2025年9月25日木曜日

埼玉弁護士会「クルド人に対するヘイトスピーチに断固抗議し、ヘイトスピーチや民族を理由とする誹謗中傷の根絶を求める会長声明」


 先月出た、埼玉弁護士会の会長声明をご紹介します。
 在日クルド人たちがあたかも危険な存在かのように印象づけようとする
ヘイトスピーチが散見されますが、いかに実態と乖離しているか、丁寧に
説明されています。
 デマにまどわされず、差別に加担しないよう、お互い学び続けましょう。




埼玉弁護士会
<クルド人に対するヘイトスピーチに断固抗議し、
   ヘイトスピーチや民族を理由とする誹謗中傷の
                 を求める会長声明>


<一部引用>
 クルド人に対するヘイトスピーチは、主に街宣活動によるものとインター
ネット上での投稿によるものが存在している。街宣活動の様子を撮影した動画を
インターネット上で拡散することにより、インターネット上での新たなヘイト
スピーチを発生させるなど、街宣活動とインターネット上で投稿が相乗的に
ヘイトスピーチを増大させている。 

 これらのヘイトスピーチでは、「偽装難民」や「不法滞在」といった表現が
散見される。確かに、日本でクルド人が難民と認定された例は極めて少ない。
しかし、他国では難民として認定されている事例も多い。全国難民弁護団連絡
会議がまとめた統計では、日本以外のG7参加国やオーストラリアでは、難民
として認められるトルコ出身者は数多く存在し、例えば、2021年(令和3年)
に難民として認定されたトルコ出身者は、アメリカでは1161人(認定率約
77%)、イギリスでは500人(認定率約66%)となっている。
これに対して、日本では毎年何百件も申請があるにもかかわらず、認定された
のは何年間もの間にわずか1人である。そもそも、日本の難民認定率は他国に
比べて著しく低く、特にクルド人に対する難民認定率は0%に近い。
 このように、クルド人に難民認定者が著しく少ないのは、クルド人の難民
申請者には難民に該当しない者が多いからではなく、そもそも難民認定率が
諸外国に比して著しく低い日本の難民認定制度自体に問題があるからである。

 日本に滞在するクルド人は在留資格を有して適法に滞在している者も多い。
2023年(令和5年)の入管法改定以降でも、同年8月、当時の法務大臣が、
日本で生まれ育ったが在留資格のない子どもなどを対象に日本社会との結び
付きを検討した上で在留特別許可をする方針を示し、これによって、在留
特別許可(在留資格)を得たクルド人の子どもやその家族も存在する。

 このように、実態は「偽装難民」や「不法滞在」ではない者が多数存在する
にもかかわらず、このような言葉を用いて包括的にクルド人の排斥を訴える
ヘイトスピーチが行われている。クルド人に対する偏った情報やクルド人の
背景事情の不十分な理解によるものもあるだろうが、あえて意図的に行われて
いるヘイトスピーチも多い。さらに、インターネットで誤った情報、偏った
情報が拡散されることで、これらの情報を信じて、その情報を拡散したり、
川口市などに対して抗議の電話をかけたりするなどの行動に出てしまって
いる人々もいるものと思われる。
<引用終わり>