2014年7月12日土曜日

エンタメ憲法シリーズ 小説フランス革命と憲法

 7月14日といえば、1789年のフランス革命の際、バスチーユ要塞がパリ市民の手によって陥落した日で、毎年、パリ祭(カトールズ・ジュイエ)と言って、花火が打ち上げられたり、ダンスパーティーが開催されたりして盛大に祝われています。今年は、週明けの月曜日ですが、「アンスティチュ・フランセ東京」などでは、前倒しで7月12日に開催するようですね。

  ところで、先日、内閣は、憲法に違反する集団的自衛権の行使を容認するカクギケッテイをしてしまい、がっかりした方、無力感を感じた方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

 私も、がっかりしかかったのですが、ちょっと原点に戻ろうかと思いまして、「小説フランス革命1 革命のライオン」(集英社文庫)を読み始めました。フランス革命というと「ベルばら」を思い出す方もいらっしゃるかと思いますが、もちろんベルばらは読みましたよ。いろいろな意見があると思いますが、私は、アンドレの「俺は、いつか、お前のために命を捨てよう」(うろ覚え)というセリフとそれに続く運命に萌えます。今まさ...に、宝塚でベルばらをやっているところですよね。激しく見に行きたいです。

 …えっと、フランス革命でした。脱線しました。
 この「小説フランス革命」というのは、革命を起こした側の若者たちの生きざまを描いているのですが、まだ権利や自由というものが認められていない時代のことです。すべての国民に選挙権があった訳でもなく、女性には選挙権がありませんでした。

 「三部会」という三つの身分(僧侶、貴族、平民)による議会が開かれるということですが、平民出身の議員になったとしても、異なる身分の議員の間で差別をされてしまうのです。現代では考えられないことです。しかし、そうしたことがあっても、めげずに、どうやったら対等に議論ができるのかと、あの手この手を考えて実現させていこうと努力をしていました。

 この辺りを読んで、今の日本を振り返ってみた時に、日本国憲法では、選挙権もあるし、平等原則もあるし、いろんな自由が定められているし、権力が暴走しないように権力を縛る仕組みも備わっているわけですが、こうしたことが当たり前でなかった時代がつい200年程前にはあったのだということを改めて実感しました。

 投票価値の不均衡が違憲状態にある「偽首相」が、憲法違反の無効な閣議決定をしたことくらいでへこたれているのが、自由も権力分立も定められていない時代にそれらを勝ち取ってきた先達たちに対して申し訳ないという気持ちになりました。

 そうなんです。簡単なことで、憲法を無視した解釈をする政党や議員は、次の選挙で落とすだけでいいのです。何も血を流して革命をする必要はありません。革命を起こすまでもなく、私たちの手には、国会議員にご退場願うための力があるのです。集団的自衛権を容認した人たちを、よーく覚えておきましょうね。

 前回の選挙で、自民党の得票率は、たかだか20~30%というところでした。投票率は60%程度でしかありませんでした。自民党が政権から陥落したときの絶対的得票率よりも、前回自民党が大勝したときの絶対的得票率の方が低かったのです。ということは、投票率が20~30%上がり、自民党以外に投票されれば、自民党は政権を失うんです。

 逆に、今、安倍首相が、まるで何も怖いものがないかのように振る舞っていても、実は、その政権の基盤は、たかだか得票率20~30%の非常に脆弱なものだということです。

 ですから、集団的自衛権が嫌なら、諦めないで、どしどし選挙に行きましょう。今後、地方自治体の首長や議員の選挙があるときには、集団的自衛権を支持した政党以外に入れればいいのです。国政選挙でなくても、地方自治体の選挙から行動を始めればいいのです。そうした人たちが増えてきて、議席が危ないという危機感を持つようになったら、議員の行動は変わります。

 
 話をパリ祭に戻しますと、フランス人は、1878年に7月14日が祝日に制定されて以来、毎年、フランス革命を思い出してきたわけです。毎年のように、自分たちが主権者だということを自覚し、歌って、踊ってきたのです。このパリ祭に、今年は集団的自衛権を容認されて海外での戦争に参加することになる自衛隊が参加するというのは、悪い冗談にしか思えません。

 これに対して、日本では、革命で人民が権利を勝ち取ってきたという歴史がなく、明治維新にせよ、日本国憲法にせよ、上からの改革で権利を与えられてきた側面があります。祝日としても、憲法記念日や建国記念日はありますが、自分たちで勝ち取ったという要素に乏しいのです。

 その違いが、デモの件数にも表れているようです。フランスでは、2013年のデモ件数が7300件、何と1日20件。自分たちが主権者だからこそ、意見を表明していいんだという空気にあふれているように感じます。とはいえ、日本でも、原発に反対する毎週金曜日のデモ、秘密保護法に反対した昨年末のデモ、集団的自衛権に反対するデモなど、行動する市民が増えてきました。行動して、意見を表明していいんです。表現の自由があるんですから。それは、憲法が保障しています。

 そんなことに想いを馳せながら、7月14日を過ごしてみてはいかがでしょうか。