憲法の中身が嫌いなのですね。


  ②はどうでしょうか。
  議論の土俵を、「押しつけかどうか」というレベルに移した場合、
押しつけであるといえるのでしょうか?

  上記の通り、日本国憲法はGHQが突然「今日からこの憲法が
君たちの憲法だ」と言って発付したものではなく、帝国議会での
審議と議決を経て制定されたものです。

 例えば一例を挙げると、

・GHQは当初一院制を想定していましたが、日本政府が二院制を
主張して、草案には二院制が取り入れられました。

 ・帝国議会の審議の中では、第1条の「国民の総意に基づく」や
第9条2項の「前項の目的を達するため」という文言が挿入されたり
もしました。

 また、新しい憲法ができるんだってさ!と、当時の国民の間でたく
さんの独自の草案が作られ、メディアに乗っかりました。中でも憲法
研究会が作った「憲法草案要綱」は、GHQが綿密に検討して、天皇
制を否定しないままの国民主権原則や、生存権・社会権の規定など
について評価して、草案作成に取り入れています。


 うわ~ぁ、ここまで来たら、もうぜんぜん押しつけではありませんよね。


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  雑ぱくな説明になりましたが、このように、「押しつけ憲法論」という
ものは非常にもろい主張です。

 作家の島田雅彦さんは、「現行憲法を押しつけだからといって改め
ようとするくせに、同じ押しつけである日米安保条約は頑なに守ろうと
する。ほとんど日米安保条約を憲法の上位に置こうとする政治方針と
映る。」と語ります(5月2日 朝日新聞寄稿)。

 そうなのです、結局、理屈ではないのです。丸裸にされちゃってますね。

 このような主張を、いまだに自民党はじめ改憲論者が強力に
続けているのは、憲法の中身が好きでなく、とにもかくにも改正
したい、という執念ゆえなのでしょうか。
 とにかく今の憲法が好きではなくて、それを変えたいと訴えたい
のだけれど、テキトウな理由が思い当たらない、というのが正直
なところ、かな?毒舌失礼いたしましたー。