日本学術会議への人事介入の件、「国家予算を投じている内閣府直轄
の機関なのだから、人事に介入するのは当たりまえ」という言説が、
ありますね。
「国民の血税が注がれているのだから、民主的コントロールを及ぼす
必要がある」なーんて聞くと、思わず、なるほどね~なんて思ってしまう
人、少なくないと思います。
そのポイントに対して、毎日新聞の社説の中にあるこの一節をご紹介
します。
「首相は、政府が年間約10億円の予算を支出していることや、会員が
特別職の国家公務員になることを人事権行使の理由にしている。
しかし、学術会議は一般の省庁とは異なる。予算や身分の問題と、
任命権の話は別だ。」
● 学術会議巡る首相発言 これでは説明にならない (毎日)
https://mainichi.jp/articles/20201007/ddm/005/070/075000c
信濃毎日新聞の社説もまた、雄弁です。
「学術会議は政府の機関であり、年間およそ10億円の予算を投じて
いることにも菅首相は言及した。けれども、それは介入を正当化する
根拠にならない。
公の機関として国の予算で運営を支えるのは、学問の自由を保障
するためであって、政府に従わせるためではない。政治権力からの
独立が確保されなければ、学問の自由の土台が揺らぐ。」
● 学術会議人事 首相は何も答えていない (信毎Web) https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20201007/KT201006ETI090011000.php
「国家予算を投じているのだから介入して当たり前」という言い分は、
それを言い出したらキリがないわけです。
福山和人弁護士の「学術会議に国が10億出してるから人事に口出し
してよいなら、政党交付金をもらった政党の党首は総理が決められる
のか? アホすぎる理屈だ。」というツイートは、なによりも明快で
しょう。
https://twitter.com/kaz_fukuyama/status/1313297811224489985?s=20
というわけで、国家予算を投じているから介入して当然、という
「一見もっともらしい言説」には、警戒が必要です。
もし周囲に、こうした「もっともらしい言説」に流されている方が
いらしたら、ぜひ上記記事やツイートをさりげなく教えてあげてください。