2013年5月7日火曜日

自民党改憲草案の前文ってどんな内容?

1.国民が基本的人権を尊重?

自民党草案の前文は、「日本国民はこうあるべき」という理想像をいくつか示しています。
そのうちの一つが、
「日本国民は、基本的人権を尊重する」、というものです(前文第3段落)。

あれ?
ちょっと不思議に思いませんか?

 このページで何度かご紹介してきたように、
憲法は、国家権力が国民の権利と自由を侵害しないように、権力を縛るためのものです。

すなわち、憲法において、国民の権利と自由を保障する義務を負うのは、第一義的には、国です。

にもかかわらず、自民党草案の前文には、
国が基本的人権を尊重するということは記載されておらず、
国民が基本的人権を尊重する、と書かれているのです。
 


 2.日本国民とはこうあるべき?

そのほかにも、「日本国民はこうあるべき」という理想像が、数多く示されています。

「国と郷土を誇りと気概をもって自ら守る」
「和を尊ぶ」
「家族や社会全体が互いに助け合う」
「自由と規律を重んじる」
「美しい国土と自然環境を守る」
などなど…

自民党改憲草案の前文では、全体として、「歴史」と「伝統」、「固有の文化」がとても強調されています。
私は、国が、歴史や伝統を重んじることが悪いことだとは思いません。
しかし、それと、国が国民の「あるべき理想像」を示すこととは、全く違う話です。

たとえば戦争のような事態になったときに、「国と郷土を誇りと気概をもって自ら守る」ことが国民の義務とされたら…?


 3.何のために憲法を制定するの?

繰り返しになりますが、立憲主義の考え方からすすると、憲法を制定するのは、「国民の権利と自由を保障するため、権力を縛る」ことが目的だということになります。

これに対し、自民党草案では、
「良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため」
とされています。

憲法を制定する目的も、国民のためではなく、国家のため、とされているのです。


 4.憲法の「主人公」は?

では最後に、前文のいちばん最初の文章を見てください。
日本国憲法は、「日本国民は」で書き始めています。
これに対し、自民党改憲草案は、どうなっているでしょうか。

書き出しは、「日本国は」です。

このことからも、自民党改憲草案における、「改憲の主役」はだれなのか、よくわかるのではないでしょうか。



◆自民党憲法改正草案はこちら
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
「前文」は、目次の次、第1条の前(上記のページでは2ページ目)に書かれている文章です。憲法の目的や精神、憲法制定の由来や憲法制定者の決意などが書かれるものです。