2018年3月23日金曜日

自民党の9条改憲案が一応まとまったところで(上)


 安倍首相はなぜ改憲したいのでしょうか。
 憲法カフェや講演をしていると、しばしばこの質問が出ます。

 首相が、本音をちゃんと表立って語らないので、こういう疑問がわく
のでしょう。
 たしかに、首相の発言「だけ」を追うと、混乱してしまいます。


 首相は昨年11月、自衛隊を憲法に明記しても「自衛隊の任務や権限に
変更が生じることはないと考えている」と国会で答弁しました。

 「…なら改憲してなんの意味があるの」と思うところですが、首相は
なんと、自衛隊を憲法に書き込む必要がある理由として、自衛隊を違憲だ
と主張する憲法学者の存在を挙げます。そのせいで、自衛隊の位置づけが
とても不安定なため、その議論に終止符を打つ必要があるんだ、と。

 そして「あなたたち(自衛隊)は違憲だけれども、命をかけてこの任務
に当たってくれということは、これはあり得ない」とも述べました。


 憲法学者の存在をそんなに脅威に感じるなら、なぜ(極めて例外的な
数名を除く)圧倒的多数の憲法学者が「集団的自衛権の行使容認は憲法
9条に違反している」という批判をあんなにまで鮮やかに無視して安保
法制を作ったのでしょう。
 都合のいい時だけ憲法学者を持ち出すのはやめてほしいなと思います。


 それに、政府は今まで確信をもって「自衛隊はあくまでも自衛のための
必要最小限度の実力組織であり戦力ではない。」という解釈を積み重ねて
安全保障政策を展開してきました。それは安倍政権下でもそうですし、
「自衛隊が合憲であることは明確な一貫した政府の立場だ。国民投票で、
たとえ否定されても変わらない」とまで述べています。
 この自信!
 こんなにまで自信をもって「なにがあっても自衛隊は合憲だ」というなら、
じゃああの「一部の憲法学者が違憲だと言ってて自衛隊の位置づけが不安定」
云々…ってなんだったのでしょう。
 迷走というか…錯乱といってもいいかもしれません。
 「あなたたち(自衛隊)は違憲だけれども、命をかけてこの任務に当た
ってくれということは、これはあり得ない」という発言も…かなりアレで
すね。自衛隊はなにがあっても合憲だと確信してるならこんな言葉を自衛
隊にかけるシチュエーションなど未来永劫ないでしょうに…。

                           (続く)