2014年7月10日木曜日

閣議決定は違憲だ!という裁判… ??



 閣議決定がなされて以来、あすわかへの、こーんな
お問い合わせが増えています。








「閣議決定は違憲だ、と訴訟をしないんですか?」
「裁判所に安倍政権を訴えて下さい!」









 なるほどなるほど、たしかに、そういう疑問や願いを持たれる
お気持ちも分かります。最高裁判所は「憲法の番人」ですし、
合憲とか違憲とか、憲法訴訟してますものね。






 うーん。


 ですが、結論から言うと、
 「昨日立憲主義を破壊するひどい閣議決定がなされました。
なので今日、弁護士は閣議決定を違憲だと裁判所に訴えます。」
というようなアクションは、そうそう簡単には起こせません。






 これは、日本が採用している(違憲審査)制度の設計のお話です。
 
 つまらないかもしれませんが、でも疑問を持っている人はスッキリ
できるのでは、と思うので、ご説明しますね~☆
社会科の授業みたいですが…







 国家権力は、行政(政府)・立法(国会)・司法(裁判所)の3つに
わかれ、お互い抑制均衡(チェック&バランス)の関係に立っています。
 民主主義のルールにのっとって政府や国会は立法・行政の権力
行使をしますが、その権力行使が、果たして最高法規たる憲法に
反していないか、冷静にチェックし判断する機関が必要です。
  民主主義という政治体制は、時として誤った判断をすることもあり
ますし、「数の論理」で暴走することもあります。しかしそんな時、
「国家権力が憲法の枠内で政治をしているか」冷徹に第三者として
判断する司法があってこそ、立憲主義(そしてその目的である自由・
人権の保障)が維持できるわけです。
 裁判所でさまざまな違憲訴訟が争われているのは、裁判所が
司法権の担い手であり、「違憲審査制」があるからです。








 さて、


 そんな違憲審査制ですが、国によってやり方はさまざまです。
 例えば、こんな分類ができます。
①「憲法裁判所」を特別に設けて、その国の法律や行政の行為を、
違憲かどうか審査する制度。ドイツなんかが採用する制度です。
②通常の裁判所が、具体的な事件を裁判する際、その事件の
解決に必要な範囲で、その事件に関わる法律が違憲かどうかを
審査する制度。アメリカが典型です。






 そして、日本は(いろいろ憲法学的には深い議論があるものの)、
②の制度を採用しています。
 




 つまり、具体的に、その法律(の条文)にからむ事件が発生して、
その事件を争う当事者が、「おかしいでしょそもそもそんな憲法違反
の法律!」と主張して初めて、裁判所は「そもそもこの法律が憲法
違反で無効かどうかを判断しなければ事件が解決しませんね。
では違憲審査しましょう。」ということで憲法に違反するかどうかを
審査するのです。








 例えば、
 相続でモめ、婚外子の人が「おかしいでしょう、そもそも民法の
規定が憲法14条に反して無効だから、こんな不公平な相続は
受け入れられない」と主張することで、裁判所は、民法の規定が
憲法違反かどうかを審査しました(そして無効だと判断されましたね)。








 あと例えば、
 デモで逮捕された人が、裁判で「そもそもそんなデモを規制する
条例が表現の自由を保障する憲法21条に反して無効なのだから、
自分は無罪だ」と主張したり、
 薬局を開設したい人が、薬事法上の「距離制限」を理由に開局が
許可されなかった時に、「そもそもそんな距離制限は職業選択の
自由を侵害するから無効だ」と主張したり、
 過去にはそういう事件もありました。








 いずれも、なにか具体的な事件が発生して、その中で当事者が
「そんな法律は憲法違反で無効だから適用されないはずだ」と
主張することで、裁判所が違憲かどうかを判断したわけです。







.:*゜..:。:.::.*゜:.。:..:*゜..:。:.::.*゜:.。








 そんなわけで!
 閣議決定がなされたからといって、それだけで次の瞬間、
「その閣議決定は違憲だ」という訴訟を裁判所に持ちかける
ことは、日本の制度上、できないのです。
(決して、弁護士が生ぬるいとかいう話ではないんです~ 汗)




 
 それが欠陥だ!、というわけでもありません。




 その国の違憲審査制度が何を第一の目的に掲げているのか
(立憲主義の維持なのか、国民個人個人の人権の保障なのか)
どこを重視しているか、という制度設計の違いなのです。
 









 小難しい話でしたが、「弁護士はなぜ違憲訴訟を起こさないんだっ?」
と不思議に感じておられる皆さま、お分かりいただけたでしょうか?
 




 こういう違憲審査制とか司法権とかも、憲法に書かれているんです。
憲法の勉強、やっぱり大切なんですよ。




 本を読むのもなんかめんどう、とお思いならぜひ!憲法カフェに
お越しくださいね。
 自分の地元で開きたい!という方はこちらをご覧ください☆↓
http://www.asuno-jiyuu.com/2014/07/blog-post_8798.html