ご存知のとおり、同性カップルたちが起こした訴訟で、札幌地裁が違憲
判決を出しました。各紙が報じている中、おかしな社説があったので、
ご紹介します。
● 【主張】同性婚否定「違憲」 婚姻制度理解せず不当だ (産経)
<一部抜粋>
札幌地裁は、憲法24条の「婚姻は両性の合意のみに基づく」との
条文について、「異性婚について定めたものであり、同性婚について
定めるものではないと解するのが相当である」として、原告側の主張
を退けた。
それでは憲法24条は、14条違反ということになる。24条に
ついて判決は「同性愛者が営む共同生活に対する一切の法的保護を
否定する趣旨まで有するとは解されない」と述べたが、「両性の合意
のみ」の両性を異性間と規定する以上、この解釈には無理がある。
この矛盾を解消するためには、憲法改正を議論しなければならない
はずだ。
<抜粋終わり>
判決は、憲法24条について、こう述べています。
「同条は,異性婚について定めたものであり,同性婚について定める
ものではないと解するのが相当である。」(18頁)
「そもそも同条は,異性婚について定めるものであり,同性婚について
触れるものではない」(26頁)
これを読んで、「24条は同性婚について定めていない=24条は
同性婚を禁止している」と考えるのは間違いです。
判決は、24条を「同性婚についてはなんら定めるものではない」
ので、同性婚についてはノーコメントな条文だと解しました。
そう考えると、24条が同性愛者を差別しているわけではないことは
当然で、「それでは憲法24条は、14条違反ということになる。」
という上記社説の理屈は、大変おかしなもの、というか間違っています。
なんでこんなおかしなことを言っているのだろう、と不思議ですが、
結局「矛盾を解消するためには、憲法改正を議論しなければならない
はずだ。」という一文に導くためなのかな~、と思ってしまうのは
too much邪推でしょうか…。
24条が同性婚を否定している規定ではない、というのは憲法学では
通説です。さらに先日、衆議院法制局は同性婚について「憲法13条、
14条等、他の憲法条項を根拠として同性婚の法制度化は憲法上の要請
であるとする考え方はいずれも十分に成り立ちうる」と答弁しました。
憲法改正は必要なく、政権が判決や当事者の方々の声を真摯に受け止め、
今すぐ法制度化に着手すればいい、という段階です。
もう一点、看過できない箇所があります。
<一部抜粋>
国側が主張してきたように、婚姻制度は、男女の夫婦が子供を産み
育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。社会の
自然な考え方だ。
<抜粋終わり>
今どき、こんな婚姻のとらえ方はあり得ません。
子どものいないカップルや高齢カップルの婚姻は、婚姻制度の目的外
利用だとでもいうのでしょうか。「結婚すれば当然子どもを産み育てる
だろう」という家族観の押しつけは容認できません。
* 判決文のPDF