2017年8月5日土曜日

やや日めくり憲法 85条(国費支出及び債務負担の要件)



<日本国憲法85条>

 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、
国会の議決に基くことを必要とする。



 国が国民から集めた税金を使って、行政の運営に必要な支出をしたり、
借金をしたりするためには、国会の議決が必要です。よくテレビ中継
される予算委員会は、主に国の税金の使い方について審議するところ
なんですね。

 なぜ、いちいち国会の議決が必要なのでしょう?


 そもそも戦争に敗けるまで、つまり明治憲法のもとでは、議会が財政
に口を出すことが厳しく制限されていたのだそうです。
たとえば、明治憲法では、皇室経費については増額する場合以外は
議会の「協賛」は不要だとされていたり(66条)、勅令による緊急
財政処分も認められていたり(70条)、国民の意思がかーなーり
反映されない形で税金が使われていたわけです。

 でも戦争に負けて、日本国憲法が生まれ、私たち国民は晴れて国の
主権者(主人公)。私たちが一生懸命働いて稼いだお金を税金として
納めているのだから、政府に好き勝手に使われたくありませんよね。

 
 そこで、日本国憲法では、国民の代表機関である国会の関与・統制を
徹底させることとしました。


 国民の代表が集まる国会で、その支出や借金が必要なのかどうか、
どれくらい必要なのか、しっかり議論して決めることを日本国憲法
は定めています。

 国会が決めるならどんな使い道でもOKというわけではなくて、基本的
人権の保障の保障に伴って生じる支出や借金でなくてはなりません。
 たとえば、憲法25条によって健康で文化的な生活を営む権利を保障
するために十分必要な医療や介護などの社会保障費を支出しなければ
なりません。「財政立憲主義」とか「財政民主主義」などといわれて
います。


 いまの日本の財政支出はどうなっているでしょうか。
 添付の図をご覧下さい。(財務省ホームページより)






 日本は高齢化が進んでいるので、社会保障費が3割を占めています。
2017年度の予算では、低賃金の保育士や介護職員の賃金アップの
ための支出が社会保障費に組まれています。

  しかし、みんなが「健康的で文化的な最低限度の生活」を送れるほど、
国の支出は十分にされているでしょうか。


 2012年8月に社会保障制度改革推進法という法律が成立し、
施行されていますが、そこでは「自助、共助及び公助が最も適切に
組み合わされるよう留意しつつ、…家族相互及び国民相互の助け
合いの仕組みを通じてその実現を支援していく」として、自己責任
が強調されています(生存権の保障は、国家の義務なのに…)。

 社会保障への「負担の増大を抑制」、「生活保護制度の見直し」
なども掲げられた結果、生活保護については、2013年8月から
最大10%、平均6.5%と、史上最大の生活扶助基準の引下げが
実施されました。

 2013年12月には70~74歳の医療費の自己負担が1割から
2割に引き上げられました。医療費の抑制、保険料の引き上げや徴収
強化の傾向にあります。

 今後も、介護保険への自己負担3割導入、要介護1~2向けの生活
援助などに保険給付を外すなどなど、さらなる社会保障費の削減が
狙われています。



 他方で、防衛費(米軍再編関連費用を含む)は5兆円を超え、
過去最大です。前年度当初より1.4%増で、5年連続の増加と
なっています。

 ごちょーえんゼロが多すぎて想像を絶しますが(_)、保育士
さんのお給料や、生活保護費や、高い学費・給食費などを放置して、
闘機や武器につぎ込まれているのは、ちょっと納得できないような。

国の安全保障も大事ですが、社会保障も国民の命と健康を守る
Social Security”「安全保障」の1つです。「財源がない」という
なかで、どちらを優先させるべきでしょうか。



 国の借金はどうでしょう?

 2016年12月末の国債と借入金、政府短期証券の合計残高は
1066兆4234億円で過去最高です。
 つまり、赤ちゃんからお年寄りまで国民1人当たり約840万円の
借金を抱えていることになります。…(-_-;)


 国の健全な財政を維持(取り戻す)ため、基本的人権を保障させる

ために、何に、どれくらい税金が使われているのか、不断の努力で
常にチェックしないといけませんね。