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2015年3月10日火曜日
「国民が権利ばかり主張して義務を…」とよくいわれるアレを考察っ☆
今日は、現政権のもとでの改憲に積極的な方々がよく使うフレーズ
「現行憲法のせいで、現代の国民は権利ばかり
主張して義務を果たさない/義務を軽視する」
について、少し考えてみます。
このフレーズは、いわゆる護憲派の方々を批判する時に、よく使われます。
今では、憲法が土台としている天賦人権や立憲主義といった価値観を再確
認して現行憲法の価値を学ぼうという人達にまで、こうした批判の矛先を
向けているようです。
自民党の改憲草案12条は「国民の責務」というタイトルで、その後半には
「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の
秩序に反してはならない。」と定めてあります。
片山さつき議員が過去に
「国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまう
ような天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方
です。国があなたに何をしてくれるか、ではなくて国を維持するには自分
に何ができるか、を皆が考えるような前文にしました!」(2012.12.7)
とツイートしたのをご存知の方は多いかと思います。
このように、「権利ばかり主張して義務を果たさない」という常套句は、
改憲を進めたい人達の、そういう国民を育てた現行憲法はケシカラン!
という怒りをよく表している…ように見受けられます。
あまり憲法に興味のない方がこれを聞くと、
「え、あぁ、…そうかもなぁ」
「そ、そうか、権利ばかり主張してもいけないのかな…よく分かんないけど」
と、ぼんやりと思うかもしれません。
で・す・が。
どうもよく分からないのです。
それって具体的にどういう人のこと言ってるの?という疑問がまず
湧きます。このフレーズを使って改憲を主張する人達は、どういう人達
のどういう行動をみて、「あの人達は権利ばかり主張して、●●の義務も
○○の義務も果たさない」と思ったのか、その根拠が分からない。
具体的におっしゃってくれないと、理解できませんね。
そして、もっと本質的な考察をすると、このフレーズは、ちょっと何か
基本的人権というものへの理解が十分ではないのではないか、と思う
のです。
日本国憲法(をはじめ近代民主主義国家の憲法)には、基本的人権が
定められています。
基本的人権とは、「人が産まれながらにして持っている権利」のことです。
尊厳ある個人としてこの世に産まれ、この世に生きている以上、誰からも
奪われることのない自由のことです。それは、あなたが、かけがえのない
唯一の存在としてあなたらしい人生を歩むために必要不可欠な自由です。
憲法には、信じたい宗教を信じる自由、なりたい職業を目指す自由、追究
したい学問に打ち込む自由など、そのリストが並んでいます。
基本的人権というものはこういうものなのです。
つまり、それに対応する義務などありません。
「人が産まれながらにして持っている権利」に対応する「人が産まれな
がらにして持っている義務」など、無いのです。
ちなみに、お金を借りた人は、返す義務を負います。商品を売った
人は、買った人に商品を引き渡す義務を負います。こういういわゆる
権利義務の関係というのは、基本的人権とは話が違う、民法上(私人
と私人)の権利義務の話です。
もしかしたら、「権利ばかり主張して義務を…」と語る方々は、基本的
人権と私法上の権利の概念を混同してしまっているのかな…(-_-;)?
とも思うのですが、どうなのでしょうか。
改めて片山さつき議員のツイートを読み返してみると「国民が権利は
天から付与される、義務は果たさなくていい」…やはり何か、人権とい
うものの性質が理解されていないのかナンなのか、謎が深まります。
改憲を強く主張しておられるからには、憲法への造詣もそれなりに
深いはずです。ぜひ、具体例をまじえながら、詳しく見解をお聞きしたい
ところです。
というわけで、自民党改憲草案12条の「自由及び権利には責任及び
義務が伴うことを自覚し…」という規定は、謎に満ちています。
憲法や人権について学んだ人には書けない条文です。
また、現行憲法のせいで国民が「権利ばかり主張して義務を果たさ
ない」んだ、という批判も、なんだか理論的におかしいのです。
要は、キャッチーだけど抽象的な、実は何を言ってるのかよく分から
ない主張です。
憲法を変えるのかどうかは、こういう主張になんとなく流されるのでは
なくて、きちんと理論的に、丁寧な議論をして憲法への理解を深めてい
きながら進めるべきなのではないかな~なと思います。
* 現行憲法が規定する「国民の義務」の意味については過去の記事
をどうぞっ!ρ(^^ )ノ
http://www.asuno-jiyuu.com/2014/05/blog-post_8.html