2017年6月4日日曜日

やや日めくり憲法63条 (大臣の議会出席権利と義務)

憲法63条は、前段で権利、後段で義務について定めています。
大事なのは、後段の義務の方なのですが、まずは前段から。

日本国憲法 63条前段
  内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一の
 議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも
 議案について発言するため議院に出席することがで
 きる。



 短くまとめると「大臣の議会出席権」。

 憲法68条では、大臣の過半数は国会議員でなければならないと定められて
います。
 裏を返せば、0.499までは国会議員じゃなくてもいいんですね
 国会議員でない大臣であっても、この63条を使って国会に出席できます。

 そして、大事な後段ですが、このように書かれています。

 後段 
  又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、
 出席しなければならない。


 短くまとめると「大臣の議会出席義務」。

 憲法41条より、国会が唯一の「立法」機関であるはずなのですが、
 7割くらいの法律は行政機関である内閣が提出しています。
 そのことがいいのか悪いのかはさておき、内閣が提出した法案について
内閣の中でその法案を担当している大臣が説明しなければなりません。

 説明責任の観点から当然です。

 また、議院内閣制のもとで、国会が内閣の動向を監視する(三権分立ですね!)
ためのツールとしても、大臣の出席義務はとっても重要です。

 と、こ、ろ、が。
 最近の共謀罪法案の審議では、出席しても説明をしない大臣が問題になって
います。
(挙げた手を総理が無理矢理降ろさせたという珍事もありました)
 出席してさえいればいいわけじゃないと思うんですけどね…。
 とにかく出席してもらわないことには始まりません。

 実はこの憲法63条、実際に問題となったケースがいくつもあります。

 たとえば、
 2013年の参議院予算委員会で安倍内閣が、議長の不信任案が提出された
ことを理由に、審議をボイコットしました。
 このような理由での出席拒否は前代未聞であり、政治問題化しました。

 自民党憲法改正草案は、この憲法63条後段にも手が加えられています。
 「出席しなければならない」のあとに、「ただし、職務の遂行上特に必要が
ある場合は、この限りでない」という一文が付け加えられているのです。

 いまでさえ説明できているとはいいがたいのに、「全国民の代表」者である
国会に対して説明したくないのかな?
 って思いますよね…。
 「国民に厳しく政府に甘い」改正草案の性格がハッキリと現れた改正だと
いえるでしょう。

 なお、この出席義務に違反したとしても法的な罰則はありません。
政治的な責任が追及されるだけです。

 「そんな無責任な、職務怠慢な大臣など、国民が許すわけないし、
そんな大臣は次の選挙で落とされるにきまってる。」
 そういう“常識的”な感覚で、憲法は国民を信じて、政治的責任だけを
課しているわけです。

 そうです、
 主権者国民は、自分たちの自由や民主主義を守るために、民主主義の
ルールをまともに守ろうともしない、責任を放棄してるような国会議員の
動きは、しっかり見逃さず、選挙で審判を下さなければなりません。

 あの大臣ひどいね、と周囲に教えたり、新聞に投稿したり、
しっかり声をあげて、最終的に選挙で落とす。

 そういう「主権者として当たり前のアクション」を、憲法は期待してるし、
信じてるわけです。
 
 逆に言えば、「主権者が黙ってない」という社会だったら、大臣も、おい
それと欠席などしませんし、きちんと説明責任を果たしますしね。
 
 要するに、大臣が出席義務を守るかどうかは、
国民の日々の監視(不断の努力)にかかっている、ということですね!