2018年3月8日木曜日

緊急事態条項=政権与党の独裁のスイッチ!



 自民党内で、改憲草案のとりまとめが進んでいます。
 3月7日には、戦争や大規模災害時の緊急事態条項を創設する案
について、一定の方針が決まりました。

●緊急時、内閣に権限集中=私権制限は見送り―自民改憲本部(時事)
 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180307-00000143-jij-pol


 2012年4月に発表された自民党の改憲草案では、
・戦争や大規模災害の際に内閣が「緊急事態宣言」を発する(98条)と、
・内閣が法律と同等の力を持つ政令を定めることができ(99条1項)、
・国会はそれについて事前のブレーキをかけることはできず(99条2項)、
・国民は定められた政令への服従義務を負い(99条3項)、
・政府のとる措置により人権が制約される可能性もありうるとされ
                           (99条3項)、
・緊急事態宣言が解除されないかぎりは選挙は先延ばしにできて
 衆議院議員はずっと議員でいられる(99条4項)、

 …という内容です。
 三権分立と人権保障という、憲法の根幹の体制が、内閣の一存で一時
停止する「憲法の自爆装置」ともいえる規定です。
 こうしたいわゆる「国家緊急権」は、権力による濫用が諸外国の例を
見ても大きく、国民の人権保障や立憲主義の観点からは危険すぎるもの
です。
 ナチスはこの国家緊急権の濫用によって「合法的」に独裁体制を築く
ことに成功しました。大日本帝国憲法下にもありました(緊急勅令、戒厳
大権など)。日本国憲法制定時にも、国家緊急権の創設について議論が
されましたが、政府は「濫用の危険があるし、不要である」と答弁して、
設けなかったという経緯もあります。満州事変や関東大震災の際に国家
緊急権は発令されたけれども、そんなのがなくても乗り越えられたはず
だ、と。


 今回、自民党は批判が強い人権制限の明記は見送ったものの、「内閣が
法律と同等の力を持つ政令を定めたり、財政支出や処分をすることができ
る」「衆参各院定数の3分の2以上の賛成多数で議員の任期や選挙期日を
延期できる」と規定するそうです。

 人権制限の明記がなければ安心…?

 いいえ、まったく安心できません。

 内閣が法律と同レベルの力を持つ政令を定めることができるということ
は、政治の場から野党を追い出して、政権与党による独裁が可能になる、
ということです。
 政権の提案する法案について野党が人権保障の点から批判したり質問し
たりして修正を迫るのが国会の役割です。内閣(与党)の一存で法律のよ
うなものが作れるシステムになれば、それがどんなに人権を侵していよう
が、誰もブレーキをかけることはできないのです。そして与党が多数の議
席を占めていれば、望む限り永遠に議員の任期を延長して選挙を先延ばし
し、与党は権力を握り続けることができる。まさしく憲法の自爆装置です。

 災害に対応する綿密な法整備はすでに出来上がっています。災害対応に
必要なのは事前の備えと訓練であり、独裁ではありません。


 2012年の改憲草案と、危険性は特に変わらない緊急事態条項。
 たくさんの批判にあって、もういいかげんに「危険すぎるからやめてお
こう」と理解してくれたのかなと思いきや…なにも学んでくれていないよ
うです。
 
 緊急事態条項の怖さについては、いくらでも語れますので、ぜひ憲法
カフェに参加したり、憲法カフェを企画してください☆
 (憲法カフェのご依頼方法→ www.asuno-jiyuu.com/p/blog-page_15.html)