2017年7月10日月曜日

やや日めくり憲法 79条<最高裁判所の裁判官>



 
日本国憲法 79条
1 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の

 定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、
 その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを
 任命する。

2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後

 初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の
 審査に付し、その後十年を経過した後初めて
 行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、
 その後も同様とする。

3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の
 罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に
 達したときに退官する。
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の
 報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額する
 ことができない。


 いやはや…長い条文ですね~><


 79条は、最高裁判所の裁判官について書かれています。
 最高裁判所は、司法権の最高国家機関です。
 「権力をしばる」「権力が暴走するのを防ぐ」という立憲主義の観点から、
司法権が他の権限から独立していることは、とても大切です(日めくり76条
参照)。


 一方で、日本では、国民主権、つまり「私たちが主役」ですから、司法権にも、
国民のコントロールが及ぶようになっていることも大切です。
 79条の1項から4項は、国民のコントロールが意図された条文です。
 1項は、最高裁判所長官以外の、最高裁の裁判官は、「内閣でこれを任命
する」となっているので、国民のコントロールとは関係ないようにも見えます。
 しかし、日本国憲法は、内閣総理大臣を、選挙で選ばれた国会議員の中から
選ぶとしており、間接的に、民意を行政に反映させようとしています(日めくり
67条参照)。このような内閣が任命権を持つことで、国民の司法に対するコン
トロールを図ろうとしている、ということです。


 ですから、79条1項があるからといって、内閣が、自分たちに都合のいい
判決を出しそうな裁判官を、自分勝手に選んでいい、というわけではないこと
に注意が必要です。


 そして2項では最高裁判事の「国民審査」

 最高裁の裁判官を、適任かどうか国民が審判を下せるとても
貴重な機会です。
 最高裁の裁判官として「この人はふさわしくない!」と
思ったら、バツ印×をつける、という方法。
 なかなか関心を持ってもらえないのがとても残念ですが、
 許されない人権侵害な法律を違憲で無効だ!と争う裁判や、
 どう考えても無実なのに警察や検察の違法な捜査で起訴され
ている裁判など、
 国民の人権が問題になる裁判は、多くが最高裁まで争われます。
 その時に、最高裁が的確に違憲判決を出しているか、警察・検察
の違法捜査をきちんと「違法」だと判断しているか、15人それぞれ
の意見も示されるのでしっかりチェックできます。
 多数決で合憲判決が出たけれども私はこの法律は違憲だと考える、
という意見を出している裁判官は誰か、
 人権保障の視点から厳しく判断しているのは誰か、判断していない
のは誰か、
 司法のトップが憲法や人権の理念を堅持しているかどうか、実は
国民が「国民審査」でコントロールできる機会がある、ということを
ぜひ知っておいてください。

 5項では、最高裁判所裁判官の定年制が定められています(現在の法律では、
70歳が定年です)。
 6項には、定期的に相当額の報酬を受けることと、この報酬が減額されない
ことが書かれています。


 日めくり憲法76条の回に書いたように、「裁判所」だけでなく、一人ひと
りの「裁判官」の独立も保障されます。裁判官は、公平でなければならず、
内閣や他の裁判官などの意向を「忖度」してはなりません。
 79条6項は、裁判官の身分を収入面から保障することで、裁判官の職権の
独立を強化しています。
 この点について、自民党改憲草案は、
「この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による
場合を除き、減額できない。」
 としており、報酬の減額の余地を認めています。
 これは、裁判官の職権の独立性を強化するという趣旨を弱めるものですので、

裁判官が内閣の意向を「忖度」して、公正な判決を出しにくくなってしまわな
いか、心配です。