2014年3月26日水曜日

「内閣広報室にも取材してくれというのは、権力がメディアに介入し、圧力をかけたと思われても仕方ないので今後は絶対にやめてくださいね」アピール


 「内閣広報室にも取材してくれというのは、 
 権力がメディアに介入し、圧力をかけたと
 思われても仕方ないので今後は絶対に
                  やめてくださいね」
                           アピール




  女性向けファッション雑誌VERY(光文社)が、今年2月発売の雑誌で憲法改正や特定秘密保護法についての特集を組んだところ、その発売前である昨年12月に、内閣広報室の職員が「うちも取材してくれませんか」と電話で依頼していたことがわかりました。報道によると、その意図について、内閣広報室は、「正確な情報を知って欲しいと思った」と説明しています。


  首相を直接補佐する組織の一つである内閣広報室から、雑誌が発売される1か月以上も前の時点で、記事に政府見解も載せて欲しいと直接連絡を受けたら、出版社がどう思うか想像してみましょう。


  まず、雑誌の発売日前の時点で企画に注文をつけてくるということは、企画段階から出版社の行動が政府にいつも監視されているのでは、と思っても仕方ありませんよね。実際、VERY編集部は「発売前なのになぜ知っているのか不気味だった」とコメントしています。


  また、記事の内容を編集することが可能な時期にこのような連絡があったとすれば、出版社としては、「政府も取材して政府の意見も記事にしなければならない」かのような不安を抱いてしまうかもしれません。「正確な情報を知らせる」という名目の下、政府の主張を記載させることで記事の内容をコントロールしたいという思惑があると感じずにはいられません。


  権力のいかなる介入も受けずに、書きたいことを書き、報道したいことを報道し、伝えたいことを伝える。そうした情報発信を通じて様々な意見に触れることができること、それは、国民一人ひとりがものを考え、議論し、新たに発信するためには欠かせないものです。そうして様々な角度から議論することで、より優れた意見が残っていくというのが民主主義の仕組みです。


  ところが、政府への疑問をそのまま書くことが許されず、自由な情報発信ができなくなってしまえば、その社会で民主主義は成り立たなくなってしまいます。だからこそ、言論(表現)の自由は徹底して保障されなければならない。とりわけ権力の介入など決してあってはならないのです。


  権力が、ある雑誌の編集部に対し、雑誌の発売日前に、雑誌の内容が政府の考えとは違うことを暗に示し、政府の見解も盛り込むように促す。これは、メディアの萎縮を招きます。今回、内閣広報室がこのような取材依頼をしたことは、光文社のみならずメディア全体へ「記事の内容をあらかじめ監視しているのか」「この国の権力は、書きたいように書かせてはくれないのか」「政府におうかがいを立てずに書いてはいけないのか」と思わせた恐れがあります。だから、今回内閣広報室がやったことは、政府がメディアの取材・編集の自由に介入し、圧力をかけたと思われても仕方ないことなのです。


  以上のとおりですから、内閣広報室は、今回の行為を十分反省して、今回のようなことが二度と起こらないようにしてください。表現の自由が確保された、民主主義国家というにふさわしい国にしていきましょう。 

                       

2014年3月26日
明日の自由を守る若手弁護士の会
      共同代表 神保大地
      共同代表 黒澤いつき