2017年3月6日月曜日

やや日めくり憲法 36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止)


日本国憲法 36条〔拷問及び残虐な刑罰の禁止〕 
 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、
           絶対にこれを禁止する。


 日本国憲法は拷問及び残虐な刑罰を「絶対に」禁止しています。


 今回は拷問の禁止についてです。


 拷問とは、犯罪の疑いがかけられた人や第三者に対して、警察官や
検察官などが、自白を得るために、暴行や脅迫,侮辱などのプレッシャーを
かけることです。
 拷問は、生命や身体や尊厳を侵害するだけではなく、その人の意思も
抑圧し、個人の尊厳を踏みにじります。


 歴史を振り返ると、様々な国家が犯罪の疑いをかけた人を拷問して
きました。
 戦前の日本では、捜査機関が思想や言論を理由に個人を逮捕などに
よって身体拘束し、拷問を行いました。作家の小林多喜二さんは当時の
特別高等警察の激しい拷問の末に、死亡しています。
 このような日本の戦時下の人権侵害の歴史を踏まえて、日本国憲法では、
単に「禁止する」と記載せずに、「絶対に禁止する」と規定しました。
ちなみに、憲法のなかで、「絶対に」という言葉があるのはここだけです。


 また、1984年に国連総会で採択された拷問禁止条約は、暴力などの
身体的な拷問だけでなく、脅迫などの精神的な拷問も禁止しています。


 「絶対に」禁止した日本国憲法の時代であっても、捜査機関が自白を
獲得するために取り調べで暴行や恫喝、プレッシャーを与えるという
ケースは、まだまだなくなりません。
 そして、強要された自白によって、未だに冤罪も生まれています。
 このような日本の状況に対して、国連の拷問禁止委員会は、日本政府
に対して、自白を生み出しやすい拘束状況や取り調べについて改善
するように勧告しています。


 自民党憲法草案では、なんと、拷問及び残虐な刑罰の禁止について
「絶対に」という言葉がありません。
 わざわざ、「絶対に」という言葉を、省いたのです。
 これは単なることばの意味にとどまらない重大な問題が潜んでいます。
拷問及び残虐な刑罰を認める例外があるという解釈が進められる危険
があるのです。


 近年、「テロとの戦い」のなかで、欧米諸国では「許される拷問」がある
のかということが議論になりました。

 拷問による人権侵害を起こさせないために、一件一件の刑事事件に
ついて拷問が行われていないかチェックし行われていたらしっかりと
それを指摘することが重要です。刑事弁護人の活動や裁判官はじめ
関係者によるチェックが機能することが重要ですが、市民一人一人が
関心を持ち拷問を許さないという姿勢を持つことや声をあげることが、
不断の努力として求められているのではないでしょうか。


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