2020年10月30日金曜日

百地教授に「首相の任命権 自由裁量ある」と語らせるNHK


 あろうことか、公共放送が。。。

 「憲法が専門の百地章国士舘大学特任教授は、『総理大臣の任命権は、

ある程度の自由裁量はある』などと述べ、政府の対応に理解を示しまし

た。」

 と報じています…


● 【学術会議】憲法専門の百地氏「首相の任命権 自由裁量ある」 (NHK)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201029/k10012687281000.html




 百地特任教授

「私は結論的には任命拒否はあり得ると考えている。菅総理大臣は

いろいろなバランスとか総合的に考えたと言っており、総理大臣の

任命権は、学術会議の推薦に拘束されるものではなく、ある程度の

自由裁量はある。法律の解釈は変わらない。運用で少し変化が出た

と私は理解している」

「学術会議そのものにも問題があるようだと考える人たちも増えて

いる。本来のあり方に持っていこうということで、改革の動きが

出てきているのは当然ではないか」


 数あまたの学術団体・法律家団体から、日本学術会議への政府の人事

介入は違法・違憲だと猛批判が相次いでいます。

無論、数が問題ではありませんが、常識と「論理でものを考える」姿勢と、

基本的な法解釈の腕さえあれば、どう逆立ちしても違法であり違憲だから

こそ、声をそろえて抗議声明が次々に出てくるわけです。

 賛否両論になる問題では、ないのです。


 なのに、

 NHKが選んで語らせたのは、(立憲主義や人権保障を否定する改憲を

目指す日本会議と極めて“懇意”な)、学問の自由の意味すら理解できて

いない「特殊な」学者。。。

 すべて「首相の自由裁量」でOKにする粗雑な理屈。「運用で少し変化

が出た」だけだと問題をきわめて矮小化するセンス…。


 繰り返しになりますが、もう一度確認のために書きます。

 学問の自由(憲法23条)は、単なる「研究者の研究する自由」には

とどまりません。世界の真理を探究する研究者たちが切磋琢磨し合う

コミュニティの活動に政治権力は口出ししてはいけない(自律性を確保

する)、という制度そのものを保障した条文です。難しい言葉でいうと

「大学の自治」といいます🖊

 個々の研究や発表の自由は、思想信条の自由(19条)や表現の自由

(21条)でも保障されています。

 その上で、さらに23条は、研究者たちが批判・検証し合い「知」を

蓄積していくプロセスそのものが、文化や科学の発展あるいは国民の福祉

にとってとても大事だから、そのプロセスの自律性を保障しているのです。

決して、政治が「その研究はムダ/この学者は有能」と介入してはいけ

ません。

 当然、日本学術会議も学問コミュニティの1つで、23条で自律性が

保障される組織です。「日本学術会議の人事がどうなったって個々の学者

は自由に研究できてるじゃん(学問の自由なんて関係ないじゃん)」と

いう浅はかな言説には、流されないようにご注意下さい。


 加えて、日本学術会議が「本来のあり方」とはちがう、みたいな前提で

論点をずらそうとしています。論理を扱う研究者とは思えない言説です。

公共放送が、このような人選で報道すること自体、政権への萎縮と忖度

の結果と感じずにはいられません。とても強い危機を抱きます。