2013年10月18日金曜日

柳澤協二氏の講演会



昨日(17日)、衆議院第2議員会館にて、
「集団的自衛権行使に反対する連続講演会」
(立憲フォーラム主催・イラク戦争を検証するネットワーク賛同)
第1回が開催されました。

 講師は柳澤協二氏(国際地政学研究会理事長・元防衛官僚)。
 小泉・第一次安倍・福田・麻生の4代の内閣で内閣官房副長官
補を務めていました。
 集団的自衛権を行使して具体的に何をしたいのか、それが
日本にとってどれだけ国益に叶うのか、というリアリズムをもった
語り口は、非常に分かりやすいし納得しやすいものだと感じました。
解釈改憲への暴走を食い止めるために世論を高めたい(そして一
日も猶予が無い切迫した)今、「戦争を許さない」という理念を語る
のみならず、こういう現実的な(損得勘定に訴えるといってもいい)
切り口で世論に訴えることも非常に有益なのではないでしょうか。

 以下、講演のポイントです。


* * * *

 
1 具体的なニーズ(立法事実)は何か
  第一次安倍内閣の時から、集団的自衛権の行使容認の
ニーズは示されていない。冷戦が終わり、自衛隊が海外で
何をすべきかを考える際に憲法は確実に基盤だった。憲法
がなければ的確な判断は出せなかった。
 集団的自衛権の行使を容認した上で具体的に何をしたいのか?
それは日本にとって本当にいいことなのか、というのが手順
のはず。その手順が全く踏まれていない。
 安倍政権は従来の解釈ではできない蓋然性の低い重箱の
隅をつつくような事例を無理矢理提示しているが、そのために
国のあり方を変える必要性・合理性があるのか。安倍政権が
持ち出す事例は全てオルタナティブがある(個別的自衛権の
行使で足りる)。
 当然、集団的自衛権が無いからできないことはいろいろある。
しかし、できないから国益を損なっていることなど無い。

2 アメリカ政府から集団的自衛権の行使容認の要請は
(小泉~麻生4政権の間)一切無かった。   
  これが実務をやってきた者の実感。アメリカからの要請が
無いのに、なぜ「集団的自衛権の行使を容認しなければ日米
安保が崩壊する」などと主張するのか?
 ガイドライン見直し(97年)からイラク特措法まで、アメリカは
日本の協力を評価した。ブッシュ政権末期、アメリカは対テロ
作戦の中心をイラクからアフガニスタンに移した際、日本にも
協力を要請したことがある。しかしそれは無理な話なので断った。
オバマ政権になって、対テロ戦争から撤退し、そのような要請も
一切なくなった。


3 北朝鮮の核保有・尖閣はいずれも日本有事であり集団的
自衛権は無関係。
  誰のための集団的自衛権なのか…容認論者が北朝鮮とか
尖閣とか持ち出す。確かに尖閣は第一次安倍政権では生じて
いなかった事態ではある。しかし、アメリカはこれらは安保5条
の適用事案(すなわち個別的自衛権の話)だという。集団的
自衛権の出てくる話などではない、典型的な日本有事のケース
であるとすでに結論済み。
  尖閣を日本の自衛隊だけでは守れないわけがない。毎年
5兆円の予算をもらっておきながら!
 現政権のやり方は、理論的に無関係な話を持ち出して国民の
恐怖心をあおる、つまりポピュリズムの手法である。クラウゼ
ヴィッツがいう戦争の三位一体は、国民の憎悪、軍隊の能力・
創造力、政府の理性。つまり国民の憎悪をあおらないと戦争は
できないし、政府が国民のナショナリズムをあおることは絶対に
やってはならないこと。


4 中国の台頭によるパワー・シフトは最大の課題だが、「静かな
抑止」と「紛争解決の共通ルール作り」が必要。
 中国はすでにGDPにおいて日本を抜き、戦闘機も大量に保有
するし2009年くらいから大国としてきちんと主張する外交姿勢に
転換。しかし、それに対抗するために軍事力?
 主権の問題は永遠に続く国のアイデンティティの問題であり、
解決手段として戦争は選択肢には無い。脅威をあおるのは最悪
のポピュリズム。そんなことをしたらお互い損だ、という理性への
訴えかけを第一義的に置くべき。
 

5 国際貢献は必要だが、「一発の弾も打たなかった」イラクの
教訓を生かすべき。