2017年8月1日火曜日

やや日めくり憲法 81条(違憲立法審査権)


<日本国憲法81条>
 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は
処分が憲法に適合するかしないかを決定する
権限を有する終審裁判所である。


 ここ数年、いろんな法律が「憲法違反だ!」と言われるのを耳にしませんか?
 安保法制(憲法9条違反)、
 秘密保護法(知る権利などの侵害)、
 共謀罪(表現の自由などの侵害)…。


 国会が作る法律が、こんなにも次々と違憲だと言われた時代は、
なかったのではないでしょうか。

 安保法案の審議中に開かれた憲法審査会で、自民党から呼ばれた
参考人(憲法学者)が、「安保法案は違憲だ」と発言して、世論が大きく
盛り上がったことは記憶に新しいかと思います。
 日本は民主主義国家なので、「全国民の代表」が集まる国会で作られた法律は
普通、有効です。
 でも、どんなに多数決で「この法律作ろう!」と決まった法律であっても、
憲法に違反する法律だったら…?
 それに「待った」をかけるのがこの81条です。
 民主主義のルールどおり、多数決で可決して法律が作られたとしても、だれかの
人権を侵害するものであってはならないのです。


 この81条は、立憲主義の表れの一つでもあります。
 権力の行使は憲法に根拠がなければならない、
 言い換えれば、権力は憲法に縛られるのが立憲主義でしたね。
 権力が、憲法に定めてある人権を侵害する法律を作ってしまったときには、
それを違憲無効にすることで権力を縛るのです。

 また、司法権が、「そんな法律は憲法に違反するから無効だ!」といって、
国会の立法権や内閣の行政権の濫用を食い止める働きをしますので、三権分立
の表れということもできます

 でも…冒頭で話したように、ここ数年、権力がやりたい放題やってます。

 自分たちは合憲だと思っているから、最高裁に違憲だと言われるまでは
やっていいんだと言い放った某与党の国会議員もいました。

 ただ、日本で「この法律は憲法違反だから裁判所に意見無効にして
もらおう!」と思っても、簡単な手続きではありません。
 なにか、その法律に関して具体的な事件や損害が発生しなければ、裁判
という形で裁判所が違憲性を審査することができないのです。

 なので、「法律ができた」→「さあ、裁判所はこの法律が違憲かどうか
審査してください!」というわけにはいかず、最高裁の判断がずっと出ない
ままということもあり得ます。

それを見越して、先ほどの国会議員は合憲だとゴリ押ししたのかもしれません。


 また、具体的な事件に結び付けて裁判が起こせたとしても、裁判所は
憲法判断をイヤがります。できるだけ憲法に触れずに事件を解決できない
ものか、と、いろいろ理屈をコネます。
 違憲立法審査権の講師に、とっても消極的なのです。

 そういう態度を改めさせるのは、結局、国民の「不断の努力」しかありません。
 積極的に違憲審査をしてほしい、という声をメディアに届けて、報道させる。
 違憲審査したがらない裁判所をしっかり批判する。
 そういう主権者の姿勢でしか、立憲主義も、民主主義も、うまく回らないのです。