少し前の記事ですが、憲法学者の長谷部恭男教授が、日本学術会議への
人事介入の件について語ったインタビュー記事をご紹介します。
● もの言わぬ学者は「政府のイヌ」とみなされる 早大・長谷部恭男教授 (毎日)https://mainichi.jp/articles/20201013/k00/00m/010/159000c
◆首相の任命は日本学術会議の「推薦に基づいて」行われる、という
日本学術会議法7条2項について
長谷部教授 「この『基づいて』という文言は、行政機関の権限行使を
強く拘束する場合に使われるものです。つまりよほどの理由がなければ、
その通りに任命するものです。しかも同法3条は会議が『独立して』
その職務を行うとしており、政府からの独立性を尊重すべき旨を明確に
しています。」
◆政府が憲法第15条1項「公務員を選定し、及びこれを罷免すること
は、国民固有の権利である」という規定を引き合いに出して、「首相が
推薦どおりに任命しなければならないというわけではない」と任命拒否
を正当化しようとしている点について
長谷部教授 「憲法15条1項は極めて一般的、抽象的な理念を述べて
いる。それを引き合いに出して、ここまで具体的に法律レベルで出来上
がっている仕組みをひっくり返すのは、憲法論でも何でもない。
詭弁(きべん)です。
学術会議には、日本学術会議法という具体的な仕組みがある。まずは
その仕組みにのっとって任命権限は行使しなくてはいけない。憲法15条
の方が上位だというかもしれないが、同じレベルの憲法23条は「学問の
自由」をちゃんと保障しています。
その学問の自由が及ぶ学術会議の会員と、その他の一般公務員を同じ
土俵にのせて、公務員である以上、首相に選定・罷免権があるというわけ
にはいかないわけです。任命しなかった理由をきちんと説明すべきです。
その理屈で言えば、政府がこうだと言えば何でもできることになって
しまいます。これまでも国家公務員法や検察庁法で随分とおかしな法解釈
をしてきたわけですが、今後もあらゆる場面で同様のことをするでしょう。」
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憲法15条のくだり、ご理解いただけたでしょうか。
15条は、あらゆる公務員は、もはや天皇に奉仕する職員ではなく、
国民主権国家においては究極的には国民が任命・罷免するような立場ですよ、
という宣言です。
天皇に尽くすのではなく国民主権原理の中で「全体の奉仕者」として働く
んですよ、という宣言は、天皇主権の国に生きてきた国民には新鮮だった
ことでしょう。そういう大きな枠組みについての条文を、なんにでも
「公務員なんだから国民の代表である首相が煮るのも焼くのも自由」と
いう言い訳のために持ち出してくるのは論外なわけです。