2015年1月28日水曜日

自衛隊が在外邦人を救う?~テロ事件と9条をめぐる論点整理~

痛ましい事件が起こってしまいました。
囚われた皆様の一日も早い解放をお祈り申し上げます。

ところで、安倍首相は、1月25日、NHKの日曜討論で、集団的自衛権について話を振られた際に、切れ目のない安全保障体制を構築するために、海外で邦人に危害が及んだ場合に自衛隊を派遣できるような法律の整備を進めると言っていました。

<人質事件は集団的自衛権とは無関係です>

この安倍首相の発言をとらえて、人質事件をてこに集団的自衛権の容認を進めようとしているのではないかという論調もあります。...
ただ、実際の安倍首相の発言を聞いてみると、邦人救出のために自衛隊を派遣するということを、集団的自衛権として進めようとしているというよりは、切れ目のない安全保障体制の一環として、自衛権に至らない段階に自衛隊を活用できるような法整備をしようとしているということが言いたかったのかなと受け止めました。
国家が「実力の行使」をする場面は、個別的自衛権や集団的自衛権に限られるものではありませんからね。

人質事件は、他国が日本や親しい国に対して攻撃をしてきた場面ではないので、集団的自衛権とは関係ありません。
ですから、もし、この事件を引き合いに集団的自衛権の範囲を広げるようなことがあれば、それは違うということになります。そのような議論がされないように注目していかなければなりません。

<警察的活動であれば自衛隊を派遣してもいい?>

政府も、人質救出は武力行使ではなく、警察的活動だと考えているようです。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0KW0RZ20150123
ただ、「警察権の行使」といっても武力行使につながりかねないので、自衛隊が海外で人質救出にあたることはしてきませんでした。憲法9条からしたら、当然なされるべき配慮ですよね。

武力行使になることが絶対にないような法整備ができ、人質事件の起こった国との協力関係のもとに、自衛隊の能力で救出できるなら、それに越したことはないかもしれません。
しかし、武力行使をすることができる実力部隊を海外に派遣しておいて、武力行使になることがないような法整備なんて、実際できるんでしょうか。自国民の救出を名目に軍隊を他国に派遣して、そのまま軍事紛争になってしまった例はいくらでもあります。
当然のことながら、自衛隊の方の犠牲も十分にありえます。
そもそも自衛隊を派遣すれば救出できると考えるのは楽観的すぎるように思えます。アメリカですら救出できていないんですよ。
おまけに、イスラム国に対して自衛隊が実力を行使した時には、日本がイスラム国と敵対関係にあることが誰の目にも明らかになりますから、さらにテロを誘発してしまう恐れもあります。

<どさくさまぎれに自衛隊を海外に派遣するなんてことは…>

このように、海外に自衛隊を派遣するということは、他の国と武力衝突を起こして戦争に発展してしまう危険性を伴ったものです。
日本がこれまで維持してきた「平和主義」と相いれるのか、大きな疑問があります。
自衛隊を派遣できる法整備を進めることありきではなくて、慎重な議論が必要です。