2015年11月5日木曜日

夫婦は別姓を望んじゃいけないの-?ついに最高裁大法廷で弁論


 夫婦同姓を定める(夫婦はどちらかが姓を変え、同じ姓を
名乗らなければならない)民法750条が憲法違反であり、
女性差別撤廃条約に違反するとして、国に対し損害賠償を
求める裁判が最終盤を迎え、11月4日、最高裁の大法廷で
弁論が開かれました。

 いよいよ最高裁が、この民法750条が憲法違反且つ無効で
あると判断し、選択的夫婦別姓(夫婦が同姓にするか別姓に
するか選べる制度)が実現する可能性が高まってきました。

 結婚したら同姓にするか別姓のままか選べた方がいいよねー、
という話をしていたとき、結婚して夫の姓に変えた女友達に、
こう言われたことがあります。
「でも、そんなの望んでるの、一部の人でしょ?」

 そうかもしれませんね。

 でも現在の「結婚したら夫婦どちらかが配偶者の姓にしなければ
ならない制度(民法750条)」は、夫婦になっても別姓のままでいる
という選択肢を用意していません。
 夫婦になってもそれぞれの姓のままでいることを望む人たちから、
その選択をする権利を奪っているわけです。
 このまま、権利を奪っていていいのでしょうか?
 生まれたときから馴染んでいる自分の名前を結婚しても変えたく
ないと強く思っている人は、確実に、います。
 そして、「自分の名前のままで生きていきたい」という思いは、
「自分のままでいたい」という思いとも共通するものです。
 永年自分のものとして染みこんでいた氏を、結婚の際に変えな
ければならない苦痛を前に、大きな喪失感に襲われる人は決して
少なくありません。
 姓名を変えなければならない問題は、深刻なアイデンティティの
問題であり、憲法13条が保障する「尊厳ある個人として自分らしい
人生を歩むこと」を侵害するれっきとした人権問題です。
そしていまだに残る「女は嫁ぎ先の名字に変えるもんだ」という
無言の差別的圧力は憲法24条の精神と相容れず、
民法750条は、この差別的意識を温存させる装置として機能して
しまっているのです。


 結婚して相手の姓になることに喜びを感じる人の気持ちが
尊重されるのと同様に、結婚しても自分の名前のままでいたい
と思う人の気持ちも尊重される制度であるべきです。
実現が期待される「選択的」夫婦別姓は、夫婦同姓を望む人に
別姓を強制するものではありません(同姓になることも、別姓の
ままでいることも選べる制度です)。


 
 そんなに旧姓のまま生きていきたいなら、通称使用で十分
じゃないか…という声もあるようです。
 でも、戸籍上の氏名を使わなければならない場面はたっくさん
あります。
 海外旅行をする、銀行口座を作る、保育園の申込み、児童
手当などの公的な申請、クレジットカード、病院…。
 ちなみに私たち弁護士は、どんなに通常業務を旧姓(通称)で
行っていても、破産管財人や成年後見人など裁判所から依頼を
受ける事件では、戸籍上の氏名を使わなければなりません。
官僚時代は通称を使用していたのに、最高裁判事になった
途端に通称使用ができなくなった女性判事まで存在します。


 結局、この場面では通称でいいけれど、この場面では戸籍上
の名前でなければならない…という大きな負担を「別姓を望む人」
にかけてしまうわけで、通称使用では解消されません。

 実はこの選択的夫婦別姓という問題は、憲法の特性を非常に
よくあらわしている問題です。
それは、
「多数決によっても侵害されてはならない少数者の人権・尊厳を
守るのが憲法である」
 だから、国会の多数決でつくられた法律が憲法違反だった
場合には、最高裁判所が法律を無効にすることができるのです。

 残念ながら安倍政権の閣僚メンバーの多くが、「夫婦別姓は
家族の絆を弱め、崩壊させる」という“信念”から、こうした制度
改正に反対している(少なくとも、そういう思想団体に所属して
いる)ため、夫婦別姓の問題が憲法13条や24条に関わる人権
問題であるという認識がないようです。 国会で選択的夫婦別姓
が実現されそうにない今、夫婦別姓を望む人の権利を守ることが
できるのは、最高裁判所です。

 日本が“人権後進国”として永年国連から勧告を受けてきた、
この大きな人権問題について、最高裁がしっかり憲法違反であり
無効であると断じてくれることを祈ってやみません。


 夫婦別姓、最高裁で問う 原告「結婚境に自分の存在失う」 
結審、年内にも判決 (朝日新聞)
 http://www.asahi.com/articles/DA3S12051654.html


 再婚禁止期間訴訟:夫婦別姓も初判断へ 違憲訴訟、最高裁で
弁論 (毎日新聞)
 http://mainichi.jp/shimen/news/20151105ddm001040134000c.html


 「選択的夫婦別姓」「再婚禁止期間」年内にも最高裁憲法判断へ
 家族のあり方関わる民法規定、慎重論根強く (産経新聞)
http://www.sankei.com/affairs/news/151104/afr1511040024-n1.html