2017年8月9日水曜日

やや日めくり憲法89条 公金の支出

<日本国憲法 89条>

 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは
団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配
に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、
これを支出し、又はその利用に供してはならない。



 この条文は,2つに分けて考えるのが一般的です。

 1つめは,前段と呼ばれる部分で,「公金その他の公の財産は、宗教上の組織
若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため…これを支出し、又はその利用に
供してはならない。」というもの。

 2つめは,後段と呼ばれる部分で,「公金その他の公の財産は、…公の支配に
属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に
供してはならない。」というものです。



 まず,前段について。

 前段は,国が,ある宗教をお金の面で援助したり,援助しなかったりする
ことによって,ある宗教だけをひいきしたり,いじめたりすることができる
という理解に基づいています。

 国が,ある宗教をひいきしたら,国民がその宗教を信じない自由が侵され
ます。また,いじめたら,そのいじめられた宗教を信じる国民がいじめられ
ることになり,国民が宗教を信じる自由が侵されるのです。

 だからこそ,憲法は,国は宗教には金を出さない!とするきまりを作って,
国家権力を制限しようとしたのです。

 この,国民の自由を守るために国家権力を制限しようとする考え方,まさに
立憲主義そのものですよね。

 お金のことを定めているように見えて,実は,国民の自由を守る第89条
前段は,お金にうるさいけれど,実は正義感あふれるかっこいいヒーロー
なのです。


 この89条前段,自民党の改憲草案では,「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲
を超えない宗教的活動について」であれば,国が税金を支出することも許される
としています。

 でも,宗教的行為か「社会的儀礼」ないし「習俗的行為」かどうかって,
実は結構難しい判断ですよね。
 大臣や国会議員による神社への参拝、玉串料奉納… なにか神道以外の信仰を
持っている人にとっては、「え、日本の政府は神道と結びつきがあるの?」と
とても不安を抱くでしょう。
 それと同じで、「社会的儀礼」を隠れ蓑(言い訳)にして,ある特定の宗教に
だけお金を渡したりすれば,国民の信教の自由が侵害されてしまう危険がある
ことを踏まえて,改憲の必要があるのか考えていく必要があります。



 次に,後段については,公共とは関係のない事業に,国が口を出すことを
予防したり,もとは税金である国のお金の無駄遣いを予防したり,国の援助に
頼りすぎた事業を予防したりするために定められたものだ,と考えられてい
ます。


 自民党の改憲草案の解説では,「朝鮮学校で反日的な教育が行われている
現状やこれまでの判例の積み重ねもあり,基本的には現行規定を残すことと
しました。」としています。

 そこでどのような教育を行っているかで,助成を行うかどうかを判断する姿勢
ということです。日本政府にとって都合の悪い教育をしている学校には助成を
しない…、これ、どれだけおそろしいことか、お分かりでしょうか。

 国に逆らわないように教育することには援助して,国に不都合な教育には
援助しないなんてことにならないように,じっくりチェックしていかなくて
はいけないですね。