2025年11月18日火曜日

「存立危機事態」ってなんだっけ 基本知識のおさらい





 高市首相の発言が発端で…大変な状況になっていますね…。

 そもそも「存立危機事態」ってなんでしょう?
 それを説明するにはまず、日本国憲法9条と「集団的自衛権の行使」の話
から始めなければなりません。決して難解ではないので、お付き合いください📣
自分の生活と人生を守るために、基本知識を📖



1.憲法9条
 日本国憲法9条は、戦争放棄・戦力不保持を宣言しています。 
 どんなに国家権力が戦争したくてもできないようにしている、歯止めです。
この9条の下、「専守防衛」「非核三原則」「武器輸出禁止」などの防衛戦略
がとられてきました。




2.個別的自衛権  日本が他国から攻撃された場合、日本政府は国民の生命・人権を守るために
必要最小限度の防衛の措置をとることができます。
攻撃されたから防御する…正当防衛のようなもので「自衛権」という言葉から
想像しやすいものです。9条が許す「自衛」はこれだけ、というのが従来の
政府解釈。



3.集団的自衛権
 それに対し集団的自衛権とは、日本は攻撃されていないけれど同盟国が
A国から攻撃された時、同盟国の自衛(A国との戦争)に参加する、という
ものです。同盟国の軍事行動に参加…💧憲法9条の下、集団的自衛権の行使
は許されない、と日本政府も長年考えてきました。




4.安保法制
 ところが政府(第2次安倍政権)は、憲法9条の下でも集団的自衛権の
行使は許される!という衝撃的な憲法解釈の変更を閣議決定し、その上で
安保法制を強行成立させました。
 安保法制の下では、日本に対する攻撃がない場合でも、「存立危機事態」
になったなら、集団的自衛権の行使(同盟国の戦争に参加すること)が
できる、というものです。


5.存立危機事態
 「存立危機事態」というのは、
 日本が攻撃されていなくても「日本と密接な関係にある国が攻撃された
ことで「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が
根底から覆される明白な危険がある事態」、のことです。
「存立危機事態」になったなら、集団的自衛権の行使が許される、と。


6.台湾有事
 なぜ高市首相は、台湾と中国との武力衝突が日本の「存立危機事態」に
なり、自衛隊が軍事行動に乗り出す可能性があると言ったのでしょう?
 首相は①海上封鎖のために中国軍が武力を行使②米軍が海上封鎖を解く
ために来援③それを防ごうと武力行使が発生、という想定を挙げました。https://mainichi.jp/articles/20251112/k00/00m/010/176000c


7.高市発言の軽率さ
 しかし①~③を想定したとして、それがなぜ日本の「存立危機事態」に
あたるといえるのか、綿密な論理づけは示されませんでした。同盟国である
米軍が軍事介入するなら、日本も参戦するに決まってる💨という結論ありき
の雑な発想なら、一国の首相としてあまりにも軽率です。


8.高市発言は中国を刺激
 これまで政府は「台湾有事は存立危機事態」などとは公式には示して
きませんでした。たとえそういう想定をしていたとしても、台湾有事に
日本が参戦も辞さないなどと意思を示せば、中国を挑発してしまい、
日中の軍事的緊張を高めてしまうからです。


9.中国が日本に対し、高市発言を「内政干渉」だとして猛抗議しています。
歴代首相も、軍事的緊張を高めないよう、あえて、意図的に、そのような発言
をしてこなかったことを考えれば、不用意な発言で深刻な危機を招いた高市
首相の責任は重大です。


10.高市首相は中国に勇ましいことを言って鬱憤を晴らしてくれた、と
喜ぶべき局面でしょうか?
 日中関係が悪化して、例えば中国からの食糧はじめ様々な輸入が止まったり
旅行者が減ったりすることが、どれだけ日本経済と国民の衣食住に大打撃を
与えるか、想像してみて下さい。首相の舌禍の責任は重大です。


11.と同時に、私たちは改めて、安保法制が憲法違反の存在であることに
立ち返るべきではないでしょうか。高市首相の雑な発言から、日本政府の
恣意的な判断で「存立危機事態」の認定ができてしまえる危うさを思わずに
はいられません。参戦すれば、ミサイルが落ちるのは私たちの住む街であり、
殺されるのは私たちです。


<あすわかX>