安倍首相が今年の初めに「まずは緊急事態条項から」と
語った憲法改正。たしかに、自民党改憲草案に示されている
緊急事態条項はヤバイ!
でも、本当の狙いはそこではなかった。
東日本大震災のときには、岩手県宮古市で、災害のプロ
フェッショナルとして活躍し、現在は沖縄県高江で日々
身体をはって闘っている小口幸人弁護士が、緊急事態条項の
危険性そして安倍政権の狙いを語りました。
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Ⅰ 緊急事態条項
1 災害専門弁護士たちは分かっていた
2015年7月、つい本音をしゃべっちゃう正直な自民党保岡
衆院憲法審査会長(当時)は、大災害やテロ発生時の対応のために、
緊急事態条項の創設を初回の憲法改正でと意欲を示した。
2015年5月7日衆議院憲法審査会では、自民、民主、維新、
公明がすべて緊急事態条項の検討について前向き。
災害専門弁護士たちは、これはヤバイ(災害を改憲の口実に
されてしまう!)と思い、取り組み始めた。
2 自民党改憲草案の緊急事態条項はどうヤバイのか?
色々ヤバイけれど、主には、ドイツ・ナチスの全権委任法の
ように、人権をまもるためにせっかく3つに分けた権力を、
一つにまとめてしまうようなものということ。
3 日本国憲法にはなんで緊急事態条項がないの?
敗戦後、新しい憲法を作る際、帝国議会で金森憲法担当国務大臣は、
「緊急勅令や財政上の処分は行政当局者にとっては、とても便利だ
けれど、差支えがなければ「ない方が望ましい」し、過去何十年
困ったことはない」
と述べた。これは、今の政治家ではなく、終戦直後の政治家の発言。
つまり彼の言う「過去何十年」には何度も戦争や大災害があったけど、
それでも困らなかったと言っているのだ。こういう議論を経て
(ナチスが大失敗した直後だからこそ!)、緊急事態条項は、新憲法
にあえて入れなかった。
4 災害時には全然要らない
災害先進国日本は、災害関連法がしっかり整備されている。
東日本大震災でも3月中成立させた震災関連法は2つだけ
(すでにきめ細やかに整備されていたから)。
政府も「課題対応は法律改正等で対応」と総括した。
被災地の首長たちも「災害時にはむしろ現場に権限を降ろすべき」と。
5 “アンカリング”に過ぎない!?
安倍政権は、「復古調の草案」は、一旦棚上げにすると言い出した。
これは、安倍首相の常套手段。まず最初にありえないヤバイものを
提示して、その後撤回の上、もうちょっと穏当な案を出して、納得を
得ようとする。これがアンカリングというやり方。
Ⅱ 穏当な案=任期延長が本丸
2016年になって、緊急事態条項中の「国会議員の任期延長」
は与野党合意できる様相になってきた。
衆議院が解散されている間に非常事態が起きて、国会を動かさな
ければならなくなった際には、憲法54条2項に参議院の緊急
集会の規定がある。しかし、衆議院議員が「任期満了」で閉会し、
選挙だ~…というタイミングで非常事態が起きた時には、国会は
どうなるんだ!?困るではないか!これは不備だ!…という主張
である。とにかくなんでもいいから憲法「改正」がしたくて、
野党も賛成してくれそうな箇所を見つけて、喜んだ、というわけ
である。
しかし、これは本当に「小さな話」。
衆議院議員が4年の任期を満了して選挙になったことは、戦後
1回しか存在しないのである(あとは全て「解散総選挙」)。
通常、「もう少しで任期満了だーーー」というタイミングで解散
されるのである。
つまり選挙は、任期満了前に行われるのだから、選挙後任期満了
時に解散すればいいじゃない。解決。しかも、憲法学者はほと
んど、憲法54条2項がいう「解散」には「任期満了時」も含ま
れる、として、解釈で乗り越えられる(任期満了時にも54条2
項の制度が使えるから問題ない)と考えている。
そもそも、災害には任期延長したって意味ないのである。
議員がいなくなっても大臣がいるし、緊急時に大勢で議論できない。
本当に「非常事態に備えて国会議員の任期を延長できるように」
って必要なことなのか考えてもらいたい。
それより、選挙制度の見直しが大事なのでは?
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もっとまとまったものを読んで学びたい、そこのアナタへ!
小口弁護士が語る、この記事をぜひ(^^)/
『「お試し改憲」ではすまされない!?危険で不必要な「国会議員の任期延長」』