2017年8月3日木曜日

やや日めくり憲法 82条(裁判の公開)


 <日本国憲法 82条> 
  裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は
 善良の風俗を害する虞があると決した場合には、
 対審は、公開しないでこれを行ふことができる。
 但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法
 第3章で保障する国民の権利が問題となつてゐる
 事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。


  裁判は、国民みんなが見守ることができる場で実施しなきゃ駄目ですよ、という
規定です(82条1項)。

 
 「ええっ?!なんで?私、自分の裁判、他の人に見られたくありません!」と思う方も
おられるかもしれません。
 でも、「みんなが裁判を見ることができる」というのはものすっごい大事な原則なの
です。

 なぜかというと、密室で(国民が見守ることができない状況で)実施される裁判だと、
公正に行われるかどうか、わからないからです。
 裁判所も強大な権力です。民事でも刑事でも、裁判所の下した結論は人の人生を大きく
左右します。
 まだ死刑が存在する国ですから、判決ひとつで、人の命を奪うこともできてしまいます。

 そんな強力な司法権が、恣意的にふるわれると、国民の人権や生命には、たまった
もんじゃありません。

 例えば、明治時代に「大逆事件」と呼ばれる事件が起きました。
 政府の方針に反する意見を持った人たちが、突然、「天皇暗殺を企てた」として逮捕され、
刑事裁判の後、うち24名に死刑判決が下されたという大きな事件です。

 この事件では、大審院(今の最高裁判所にあたります)が、非公開で裁判を行いました。

 しかも証人申請をすべて却下した上に、たった1か月程度の裁判で死刑判決を言い渡した
のでした。
 そのため、この事件の裁判が公正に行われたのかどうか、
 検察官による有罪の立証が十分だったのかどうか、
 被告人の言い分をキチンと聞く手続が行われたのか-、
 市民には全くわからないまま、死刑という重大な判決がくだされてしまったのです。

 こういったことを防ぐために、82条は、
「裁判は公開します。特に、政治、出版、人権に関する事件は必ず公開します。」
と定めたのです。


 裁判は、「行政(政府など)や立法(国会)が人権を侵害したときには、裁判手続の中で
人権を回復したり、侵害を止めさせたりできる」という制度です。
 せっかく裁判所に訴え出ても、裁判所が好き勝手をしたら、人権を回復できませんものね。
 ですから、皆さんも、気になる事件があったら、ぜひ、裁判所に足を運んでください。
足を運んで実際に裁判手続を見ることも、私たちの人権を守るための「不断の努力」の
ひとつです。